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天狗と死

もはや、清々しいほどの短さ。


────────



 神社まで一気に駆け上がった俺達が見た光景とは、到底信じられぬものだった。

 正確に言えば、朽木さんを知る俺と神崎からすればの話だが。


 朽木さんが血の海の中に倒れていた。

 彼女自身の血液と思われるものに、まみれて倒れていた。


「朽木さん!」


「そんな……朽木さんが」


 あの神崎がかなりのショック、衝撃を受けているようだった。


「く……るな!」


 横たわる朽木さんが、力を振り絞るようにして言う。力なき言葉は何とか聞き取れる程度である。


「でも!」


「奴等が……いる!」


 朽木さんがそう言った瞬間、それは姿を現す。

 台風の如く強烈な風と共に、天狗は出現した。


「……お前は……何でここに居るんだよ!」


 俺は叫んだ。


「それは当然、危険因子の消すためだ。貴様らは知りすぎたのだよ、あのメモ帳──日記を見たのはまずかった。殺す理由には十分だ」


 バレたのか──恐らく、骸を通じて。


「だから、まずはもっとも障害になりうる人間から始末すべきだと思ったのだ」


 そう言ったところで、天狗が手を振り上げた。

 何の意味があるのかと思ったが、考えるまでもなく──考える暇もなく、空間が歪んだ。


「これは──神崎! 詩乃音! 逃げるぞ!」


 一目でヤバいと分かるそれは、まがまがしく黒い何かを放出していた。

 少なくとも人語ではない言語でよく分からない呪文を唱える天狗。



 神崎と詩乃音が──吹き飛ばされた。


 それ以外には分からなかった。その場に彼女達の姿はもうなかったのだから。

 グオッと後ろに吹っ飛んだと思ったら、後ろには何もない。

 単純にかなり遠くに飛ばされただけなのかもしれないし、ズタズタに体が引きちぎれて無くなったのかもしれない。


「っ……」


 動けるはずもない。威圧がすごすぎる。


「少し早いが……貴様を殺し、究極の悪霊を作り出すとしよう。次世代の王となるためには必要な戦力だ」


「ふ、ふざけるな──」


 俺が叫び。

 そして。

 俺の胴体が真っ二つになった。


 天狗の攻撃により、見えない攻撃により、やられた。


 意識は暗転する。

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