第10話
私は鏡に映った亜由美の顔を見て、グツグツと煮えたぎる怒りを抱く。
――こんな顔!
世の中で最も忌まわしい顔で、亜由美の顔に近づけて整形したのも大失敗だと思っていたのに!
もう二度と見たくないと思っていたのに!
この顔のせいでずっと酷い目に遭い続けてきたのに!
「うぅ……っ、ううぅうう……っ」
両手で顔を覆って嗚咽しだすと、雅幸さんは愛おしむ手つきで頭を撫でてくる。
「ああ、元に戻れて嬉しいんだね。お前の美しさは完璧だよ」
――違う!
「うぅううーっ!!」
舌を奪われたまま激しく顔を横に振っても、彼は聞き入れてくれない。
私はただただ、混乱していた。
■■■■としてこの世に生を受けたのに、なぜ私は高崎亜由美になってしまったのか。
私を■■■■として認識せず、亜由美と呼び続けている雅幸さんは、何を尋ねてもまともな回答をくれないだろう。
なぜ兄はずっと私を追い続けてくるんだろう。
死んで兄から逃げられたはずだったのに、どうしてここまで……!
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――死にたいと常に願っていた。
私――、高崎亜由美は裕福な家に生まれ、優しい両親と兄に恵まれて育った。
物心ついた頃から私は周囲に褒められ続けていた。
何をしていなくても『可愛いね』と顔を褒められる。
父は医者で、母は女医。
兄も父の病院を継ぐよう期待をかけられ、私もエリートとして育てられた。
物覚えがいいからか、学生時代は大して頑張っていないのに才媛扱いされた。
運動神経にも恵まれていたようで、私は周囲の人から『何をやらせてもパーフェクト』と言われるようになる。
みんな私を人生の勝ち組だと言い、なんの苦労もせず生きていると思い込んでいるようだった。
でもそんな私にも悩みはある。




