団地令嬢姉妹
ここは築50年以上の古い団地。そこにとあるご令嬢たちが住んでいた。
「みのりおねえさま、おはようございます。」
「あら、かほさん。おはよう。珍しく早いんですのね。」
団地令嬢姉妹である。
「あなたが私よりも早く起きるなんてどうしたのかしら?」
「うふふ。いやだわ、おねえさま。きょうはわたくしのおたんじょうびですわよ?」
「そうだったわね。かほさんももう7歳になるのね。おめでたいことだわ。」
「ええ、わたくしもきょうからおじょうさまになりますの。いろいろとおしえてくださいませ。」
「良い心掛けだわ。私にお任せになって?まずは使用人たち(※両親)が起きるのを待ちましょう。」
今日は日曜日。メイド(※母)も執事(※父)も起きてくる気配がない。
「・・・おねえさま。わたくしおなかがすきましたわ。」
「そうよね、さすがに遅すぎるわ。仕方ない、起こしてさしあげましょう。」
団地令嬢姉妹は寝室に乗り込んだ。
そこには屍のように眠る使用人(※両親)が二人。
まずはカーテンを開け朝日を浴びさせる。
「ぐぇぇぇぇぇぇぇ」
と、断末魔のような声をあげるのはメイド(※母)だ。
布団にもぐろうとしたところを先手を打って布団を奪う。
日光からの逃げ場がなくなり、醜くのたうち回っている。
執事(※父)は日光に強いようで顔をしかめる程度。起きる気配がない。
かほお嬢様が片足を執事(※父)の鳩尾にのせ腕を組む。
「10かぞえるあいだにおきないと、うえにのってジャンプしますわよ。」
「うぅ・・・苦しい・・・かほちゃんやめてぇ・・・」
「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10」
「かほさん、やっておやりなさい。」
かほお嬢様が両足を乗せようとしたそのとき、やっと執事(※父)が体を起こした。
「わー待って待って起きるから!・・・まだ6時半やん・・・」
「まったく。今日はかほさんのお誕生日ですのよ?あなたたちが準備しなければならないでしょう!」
「いや、まあそうなんだけど・・・もう少し寝かせてよ・・・」
「いけませんわ!わたくしおなかがへっておりますの!ぺっこぺこですわ!ごはんしてぇ!!」
「かほさん。冷静になって?そんな大きな声、はしたなくってよ?」
「あ!もうしわけございません。みのりおねえさま。きをつけますわ。」
「ふふ。今日からお嬢様ですもの。少しづつ慣れていけばいいのよ。さあ!あなたたちは朝食の準備にとりかかってちょうだい。」
みのりお嬢様が使用人たち(※両親)に指示を出す。ごそごそとやっと布団から這い出してきた。
「朝ごはんなに食べたい~?おにぎりでいい?」
「いいえ。わたくしはフレンチトーストのきぶんですの。おねがいできるかしら?」
「はいはい。フレンチトーストね。ちょっと待っててね~」
メイド(※母)が作ったフレンチトーストを食べてご満悦なみのりお嬢様とかほお嬢様。
「さて、今日はかほちゃんの誕生日だしなにしようか?どこか行きたいところある?」
かほお嬢様はそわそわした様子でこう答えた。
「それよりも、たんじょうびプレゼントはいまもらってもいいかしら?」
「え?今?夜にケーキ食べたあとじゃだめ?」
「いまですわ!!いますぐほしいのですわっ!!」
かほお嬢様は少々興奮気味である。
「えー・・・まあいいか。明日学校だし夜に渡すとあんまり遊べないもんね。ちょっと待ってて」
メイド(※母)がプレゼントを取りに行く。
「かほさんは今年の誕生日プレゼントは何をお願いしたのかしら?」
「うふ。みのりおねえさま、みてのおたのしみですわ!」
「はい!かほちゃん7歳おめでとう!」「誕生日おめでとう!」
使用人たち(※両親)からの祝いの言葉とともにプレゼントを受け取る。
包みを開けるとク〇ミちゃんのスマホ型おもちゃだった。
「やったーーーーー!かわいいーーーーーーーー!!」
さっそく起動し遊び始めるかほお嬢様。その横で不穏な気配を漂わせているのはみのりお嬢様。
「・・・かほさん。ちょっと、私にも見せてくださらない?」
「えーやだよぉ。かほちゃんいまやりはじめたところだしぃ!」
「ちょっと見るぐらいいいじゃん!かほちゃんのいじわる!!」
そこには気品溢れるお嬢様たちの姿はなく、ただの姉妹喧嘩が勃発していた。
「はあ・・・やっぱり今年もこうなるか。みーちゃんの誕生日プレゼントも渡すか・・・。」
姉妹の誕生日は一か月違いなのである。
「はい、みーちゃん。一か月早いけど9歳の誕生日プレゼント先に渡すね。」
ビリビリビリィと勢いよく包み紙を破り、出てきたプレゼントは同じク〇ミちゃんのスマホ型おもちゃ。
「わあい!みーちゃんもこれが良かったんだー!」
「みーちゃんもいっしょなの?じゃあつうしんしてあそぼうよ!」
二人はようやく落ち着き、気品溢れるご令嬢に戻った。
「ふう。素敵なプレゼントだわ。感謝するわ。」
「かんしゃいたしますわ!とってもたのしいですわ!!」
「だからかほさん。大きな声ははしたなくってよ。」
「しつれいいたしました、みのりおねえさま。きをつけますわ!」
「おほほほほほほ」と高らかに笑いあう団地令嬢姉妹であった。




