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何故か荒れていく戦線

書き書き…

 文書を出して早2日。魔王城では玉座の執務椅子に座る魔王と以前にも増して忙しく動き回る部下がいた。


「魔王様、鳥翼部隊、地潜部隊からの連絡です。王都から新兵器と思われる物品の持ち出しが確認されました」

「形状を事細かに記録し魔導隊と魔具開発部隊に連携を取れ。使用用途を予測し対策を立てろ。可能であれば魔蟲や獣人に探らせろ」

「カヌタル湿地の赤龍人部隊より連絡! 王国軍に増員の兆しあり! 増援求むとのこと!!」

「カヌタル……あそこか。そこは放棄して構わん。戦線を後退させエヌカ砦で土妖精たちと合流し防衛に努めよ。細かな道筋は参謀から聞け」

「王国に潜入中の獣人からの連絡です! 王都の方ではこのような手紙が!」

「うむ……? すまんが訳せる者を探す。こちらで預かろう」


 次から次へと矢継ぎ早に飛んでくる報告。それをほとんど間もなく返答し行動を支持していく。


 数十のそれを処理しつつ魔王アルベッタは横に控える秘書に尋ねる。


「なあ、チェルシャ、私は和解勧告を出したよな? 届いたのも確認したな?」

「はいー、魔王様。勧告というか休戦の提案ですが。間違いなく内容は和解を促すものでしたー。もちろん王国上層部が読んだことも確認しておりますし内容のすり替えもありませんでした」


 和解の文書を届けたのはこの秘書チェルシャである。アルベッタが魔王となる以前より交友がありその実力は信用しているし


「なら続いて尋ねるが……王国の攻勢が激しくなったのはいつだ? 私の記憶違いじゃなければその提案とやらを届けてからな気がするんだが……」

「そうですねー。その認識は間違ってないかと思われます。事実街に潜入している獣人からは民衆に知らせが出ました。先程届いたこの紙ですね」

「お前人間の文字も読めるのか……。で? 何が書いてある? というか読めるならさっきのタイミングで言え」

「これくらい魔王秘書するなら余裕ですよー。私にこの世の言語で読めないものなんてありませんともー」


 さっきは別件で忙しかったんですよー、という気の抜けた返答に魔王は呆れながらも内容を聞く。


 そしてその内容は、彼女の予測にはないものだった。


『今こそ決着のとき! 魔王を打倒するべく兵器・勇者の導入を決定!!』


「…………」

「どうしましたー?」


 完全に固まった魔王に秘書はニコニコしながら他の作業を済ませていく。


「チェルシャ」

「はいなんでしょー?」

「和解の話は?」

「出てませんねー」

「どうして?」

「さあ?」


 戦線は激化していく。


〇〇


「円転の勇者ガラン、比肩の勇者アイ、懸命の勇者クミー、超克の勇者ファグソト。以上4名に対し王国より魔王討伐を命ずる」


 ワァッと言う歓声とともに、王都の一番広い式場では4名の男女が国王から使命を授かっていた。


 立ち並ぶ神官や大臣は厳かに、民衆は割れんばかりの拍手を送る。


 これは勇者の誕生の儀と呼ばれ王国から力のあるものを勇者として称え、望みを叶える代わりにその力を王国のために使うというものであった。


 そして、今回の使命は魔王の討伐、及びその残党となる魔族の掃討だ。


「仰せのままに」

「おーせのままに」

「はい、承りました」

「はいよっと」


 彼らに身分も作法もない。普段は逸脱した力を持つものとして忌避される超越者だ。


 本来ならばそんな彼らに対して王国が関与することはなく、その逆もまた然りで、力を持つ者が王国に何かを求めることもなかった。


 しかし例外はある。王国では手に負えないと判断された事例ではその超越者の力を持って自体の解決にあたるし、超越者の中には彼ら自身では叶えられない望みを持つものはいる。


 その望みを叶える代わりに王国に対し、所有する力を持って応えるのが勇者の仕組みだ。


「ではガランから順に、望みを伝えよ。必ず叶えよう」


 もちろん無茶な望みは王国も叶えることはできないし、それは超越者も把握している。彼らが望むのは本当に些細なことだ。

 事前の打ち合わせどおりに口を開く。


「騎士団への加入を」

「友達をつくりたいです」

「王国の研究所への立ち入り許可を」

「食いもんくれたらそれでいい」


 四者四様の言葉。それを受け儀式は終わる。


「承った。使命を果たした時には必ずや叶えよう」


 この日より民衆に見送られながら、四人の勇者が参戦した。


また余裕ができたら投稿します……

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