屋根裏部屋『が』恋人
俺には恋人がいる。
暗くて、地味な奴だけど、一緒にいてくれると嬉しい。
男のロマンを理解してくれて決してバカにしない。
どんなに俺が趣味に走ろうと「仕方ないよね、男の子だもんね」って言いながら許容してくれている気がして、気楽でいいのだ。
だから好きなことを好きなだけ、思いっきり打ち込める。
俺がサバゲ―に目覚めた時。
沢山の装備品を並べても彼女は怒らなかった。
俺が鉄道模型にはまった時。
部屋中に線路を走らせても彼女は笑っていた。
俺がギターを始めた時。
彼女は一緒に演奏を楽しんでくれた。
だから、どんな時だって俺を理解してくれると思った。
ありのままの俺を受け入れてくれると思った。
でも……やっぱり違ったんだな。
彼女は俺に愛想をつかして出て行ってしまった。
一人残された俺はただただ絶望して泣きはらした。
そう……俺は一人だ。
一人ぼっちになってしまったのだ。
屋根裏部屋には俺の趣味の残骸が残されている。
長続きしないで、コロコロ趣味を変えた結果。
何も残らなかった。
何も得られなかった。
だから俺はやり直すことにした。
今まで集めた全ての物を処分して、屋根裏部屋をまっさらにする。
そして、その写真をスマホで撮影しSNSに投稿。
これが生まれ変わった俺だ。
出て行ってしまった彼女が今どこにいるか分からない。
でも、変わった俺をSNSを通して見てくれているかもしれない。
また二人で同じ時間を過ごしたい。
その願いを込めた呟きは、きっと彼女の元に――
『素敵な彼女さんですねwwwwwwwwwww』
知らない人からリプが付いた。
なんで草なんて生やしてるんだ?
『彼女さん、とってもスッキリしてますねΣ(・ω・ノ)ノ!』
『いやぁ、りっぱな彼女さんだこと笑』
『これはひどい(゜Д゜;)』
俺の呟きに沢山のリプが付くが、どれも煽ってバカにする内容ばかり。
こんなことを言われるような内容ではなかったと思うが……。
俺は自分の呟きを見返す。
何もかもが片付けられた綺麗な屋根裏部屋の写真。
心機一転した俺が新たな一歩を踏み出す決意を込めたその呟きには、メッセージが添えられている。
『屋根裏部屋が彼女』……と。
なにがおかしいのだろうか?
なにもおかしく――
うん?
屋根裏部屋『が』彼女?
「うわあああああああああああああああああああああ!」
俺は光の速さで呟きを削除。
枕に顔を埋めてバタバタする。
それはもう、中二病真っ盛りの頃の記憶を思い起こした時のように。