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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

降雨とともに

掲載日:2026/09/23

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 秋の長雨といいますか、どうもこう雨続きだと、涼しさもひとしおですねえ先輩。

 なにより、外で身体を動かせないというのがきつい。一日、じっと家の中にいるとかえって疲れが溜まりそうな感覚さえ、覚えそうになってきています。

 水気が多いことって、私たちの身体にとって影響が大きいですよね。この身体は水分に大部分が頼っていますから、水のよしあしによって受けるものも異なってきます。

 自分で気を付けて摂取することは、心構え次第で可能。けれども外部から、押し付けられる形での摂取を強要されることがあれば……どうでしょうか?

 私が小さいころに起こった話、ちょっと聞いてみませんか?


 ゲリラ豪雨、先輩も経験がありますよね?

 出し抜けにやってくる、すさまじい雨。屋内にいるときはまだしも、外へ出ているときなどは大変です。いち早く、雨宿りする場所を探したくなりますね。

 科学的な原因に関しては、また別の機会にするとしましょう。私の場合はゲリラはゲリラでも、明らかに何者かにしくまれたようなケースです。

 あれは、小さいころに友達と一緒に遊んだ後の帰り道でしたねえ。家までもう数分くらいの、交差点を渡り切ったところでした。

 当時は車の中古を販売しているお店のスペースが近くにありまして。そこの事務所の影から、ふわりと浮き上がったものがあったんです。


 風船、のように見えました。

 あの楕円形かつ、細い紐が一本だけ結ばれた飛翔体。その色が場違いなくらいに明るい桜色をしていたんです。

 風船が上がり始めたころから、にわかに空の雲たちが身を寄せ始めているのを、私は見ました。風船がすっかり小さくなってしまうまで、何秒と経っていません。その短い間でのこと。

 そうして雲がすっかり空を覆いつくした直後に、風船が割れたんです。

 かなりの小ささでしたが、まだ視力のおとろえていない当時の私に感謝ですね。はっきり確認できました。

 そして直後に、ぽつぽつと雨が降ってきたんです。と、思いきや、どっと勢いを増してきまして。これはいけない、と家へ飛び込んだんです。


 ほんのちょっとの間に、ぐしょぬれ。今もまだ家の外では雨音が響いています。

 玄関口から母に声をかけ、タオルと新聞紙を用意してもらいました。後者は靴の中へ突っ込む用ですね。履いていたのが水のすぐしみ込む材質のものだったので、中に新聞紙を丸めて突っ込んでおかないと、まともに水気がとれないんです。

 その細工の準備をしつつ、タオルで一通りの水気を拭い、ほいっと母へ返したんですが、直後に母が声を張り上げて問い詰めてくるんです。「どこで、こんなものを引っ付けてきたんだ!」と。


 なんのこと? と振り返った私も、目を見張りました。

 本来なら、湿り気のみを残すはずのタオルの表面に、薄く広がった桜色のゴムらしきものがへばりついているではありませんか。

 先の風船だ、とすぐ察しましたね。

 空で粉々になった風船が、雨と混じってすさまじく降り注いだんじゃないかと。

 しかし、すでに雨の止んだ外を見ても、残るはただの水たまりのみ。ゴムらしきものが混じっている痕跡はないのです。

 それからよくシャワーを浴びて、ずっと身体には注意を払っていましたよ。そうすると、たまにですが本来、垢が出そうなところで例の桜色のゴムがこすれ出てくることがありました。

 一週間もすると、すっかりなくなったんですが、あれは私の身体がまだ若かったから、外へ追い出す力があったのかもしれませんね。

 もし、身体のうちでうずまったままなら、何が起こっていたのでしょう?

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