星空
僕は独り夜空を見上げていた。
そこには独り夜空を輝く月。
月以外に輝くもの無い空。
ただそれだけだった。
僕はこの空が嫌いだ。
夜空に輝く光を消し去るほどの地上の光。
その光はこの星の資源を食い尽くし、光輝いている。
その光はただ闇雲に照らし出し人々を幻惑する。
その光は夜空の人々の声を消してしまった。
「星が見えないね」
急に後ろから声を掛けられた。
僕はゆっくり声のした方へ顔を向けた。
そこには少年が立っていた。
まだ10歳にもならないような少年だ。
「星が見えないね」
彼は同じ言葉を繰り返した。
周りを見渡しても僕と少年の姿しか見えない。
ようやくその言葉が僕に向けられたものだと気が付いた。
「あぁ、そうだね」
僕はそう返事をした。
少年は僕が返事をしたと分かると喜んで近付いてきた。
そして僕の隣まで来るとこんな質問をしてきた。
「なんで星が見えないの?」
「空が照らされてるからだよ」
「なんで空が照らされたの?」
「地上が明るくなったからだよ」
「なんで地上が明るくなったの?」
「人が空を見なくなったからだよ」
「なんで人は空を見なくなったの?」
「人が星を忘れたからだよ」
「そっか…君は忘れないでね」
「あぁ」
そうして彼は光となって空へと見えなくなってしまった。
星の光が届かない明るい地上にいる僕。
地上から照らされた空は星も見えない。
そんな空にもちゃんと彼は存在している。
そして僕たちのことを見守ってくれている。
僕たちはそんな彼のことを忘れてはいけない。
例え星が見えなかったとしても。
僕はそこにいるであろう空へ向かって言った。
「忘れないよ」
ふと夜空を見上げたときあまり星が見えなかったことがありました。
昔はもう少し星が見えた気がしたのになー
なんて考えていたときに書いたお話しです。