藤の花の如
こんにちは、葵枝燕です。
この作品は、空乃 千尋様とのコラボ企画となっております。空乃様撮影のお写真をお題に、葵枝燕が文章を綴る——題して、[空翔ぶ燕]企画です。企画名は、僭越ながら私が名付け親です。一応、由来があるのですが——長くなると思うので、後書きで披露させてくださいませ(今回第五弾なので、前回までの作品からご覧の方はご存知かと思いますが、はじめましての方もいるかもしれませんので、ご理解のほどよろしくお願いいたします)。
そんなコラボ企画第五弾の今回のお題が、「藤(二〇二一年五月一日)」です。本文の最後に入っている写真が、お題として提供いただいたものとなっております。
切なく、少し恋愛風味もありそうな、そんなお話になったかなと、個人的には思っています。
あ、タイトルですが、「ふじ・の・か・の・ごと」と読みます。
本文最後に、写真が入っております。ぜひ、合わせてお楽しみくださいませ。
紫の藤の花房が、風に吹かれている。見頃は少し過ぎ、終わりかけの花穂が、どこか寂しく揺れていた。それでも、そのどこか物悲しい様子さえも、私の心を強く揺さぶるような、惹きつけるような、そんな魅力があった。
陶酔——ふと、そんな言葉が頭に浮かんだ。藤の花言葉の一つだと、一拍遅れて気が付いた。
歓迎、やさしさ、陶酔する恋——藤のもつ花言葉だ。花房が揺れる様子から、それぞれきているのだという。
「ハハ」
思わず、笑い声がこぼれた。それは、楽しさから出たものではない。乾いたその声は、ひたすらに自嘲する音を立てていた。
藤の花を、その花言葉を、私に教えた存在がいた。もう、随分と昔の話だ。それでも、色褪せることなくその存在を思い出せる。
私はきっと、その存在を忘れられないのだろう。今も、そしておそらく、この先もずっと。
藤の花が咲く度、この色を見る度、思い出しては苦しくなり、思い出しては切なくなり、思い出しては愛しくなり——そうして、生きていくのだろう。
この花を知ってからずっと。
この花の向こうにずっと。
この花に、そして、この花を教えてくれた存在に。
陶酔するような恋を、抱えながらこの先を生きるのだろう。
『藤の花の如』のご高覧、ありがとうございます。
さて。ここから色々語りたいので、お付き合いのほどを。多分、長くなります。
前書きでも書きましたが、この作品はコラボ企画です。名付けて、[空翔ぶ燕]企画。「空」=空乃様から一文字拝借、「翔ぶ」=お題から想像力膨らませて文章書くイメージ(「翔」という字には、「とぶ」の他「めぐる」や「さまよう」という意味もあるそうで、その意味も含めて「翔ぶ」を採用しました)、「燕」=葵枝燕から一文字——そんな由来で生まれた企画名です。
そんな今回のお題は、「藤(二〇二一年五月一日)」でした。本文最後の写真が、お題となったものです(元々は中間にあった写真を、私の方で最後に移動させております)。
さぁ……というわけで、ここからは登場人物について語ります。といっても、メインが語り手一人しかいないので、あまり語る要素もないのですが。
そんなわけで、語り手の「私」について。終わりかけの藤の花を見にきた人物です。作者は、男性——ロマンスグレーの紳士——のつもりで書いていました。実は、作中では名前を出すつもりでいたのですが、それができないまま書き上げてしまいました。ちなみに、そのとき名付けようと思っていた名前が、「永一生」です。私が作成した「困ったときのキャラ名案」というリストの中にあった名前です。結局、名乗る機会がないままだったので、どうしたものか——ってなってます。
それから、「私」が思い出す「とある存在」について。藤の花がだいすきで、「私」に藤の花の魅力を教え伝えた存在です。私の個人的な設定としては、「私」と将来を誓い合い一緒になった方だったのですが、一緒になって間もなく亡くなってしまった——という感じでしょうか。藤の花が似合う、優しく美しい方だったのではと思っています。
前回は写真をそのまま物語に取り入れてみましたが、今回は写真の世界に飛び込んでみた感じです。
タイトル『藤の花の如』ですが、いろんな意味で藤の花を絡めたので、このタイトルにしました。かっこいい感じが気に入ってたりします。でも、この企画の今までの作品で、一番タイトルに悩みました。「藤」、「陶酔」、「恋」——色々入れたいワードはあったのですが、ふと浮かんできた現在のタイトルが気に入ったので、空乃さんとも相談して、このタイトルに落ち着きました。
ちなみに私、藤の花を実際に目にした記憶がありません。そもそも、多分沖縄県に藤の木はない気がします。絵とか写真とか動画では見たことあるのですが、ほんと、そのくらいで。でも、憧れの作家・あさのあつこさんが、『地に埋もれて』(最近出た文庫版では、『藤色の記憶』に改題されました)という作品でモチーフに使っていたこともあって、藤は憧れであると共にだいすきな花なんです。それになにより、『地に埋もれて』の単行本版の表紙というかカバーというかのデザインがだいすきなんです。そんなわけで、今回のお題に藤をリクエストしました。
今回、作品をつくるにあたり、花言葉からせめてみました。その際参考資料にした書籍は、この後書きの最後にまとめています。なお、参考資料とした書籍によっては、「陶酔する恋」と「恋に酔う」という似ている表現が見られたので、この作品では「陶酔する恋」に統一させていただきました。
あと、なぜ前書きと後書きの編集が遅れたかといえば——どうしても、五月二十二日に投稿したかったからです。実は、五月二十二日は、私がとあるコンテンツで推しているキャラクターさんの誕生日でして。その方の名前にも「藤」の字が入っているので、どうしてもこの日に投稿したかったんです。……変な理由かもしれませんね、すみません。
さて。これで語りたいことは語れたでしょうか。何か忘れてる気がしなくもないですが……思い出したら書きたいと思います。
最後に。
空乃 千尋様。今回も、ステキなお題を——というか、お題リクエストに応えてくださり、ありがとうございます! 藤の花、撮影ありがとうございます! お手数おかけしました。今回も、拙く至らない点もあったかと思いますが、色々相談に乗ってくださり、ありがとうございます! 次のコラボもできますように。それから、いつもありがとうございます!
そして。ご高覧くださった読者の皆様にも最大級の感謝を。もしご感想などをTwitterにて報告される際は、ぜひ「#空翔ぶ燕」を付けて呟いてくださいませ。
拙作を読んでくださり、ありがとうございました!
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改稿情報
二〇二一年五月二十四日、前書きと後書きを入れました。お待たせいたしました。
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参考資料
・浜田豊著『花の名前 —由来でわかる 花屋さんの花・身近な花522種—』、婦人生活社、[二〇〇〇年]
・高橋竜次、勝山信之著『色でひける花の名前がわかる事典 花屋さんの花・身近な花522種』、成美堂出版、[二〇〇一年]
・二宮孝嗣著『美しい花言葉・花図鑑 彩りと物語を楽しむ』、ナツメ社、二〇一五年
・国吉純監修『想いを贈る花言葉 ちいさな花物語』、ナツメ社、二〇一七年