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芋虫が蝶になる時  作者: 臣 桜


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16/16

第16話

 △△市、繁華街の片隅にあるスナックで、会社員の男が二人で酒を飲んでいた。


 若い男性がビールを呷ったあと、気分良さそうに連れに尋ねる。


「せんぱーい、■■■■様の話知ってますかぁ~?」


「お前、酔いすぎだって。また都市伝説か? 好きだなぁ……。あ、お姉ちゃん、水割りもう一杯お願い。で、■■■■様って何だよ」


 三十代後半の男性に言われ、カウンターの中にいた美女は微笑んで水割りを作り始めた。


「すっごい美人なんですけど、仲よくなったらキスされて、舌を噛み千切ってくるんですって~」


「結局は美人の話かよ。結局そういう都市伝説って、白とか赤い服を着てたり、黒髪ロングヘアなんだろ? 口裂け女も『私、綺麗?』だったよな。パターンが似てるんだよ。なぁ、お姉ちゃん」


 相槌を求められた美女は、「そうですね」と言うように笑って頷く。


「先輩、さっきからおねーさんの事、露骨に気にしすぎ~。いくらスナックの店員さんでも、しつこくすると嫌われますよ~」


「んな事ないよな~!」


 また同意を求められた時、カウンターの奥に座ってテレビを見ていたママが口を挟んだ。


「ちょっと、あんたら。その子は病気で喋れないんだから、あんまり困らせないでよ」


「はーい、ママ」


 二人は声を揃えて返事をし、別の話をし始める。






 深夜過ぎ、顔を真っ赤にした後輩が立ちあがった。


「じゃあ、俺、そろそろ先に帰りますね。明日用事あるんですよ」


「おー、分かった。会計は任せとけ」


 先輩はまだ飲むようで、トロンとした目で後輩に手を振る。


「ご馳走様っす!」


 後輩が頭を下げて店を出ようとすると、見送りのために美女が店の出入り口までついてくる。


 ドアを開けると、外では激しめの雨が降っていた。


「うわー、やっべ。降ってんな~。駅まで走ってタクるしかねーな」


 後輩がボソッと呟いた時、美女がビニール傘を持って来て隣で広げ、微笑みかけてくる。


「え? いいの?」


 後輩の問いかけに、美女はにっこり笑って頷く。


「じゃあ、借りるねー」


 後輩が傘を受け取った時、美女はその手にそっと己が手を重ねる。


「え……?」


 彼が目を見開くと、美女はそっと後輩に身を寄せてスルリと頬を撫でた。


 胸板には彼女の胸が押しつけられ、深い谷間がくっきりと見える。


「ちょ、ちょっと……、どうしたんだよ……」


 後輩は照れ笑いをし、誰かに見られていないか周囲に視線を走らせる。


 美女は悪戯っぽく目を細めて笑い、ちょいちょいと手招きをして顔を寄せた。


「……も~……、仕方ないなぁ。俺、一応彼女持ちなんだけど……」


 彼がデレッとした表情で美女にキスをすると、彼女は後輩の首に両腕を回し、顔の角度を変えて何度もついばんでくる。


 雨の中、ちゅっちゅっと濡れた音が何度もし、冗談半分という顔をしていた後輩も、真剣な眼差しになっていく。


 やがて後輩が美女の口内に舌を入れた時――、キスにあるまじき音がした。




 ぶづんっ!





 完

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