プロローグ
本編はもう少し先になるかと思いますが、もし続きが気になると思っていただいた方は反応いただけると嬉しいです。
当方、ライトノベル全盛期を生き愉しんできた人間にも関わらず「小説家になろう」は素人です。
以後お見知りおきを。
天文学を志す大学院生の青年・久遠理央は、国際共同観測プロジェクトにおいて、世界初となる「未知の量子干渉物質」の観測実験に参加する。
それは、物理法則の向こう側にある“何か”を暴く、学者たちの夢と狂気が交錯する実験だった。
だが、その瞬間——理央を含む研究者一行は、現実の位相から「ずれ」、異なる物理法則の世界へと転移する。そこは魔術が奇跡と恐れられ、信仰が秩序を支配する“異世界”だった。
セレイア帝国──古代ギリシアを思わせる文明国家はすでに衰え、オスマン風の強大なバフラート朝に侵略されていた。
奴隷として囚われ、仲間を失い、科学も理性も通じぬ世界の中で、理央はただひとり生き延びる。
だが、彼は気づいてしまう。
この世界の“魔術”とされる現象は、あの実験で触れた物質──量子干渉物質──を媒介とした、極めて高次元な量子操作であることに。
再現性のない奇跡を、理論で制御する。
神の奇跡を、科学で書き換える。
いつしか、世界は彼をこう呼ぶようになる。
「魔術を理に変えた男」──神なき世界の魔王と。
筆者は、量子力学をはじめとする理論物理学等の分野には素人です。
ただ以前より「便利すぎる魔法」「転生したらチート能力で爽快異世界生活」に飽き飽きしており、とんでもない異世界だけどギリギリ説明できそうなファンタジーと、ザラザラとした質感のある対人関係、文化、宗教観についても作品に落とし込んでみたいと思っておりました。
某西洋宗教、中東宗教に近しい宗教観が入っていますが、決して彼らの文化的背景を比較して優劣をつけようだなんて思ってはおりません。あくまでも、主人公がもし自分たちの世界と似て非なる中世世界に飛び込んだときの、「ザラザラとした、何とも言えない人間関係・文化・技術発展の反動の気持ち悪さ」を味わっていただくためのエッセンスとして置いておいてください。