第四節 法具の可能性
「う~む。むずかしいのぉ・・・・。」
悩んだ表情で退魔の弓を引いている弥勒御前であった。
「弥勒様。神仏の神通力を感じるのです。いくら頭で考えてもダメです。感じてください。」
不動丸は弥勒御前に法具の使い方を教えていた。
「感じるとはなんじゃ?わけがわからんぞ?」
「まぁたしかに感じ取るっていうのは難しいですよね。帝釈みたいに土壇場でコツをつかんだわけじゃないですから。」
困惑した表情で不動丸は弥勒御前に話しかけた。
「和尚なら神通力を感じ取るコツを説明できるでしょうけど。その和尚は今清浄京の寺にいるから無理だし。」
「和尚?だれじゃそれは?名はなんと申す?」
「はい。和尚の名前は法海と申します。」
「なんじゃと!?あの法海か?!」
和尚の名前を聞いて驚いた表情をする弥勒御前であった。そしてその会話を座って横で聞いていた帝釈と天女は不思議そうな顔を浮かべていた。
「みろくちゃん。法海さんってだれなの?」
天女が弥勒御前に質問をすると弥勒御前は法海和尚について語りはじめた。
「法海とは退魔師のなかでも特に法力が優れている僧のことじゃ。あまたの妖怪たちをその法力と神仏よりたまわりし法具で退治した僧なのじゃ。」
「へぇ~。有名なお坊さんなんだね。」
なんとなく納得した表情で天女は弥勒御前に返事をかえした。
「清浄京まではあと少しだから、弥勒様と天女ちゃんは清浄京についたら法海和尚にあって法具の使い方をじっくり教わるといい。」
「そうだね。私も退魔の羽衣の使い方わからないままだし、でもなんとか使って羽衣にはまもられているし、法海さんにじっくり教わるといいかもね。」
「不動丸さん。法具の使い方を教えてくれるといったけど、実際は説明できるほどわかっていないんだね?」
「不動丸でいいよ。帝釈。そうだな。三人ともその場の勢いで使いこなせるかな?って思ってたけどやっぱり詳しく説明しないとダメなときはあるものだな。」
あせった表情で帝釈の言葉に答える不動丸であった。
「まぁあれだ。清浄京につくのももう少しだし、俺と帝釈がいれば女の子二人くらいは妖怪からまもれるだろ。天女ちゃんもなんとなくだけど退魔の羽衣をつかいこなしてるみたいだしよ。」
「そうだな。話は清浄京についてから・・・ってことになるな。」
不動丸は納得した帝釈の顔を見てホッと胸をなでおろしたのだった。
一方、帝釈たちをおっていた阿修羅丸と滅天童子たちは帝釈たちのもつ法具の神気を感じ取りながら暗殺部隊が退治された場所へときていた。
「うっは!すげえな!暗殺部隊と戦った痕跡であいつらの強さがわかるぜ!」
そこには妖怪の暗殺部隊と帝釈たちが戦闘をおこなった生々しい痕跡が残っていた。
「これはすごい。巨石を割り、大地をえぐった後が見られます。」
冷静に戦闘の痕跡を分析する滅天童子であった。
「なぁ滅天よ。これだけすごい法具の力ならその使い手も強いってことだよな?」
「いいえ。阿修羅丸様。法具の力が強いからといってその使い手が強いとはかぎりません。暗殺部隊は確かに妖怪の中でも精鋭を集めたものたちですが、法具の力が強すぎて逃げたということも考えられます。」
「何でもいいよ。強ければ俺はそれでいいから。早くそいつらと戦ってみたいな。」
戦いの衝動を抑えきれない修羅丸であった。
阿修羅丸たちが戦闘の痕跡をうかがっている間、帝釈たちは清浄京に入っていた。
「うわ~すご~い!ここが清浄京?綺麗なところだね~!」
神仏の結界にまもられ、水晶のような輝きを放つ都が天女の目には移っていた。
「わらわもはじめてきたが、これほど美しい都とはおもわなんだぞぉ!」
弥勒御前も天女と同じように都の美しさに感動をしていた。
「和尚のいる寺はここから、そんなに遠くない。都の中を案内する前に和尚にあっておこうか。」
「そうだね。目的が最優先だから、都の観光はあとにしよう。」
不動丸の意見に賛同する帝釈であった。
法海のいる寺へと向かった帝釈たちは会話をしていた。
「のぉ。不動丸。この都におるのはみんな退魔師なのか?」
「そうです。弥勒様。都の民はすべて生まれながらに神仏の神通力により、法力をもっているものが大勢おります。俺なんかはちょっと特殊な家系なんですが、たまに都の外で法力をもって生まれ、
その法力を代々受け継いで、神仏より法具をたまわる者もおります。」
「ほほぉ~。なるほどのぉ~。」
「帝釈と天女ちゃんは本当に特殊な例ですね。まさか時代を超えて未来からやってきたなんて例はありませんから。よほど神仏は常闇の主に脅威を持っているかと思われます。といってる間についたかな。
ここが法海和尚の寺です。」
「寺の概観は俺たちのいる時代とそんなにかわらないんだな。」
「そうだねぇ。どこにでもあるお寺って感じがする。」
帝釈と天女は寺をみると自分たちのいた時代の寺のイメージを重ね合わせていた。
帝釈たちは不動丸の案内で寺の境内へと足を運んだ。
そこにはほうきで寺の境内を掃除する一人の僧をみつけた。
「和尚!」
突然不動丸は大声で掃除をしていた僧を呼んだ。
それにきづいた僧は帝釈たちの前へと歩み寄ったのである。
「不動丸ではないですか。久しぶりですね。」
「和尚こそお変わりなく元気そうでよかったです。」
「そこにいる変わった服装をしている人たちはどなたですか?」
質問をする法海であった。その質問に対して帝釈たちはことの成り行きと妖怪たちとの戦闘など今まであったことを話をした。
「それは大変な思いをしましたね。しかし、帝釈天様も重い役目を与えたものです。よほど神仏は常闇の主に脅威を抱いているのでしょう。」
「ねぇ。たっちゃん。法海さんってもっと年をとった人かとおもったけど、若いよね。30歳くらいに見えるよ。」
ひそひそ話をするように天女はいった。
「よくいわれますよ。」
それを聞いていた法海は笑って答えた。
「事情はわかりました。隣国の姫君弥勒様そして、帝釈くんと天女さん。私のできることならなんでも力を貸しましょう。帝釈天様よりたまわりし法具の使い方をお教えします。」
法海は事情を聞きつつ、こころよく帝釈たちの力になることを言ったのである。
「都についてそうそう修行に入るというのも大変でしょ。まずはここに泊まり、ゆっくりして都を見学してくるといいでしょう。」
「じゃあ都の案内は俺がしてやるよ!」
案内役を買って出た不動丸であった。
「不動丸よ。くれぐれも神皇様のおられるお屋敷にはちかずかぬようにな。」
「わかってますよ。」
「神皇様って?」
「神皇様っていうのはこの都を治める一番偉くて神仏に近い人のことをいうんだよ。お屋敷は警備が厳重で退魔師の証をもっていないとちかずけないからな。三人とも退魔師の証はもってないだろ?
だから、警備兵に怪しまれるってわけだ。それにその服装だろ?よけいにあやしまれるぞ?」
不動丸は神皇の屋敷にちかずけない理由と神皇のやくわりについて説明した。
不動丸は都にあるいろいろなお店を案内した。食べ物を提供するお店・退魔用の品物を売るお店など都にあるさまざまなお店を案内したのである。
見るもの・聞くものすべてが珍しかった弥勒御前は都のお店に好奇心を隠さずにはいられなかった。
「清浄京は変わった食べ物などがいっぱいあると聞いてはいたが、まさかここまでとはのぉ!おもしろいぞ!」
「みろくちゃんって好奇心旺盛だよね。見てておもしろい。」
微笑むように天女は弥勒御前の様子を見ていた。
帝釈たちが都の道を歩いていると曲がる路地から一人の走ってくる女性が突然現れた。
「痛い!」
ぶつかって転んだ女性に帝釈は手を差し伸べて謝罪をした。
「すみません。大丈夫ですか?」
「平気です。あわてていた私も悪いのですから。」
帝釈の手をとって起き上がる女性。その姿は頭に笠をかぶって顔を隠していたがなんとなく神々しい様子がうかがえた。
手をとった瞬間何かを悟ったかのような様子でかぶっていた笠をあげ、帝釈をみつめる女性であった。
見つめている間に兵士の格好をした退魔師たちがその女性にかけよった。
「お探ししましたぞ。急に走り出し、見失ったので心配いたしました。さぁ帰りましょう。」
女性は去り際に、帝釈に名前をたずねた。
「よろしいですか?よければあなたのお名前を教えてください。」
「俺は九品院帝釈といいます。」
「帝釈様ですね。近いうちにまたお会いするかもしれませんね。」
意味深い言葉を残してその女性は兵士に守られながら帝釈たちの前から去っていった。
「綺麗な人だったね。たっちゃんの顔を見たときびっくりしていたようにもみえるけど。」
「帝釈に一目ぼれでもしたんじゃねえか?」
帝釈をからかうように不動丸はいった。
「退魔師の兵が護衛についておったのぉ。どこかの有名な退魔師の娘ではないか?」
退魔師にも、位と家柄があり、その役目によって退魔師たちは妖怪を討伐するレベルが存在していた。
「そうだな。俺の家柄もそんなに位が高いほうじゃなかったけど退魔師の護衛がいるってことは相当な位の退魔師の家系だろうな。」
弥勒御前と不動丸はその女性の家柄の位の高さを推測していた。
都の散策が終わった帝釈たちは法海のいる寺に戻ってきた。
「おかえりなさい。都はどうでしたか?」
寺の入り口を掃除していた法海は都の感想を聞いた。
「綺麗な都でしたよ。いろいろなお店がいっぱいありましたし、俺たちの時代にはない雰囲気とかもありました。」
都の感想をいう帝釈。
「そうですか。それはよかったです。」
都の感想を聞き喜んで微笑む法海であった。
「今日はもう日が暮れて暗くなります。法具の使い方の修行は明日からにしましょう。食事とお風呂の用意ができています。今日はゆっくり休んでください。」
帝釈たちは寺で一夜をすごし、眠りについたのである。
清浄京を鋭い眼光で見つめる眼が光っていた。
「あいつら清浄京に入ったみたいだな。さすがの俺でもあの清浄京の結界には入れない。」
「私もです。清浄京の結界を突破できるのは常闇様くらいのものです。」
「そうだな。オヤジくらいの力がないとあの結界は突破できない。」
阿修羅丸と滅天童子は清浄京を見つめながら話あっていた。
「やつらが、清浄京を出るのを待ちましょう。それまで他の妖怪どもに監視をさせておきます。阿修羅丸様はおやすみになってください。」
「わかった。やつらの監視はお前にまかせる。」
阿修羅丸と滅天童子の妖怪たちは帝釈たちが清浄京をでるまでの間、野営をすることにきめたのだった。
翌朝、帝釈たちは顔を洗い、朝食をすませ、自分たちの持っている法具の使い方と修行を開始するところであった。
「よいですか?法具とは本来神仏の神通力をもちいてこの世に神仏の力を具現化させることにあります。つまり、法具に願いをこめて妖怪を滅することにあります。」
「願いなさい。法具に願いを託し、攻撃の思いをかたち作るのです。」
法海は法具の力の使い方について説明していた。
「法具に願いをこめる・・・・。たしかに妖怪たちに襲われたとき必死だったけど斬ることと避けたいっていうイメージを思った。」
「私もみろくちゃんをまもらないといけないっておもったら羽衣が自然と守ってくれた。」
帝釈と天女は妖怪に襲われたときのことをおもいだしながら法具の力を再確認していた。
「法具にはさまざまな形状があります。剣・矛・盾・まさかりなどあります。形状の違いによって法具の持つ力も違ってきます。帝釈さんと天女さんはすでに自分の持っている法具の基本的な能力は使いこなしているようですね。」
「再確認になりますが、帝釈さんの法具は金剛杵です。その金剛杵は妖怪を斬る剣となります。つまり、斬撃による攻撃・剣より放たれる光の柱による攻撃も可能です。また近接戦闘による回避の予測能力もそなわっています。」
「天女さんも同じように再確認です。天女さんの法具は退魔の羽衣ですが、この都にもなく、私も聞いたことのない法具なので古い文献でその法具について私なりに調べてみました。その羽衣は妖怪の攻撃・妖術を防ぐ盾となります。
しかし、盾となるだけではなく治癒の能力もっており、形状を槍に変えて武器として使用することもできるそうです。通常は神仏のみが着用を許されている法具なのですが、帝釈天様が必要であると判断されて、天女さんに授けたのでしょう。」
「そして弥勒様ですが、いまだ退魔の弓を使いこなせていないようですね。退魔の弓はこの都の退魔師の間ではよく使われている法具なので、扱いは難しくありません。弓のつるを引くと同時に矢で妖怪を射抜く思いをえがいてください。
そうすれば弓の能力が発動します。ですが一番重要なのは帝釈天様から授かった時渡りです。これは神通力といってもいいでしょう。おもった場所と時間軸を把握していれば、短距離の時間移動で妖怪どもの後ろから攻撃することが可能な
能力にもなります。使い方によっては非常に強力な神通力となります。」
「最後に不動丸ですが、あなたには説明するまでもありませんね。あなたに言えることは今持っている法具の力をより強力につかいこなせるようにしなさいということだけです。」
不動丸以外の三人は自分の持っている法具について説明を聞いた。
「まぁ説明は以上です。習うより慣れろとはよく言ったものです。実際に自分でその力を確認するとよいでしょう。」
そういって法海は一枚の札を投げた。すると、そこに巨大な岩が出現したのである。
四人は驚いたようにその巨大な岩を見上げていた。
「これは使役召喚法の一種で、本来は妖怪から身を守るために使われる金剛障壁と言われている術です。なみの妖怪の攻撃や妖術は軽々と防ぐことができます。しかし、この大きな岩を砕くことは簡単ではありませんよ?」
笑顔で語る法海であった。
「じゃぁこの岩を砕けるようになれば妖怪たちとも戦えるってことですか?」
真剣な表情で法海に質問をする帝釈であった。
「そうですね。この岩が砕けるようになれば、常闇の主の側近たちである死将軍たちと対等に戦えるでしょう。もちろん砕ければの話ですがね。」
法海の言い方は帝釈たちに砕けるものなら砕いてみよといわんばかりのいいまわしだった。
「よっしゃ!まずは俺から試し切りしてやるぜ!」
先陣をきるかのごとくやる気を起こしたのは不動丸であった。
「ようするにこの岩をぶった斬ればいいはなしなんだよな?だったら思いっきりぶった斬ってやるぜ!」
不動丸のもつ法具・倶利迦羅から炎が立ち上り、不動丸は勢いよく飛び上がり巨大な岩にめがけて剣を振り下ろしたのである。
しかし、不動丸の剣はその巨大な岩を斬るどころか傷すらつけることもできず、はじかれてしまった。
はじかれた勢いで大きくしりもちをついた不動丸は痛そうにその強打した部分をなでていた。
「いてて・・・。なんて硬い岩なんだ。本当に斬れるのかよ?」
その様子を見ていた法海はいった。
「ちょっとしたコツがいるんです。もちろんコツさえつかめば斬ることもできるし、砕くことも可能です。このように・・・・。」
おもむろに法海はひとさし指をその巨大な岩にあてた。すると巨大な岩に亀裂が走り粉々に砕けていったのである。
それを見ていた帝釈たちはおどろいていた。
「法具なしで岩をくだきおったぞぉ!」
「いいえ。法具ではなく正しくは法力を使いました。法具も法力もにたようなものです。岩をもう4つだしましょう。それぞれがその岩を砕いたり、斬ったり、貫いたりすれば法具の本当の力を引き出したということになります。」
法海はまた金剛障壁を召喚するための札を4枚投げた。
「そうですね。このままだとみなさんはお困りになるでしょう。では私からひとつ助言をさせていただきます。」
「みなさんは何のためにこれから妖怪たちと戦うのですか?帝釈天様の言われたとおり使命をはたすためですか?それとも常闇の主に奪われた国を取り返すことを使命に感じているからですか?そうではないはずです。この言葉をよく理解しなさい。
そうすればきっと岩を砕くことができるでしょう。」
帝釈たちにアドバイスをした法海は笑顔のまま寺の本堂へと姿を消したのである。
法海からアドバイスを受けてから数時間がたった。しかし、その巨大な岩に傷ひとつつけることができない帝釈たちであった。
「羽衣を槍に変換できるようになったのはいいけど、貫けない。本当にこの岩傷つけられるの?」
「まったくじゃ。なんど矢で打っても射抜くこともできぬ。」
弱音を言う天女と弥勒御前であった。
そんな弱音を言っている傍ら、帝釈は法海の言っていた言葉を理解しようとだまったまま考え込んでいた。
「どうした帝釈?座り込んでだまったままだぞ。」
「いや。法海さんが言っていたこと意味をかんがえていたんだけど昔じいちゃんから言われた言葉と似てるんだよ。」
「似てる?なにがだ?」
理解をしていない不動丸であった。
「法具の力を引き出す基本って願いだって、法海さんがいってたよな。願いってよく考えると二つ意味があると思うんだよ。1つは自分のために願う方法。2つめは人のためになにかをしてあげたいと願う方法の2種類あると思うんだ。
昔じぃちゃんがいってたんだよ。人って言うのは人のために何かをすると意外な力がでるっていってたんだよ。」
そう言った帝釈はおもむろに剣を構え、岩に向かって斬りつけた。
すると岩は豆腐を斬るかのようにすんなりと真っ二つに割れたのであった。
それを見て三人は驚いた。
「おまえ。今何をしたんだ!?」
驚きを隠せない不動丸であった。
「うん?ただ天女を守ってやりたいとか、弥勒の国を救うために力になってあげたいって心の底からおもっただけだよ?」
「それだけ?」
「そう。それだけ。」
「おめでとう。帝釈さんコツをつかんだようですね。それでいいのです。心の底から人のために何かをしてあげたいと念じることが法具の力を最大限に引き出す方法だったのです。」
コツをつかんだ帝釈に対して拍手をする法海であった。
「この短時間でよくそのことに気づきましたね。この考え方がわからないで法具を使っている退魔師さんたちはこの都では多いいのですよ?この方法を知っているのはごく一部の上級退魔師さんたちだけです。」
そのように法海が帝釈たちにつげると、突然大声をあげた。
「よくわからねぇ!理屈もわからねぇ!俺には理解できねぇけどようするに仲間の力になってやりたいと思えばいいんだろ?!」
叫びながら不動丸は剣を構えた。そうすると全身に炎を身にまとい、剣が真紅の炎に包まれたのである。
「ぶった斬る!!」
不動丸は叫びと共に剣を岩めがけて思い切り飛び、岩にめがけて剣を振り下ろした。
すると斬れなかった岩がこっぱみじんになるように破壊されたのである。
「おお!やったぞ!」
歓喜の叫びをあげた不動丸はガッツポーズをとっていた。
「不動丸にできて、わらわにできないことはないはずじゃ。不動丸に続いてわらわもためしてみようぞ!」
不動丸の歓喜あふれる喜びに刺激されたかのように弥勒御前も挑戦しようとしていた。
「そうじゃな。わらわは天女や帝釈たちのことが好きじゃ。だから仲間がきづつくのも嫌じゃ。仲間を守りたいと法具に願いをこめようぞ。」
不動丸とは反対で弥勒御前は深呼吸をして冷静になり、物静かに弓のつるを引き、光の矢を放った。
その放たれた光の矢は妖怪の反射神経ですら避けられないほどの速度であった。岩に矢が突き刺さると同時に岩は爆発音を上げ、隣の塀まで粉々になっていた。
それを見た弥勒御前は驚いていた。
「不動丸に引けを取らぬ破壊力じゃな・・・・・。」
最後に残ったのは天女であった。
「私にはたいしたこともできないけど、たっちゃん・みろくちゃん・不動丸さんがいるから、自分の手の届く範囲そう、せめて自分の手の届く範囲の人だけでも守りたいと願います。」
天女が願った瞬間であった槍の形状を保っていた羽衣が光りだした。光が天女を照らしているとき、天女には岩の急所が見えていた。
「なんだろ・・・・なんとなくだけど、自分の感じた場所にこの羽衣の槍をつけば岩が壊せそうな感じがする。」
天女は自分の感じ取った感覚に身をまかせるかのように思いっきり、岩の急所めがけて槍を突き立てたのである。
そうすると、その急所をついた槍は突き立てられたあと、砂が崩れ落ちるかのように、粉々になり、土へとかえっていったのだ。
なんとか岩を破壊することに成功した帝釈たちは安堵の表情を浮かべていた。
「みなさん。どうやら法具の本当の使い方と習得できたのですね。うれしいかぎりです。」
その様子を寺の本堂の奥からでてきた法海は見ており、帝釈たちが法具の本当の使い方を習得したことを確信したのである。
「法具にさまざまな形状があることは、前に説明しましたね。そして法具には使い手によってその妖怪を滅する方法もさまざまなのです。例えば帝釈さんが岩を真っ二つに綺麗に斬ったように
どのようなものも斬れないものはないという斬撃や不動丸が岩を粉々に粉砕したときのようにどのようなものでも砕けないものはないというような、さまざまな特性があります。そうですね。
あと付け加えていうのであれば妖怪の形状にもさまざまありますから、その妖怪たちにあわせて攻撃手段をかえるという戦術も退魔師たちはとっています。もう一度たとえていいますが、
妖怪が液体状だったとすれば、帝釈さんや不動丸の斬る・粉砕するといった攻撃は確かに手傷をおわせ、時間をかけて滅することはできますが、効率が悪くなります。そこで、天女さんの急所を見抜いて
液体状の妖怪にむかって槍の形状になった羽衣でつけば、一気に蒸発させることも可能です。このように、時と場合に合わせて戦術をねっていく方法も妖怪たちと戦っていく上で重要になります。」
あがながと法海は法具で妖怪を滅するときの方法と戦術がさまざまあると説明をした。
「難しいですね。妖怪の種類にあわせて戦闘方法かえるか・・・・・。」
帝釈は法海の説明を聞きながら考えていた。これから先どのような妖怪たちと戦うのか。そしてどのような戦術が有効になっていくのかということを模索していた。
「そんなに頭を悩ませる必要はありませんよ。いい忘れましたが法具にはとっても素敵な便利機能がついてるんです。法具には妖怪と戦闘をするときに妖怪の特性・有効な攻撃手段をすぐわかるように知らせてくれるのです。
だから、妖怪たちとの戦闘で誰が中心になって戦い、ゆうこうだをあたえられるかを考えればいいだけなのです。もちろん大勢の妖怪たちが襲ってきたときも法具は有効な攻撃手段を教えてくれます。」
法具の特性などさまざまな説明を聞いていた帝釈たちはなんとなくではあるが理解した。
「法海さんそれだけいっぱいの便利機能があったら戦闘になれていない私たちは頭が回らなくなりませんか?」
天女は不動丸以外、戦闘経験の乏しい帝釈・天女・弥勒御前の三人は頭の整理がつかないのも現状であり、課題であると思って発言をした。
「確かに不動丸以外は妖怪との戦闘になれていませんね。でも大丈夫です。あなたたち戦闘経験に乏しい三人でも法具をつかって戦えます。仲間と法具を信じてください。」
法海の言葉を聞いても確信的な理由を得られていないという顔をする帝釈であった。それを見ていた法海は、
「では、実際に妖怪たちと戦ってみますか?数日前から清浄京の外で大きな妖気が二つと複数の小さな妖気が感じます。たぶん、帝釈さんたちを待ち伏せしているのでしょう。」
妖怪たちの気配に気づいていた法海であった。
「妖怪の気配を感じていたならなぜ都の退魔師たちは動かんのじゃぁ?」
「そうですよ。法海さんがきづいていたのならとっくに都は騒ぎになってたはずです。」
帝釈と弥勒御前は法海になぜ妖怪に対して対処しないのかを問い詰めた。
「都が騒ぎにならない理由。それはですね。私がとあるお方に申し出をして都の退魔師たちに動かないように命令してもらっていたのです。」
法海は帝釈たちが法具の使い方などを習得できることを予測していたかのように計画的に物事を言った。
「とある方?ってだれだよ。」
「それは都の外にいる常闇の主の側近級の妖怪2匹と複数の妖怪どもを退治してから教えましょう。」
不動丸の質問を濁すかのようにいう法海であった。
「もしものときを考えて私も今回の戦闘に参加いたしましょう。その条件でとある方から許可を得ています。不動丸、妖怪との戦闘はあなたは数をこなしてなれてはいますが、側近級の妖怪が2匹いることをわすれないで
くださいね。」
「わかってるよ。普段の戦い方とは違うんだろ?」
不動丸に忠告をするかのように法海はいった。
帝釈・天女・弥勒御前の三人は緊張をしていた。本当に今回の戦闘で勝てるのかという確信が得られていなかったのである。




