第13話
最愛の妹が失踪したと聞いた時、俺――高崎雅幸は、気が狂いそうなほどの焦燥感を抱いた。
――亜由美がいなければ生きていけない。
最後に妹が暮らしていた家は、必要最低限の物しかない簡素な場所だった。
服は着回せる程度、冷蔵庫には水だけ、家の中にはベッドだけ。
実家を出る時、亜由美は【ストーカーから逃げて自由になる】と書き置きを残したが、それほど悩んでいるなら、俺が退治してやったのに。
いつもあの子は『一人でも平気』と言って、自分でやろうとする。
女の子なんだから、危ない事なんてしなくていい。
両親に期待されているのは分かるが、亜由美まで医師にならなくていい。
俺が生活を支えるから、亜由美は好きな事をして自由きままに過ごせばいいとも思っていた。
なのに亜由美は、いつも差し伸べた俺の手を払う。
まるで『一人でできるの!』と反抗する子供みたいだ。
――亜由美を見つけたら、今度こそ離さない。
××市を活動の拠点とする極道に協力してもらい、遺体を隠せそうな場所を隅々まで探した。
結果、妹の体はスーツケースに詰められ、山の中に不法投棄ゴミと一緒にされていたのを見つけた。
思いの外、俺はその事実を冷静に受け止めた。
悲しむにも、亜由美の顔が分からなかったので、実感が湧かなかったとも言える。
けれど太腿の際に黒子があったから、遺体は妹だと確信した。
まず犯人を見つけて殺さなければならないと思い、仕事を休んで亜由美が身を置いていた環境を調べた。
職場に挨拶に行くと、上司だった人が沈痛な面持ちで、妹が如何に優秀だったかを語っていた。
そんな事は言われなくても分かっているので、妹の交友関係を聞けば、■■■■という高校時代の同級生と仲良くしていたという。
■■■■さんに会った時、理解した。
――彼女だ。
彼女が亜由美を殺した証拠はまだ出ていないが、妹の劣化版のような顔を見てすぐに察した。
亜由美に何らかの感情を抱いていなければ、ここまで妹に寄せた顔になる事もない。
この世には自分とそっくりの顔の人が、三人いると言われている。
けれど、こんな妹の出来損ないみたいな顔を、そっくりさんとは口が裂けても言いたくない。
案の定、■■■■さんは俺の顔を見たあと挙動不審になっていた。
証拠を集めるまでもない。こいつが犯人だ。
確認したあと、彼女をどうするか熟考した。
殺すのは当たり前として、何か亜由美のために有効利用できないものか。
亜由美を蘇らせるには、どうすればいいか。
ネットで調べたり、両親のコネを使って医療、政財界、あらゆる分野の人に話を聞き――、たどり着いたのは東北に居を構える呪術師だった。
彼いわく、呪術を施した空間で対象に亜由美の体を喰わせる事で、生前の妹そっくりに復活させる事ができるそうだ。
果たしてそれを亜由美と呼べるのかはさておき、妹の体を冷凍している間に実行しなければならない。




