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芋虫が蝶になる時  作者: 臣 桜


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第5話

「君は本当に綺麗な髪をしているよね」


 男性は私を椅子に座らせ、ブラシで丁寧に髪を梳く。


「そのすんなりとした手脚も、桜貝のような爪も、ちゃんと元通りになって良かったよ。君の美しさは俺の自慢だからね」


 そう言われても、見えないから自分の美醜なんて分からない。


 最初は芋虫同然でほぼ全裸だったけれど、手脚が生えたあとは、服を着せてもらっている。


 触った感じ、フリルやレースのついたワンピースみたいだけれど、これは私の趣味だったろうか。


 彼の趣味で着せているとしても、お世話になっているんだから、それぐらいどうって事はないけど。


「今日は最後に、デザートを食べよう」


 髪を梳かし終えたあと、男性は私を例のテーブルにつかせたあと、コトンと目の前に何かを置く。


 手探りすると、キンキンに冷えたガラスの器がある。


「口を開けて。冷たいよ」


 言われた通りにすると、口の中にコロンと丸い物が入れられた。


 口の中で溶かしていくと、ミルクの味がする。


 途中で膜のように張られていたミルクの層が壊れ、中からトロッとオレンジのソースが流れてきた。


 ――美味しい。


 うっとりとして、極上のアイスデザートを味わうと、もう一つが与えられた。


 それもじっくり味わって食べ終えたあと、私は口を開いて続きを求める。


「ああ、ごめんね。これは双つしかないんだ」


 笑い混じりに言ったあと、男性は私の後ろに回り、目元に何かを巻き付けてきた。


「急に光を感じると混乱するからね、先にこうしておこう」


 彼はグルグルと私の目元に何かを巻き付け、頭の後ろでギュッと結ぶ。


「じゃあ、今日はもうベッドで休んでおいで。今日でもう点滴は終わりだよ」


 彼は私を抱き上げ、ベッドまで連れて行って横たえる。


 そのあと腕が生えたあとはそこに刺していた点滴を抜き、脱脂綿を当ててテープを貼った。


「おやすみ」


 男性はそう言ったあと、部屋を出て行った。






 次に目覚めると、目が見えるようになっていた。




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