刀と戦い
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意識が戻ったとき。いや、そんな表現ではなく、気付いたらという方が正しいだろう。
ふと、そこにある物が目に入った、くらいの感覚。
俺の胴体は真っ二つになっておらず(確かに真っ二つになったはずなのに)、俺はこの場に直立していた。
それに何だか悪いものから解放されたかのような、清々しい気分で──体がとても軽くなったように感じた。
「千九咲くん……まさか……」
朽木さんが驚くような顔で見ている。
天狗もまた、同じような表情。驚くに加え、顔面蒼白といった感じか。
「確かに可能性はあるが────」
そして、意を決したような表情で、朽木さんは言った。
「受けとれ、千九咲くん! 君がやれ!」
叫びと共に、何かが光った。
朽木さんの側にある何かが光ったのだ。
その何かは意思があるかのように、ひとりでに動き出す。──刀? 日本刀?
考えていると、いきなり、二本の刀が、凄い勢いでこちらに飛んできた。
「うわっ!」
ズガガ、と俺の目の前の地面に、二本の刀が刺さる。
一本は青白く光る刀。
もう一本は赤黒く光る刀。
あの、神崎との件で、朽木さんが骸に使った刀だ。
「それは意思を持つ刀……全てを吸い尽くす刀だ。君なら性能を余すことなく出しきれるかもしれない!」
そう言ったところで、
天狗が朽木さんに、神崎や詩乃音に放ったものと同じものを放った。
強烈な爆音と共に、朽木さんが居なくなる。
「く、朽木さん!」
「もう、待ちなどしないぞ」
天狗は低い声で言う。
「俺は……」
やってやる!
この天狗を倒し──いや、殺し、全ての元凶に決着をつけてやる。
それが俺のやるべきことだ。
例え、自分が死んだとしても、必ずやって見せる。
俺は目の前の二本の刀を抜いた。
右手に赤黒く発光する刀。
左手に青白く発光する刀。
不思議と力が湧いてくる気がする。この刀の力だろうか。
どんな超人的な動きでも、自分のイメージ通りに行ってくれそうな……。
そして、俺は駆けた。
天狗へ向かって走り出した。
俺はダン! と、地面を踏み抜く。
二本の刀を、大きく振りかぶった。




