第三節 未知数の魔物の能力
村へ戻っているところを冥魔導神は水晶を通してみていた。
「滅天童子よくやりました。恐怖心による私へ送られる力はとても美味でしたよ。しかし今回私たちの精鋭部隊の特殊能力をもった魔物を3匹むかわせたのはなぜでしょう?なにかの作戦ですか?」
「はい。やつらに能力を持つ魔物を見せておくことでいろいろと作戦が立てやすくなります。つまり、状況に応じて能力を持った魔物を退魔師にぶつけることによってやつらは退魔師数名で対処するでしょう。
そうすることにより、退魔師を分断し、一般の魔物でも力をつけた退魔師を倒すことができます。」
「それはよい考えです滅天童子よ。こちらの采配で戦況がかわるというのは実におもしろいことです。」
「ありがとうございます。ですが村への襲撃はすこし控えたほうがよろしいかと思います。やつらに能力をもった魔物への対策をたてられると厄介ですから。」
「わかりました。ではしばらくの間神仏のものどもの様子を監視しましょう。」
「かしこまりました冥魔導神様。」
冥魔導神と滅天童子たちが話しをしている間、帝釈たちは村であった特殊能力をもった魔物のことを神皇に報告したのであった。
「そうですか。村でそのような出来事があったのですね。法具への絶対耐性・法力への絶対耐性・法力を感知しそれを避ける能力どれも厄介な能力だと思われます。その魔物への対抗手段も考えなくてはなりませんね。
法海殿なにかよい案はないでしょうか?」
「特殊能力をもった魔物を相手にするならそれに特化した退魔師の部隊を編成するとよいかと思われます。」
「ですが、魔物の能力は未知のものが多いです。部隊を編成したとしても対処できないところもでてくるのではないかと思いますね。」
「それなら雫その特殊能力をもった魔物たちは俺たちで対処するよ。神化の力を無効にできる魔物はいないと思うから。」
帝釈は神化の力を無効にできる能力をもった魔物はいないと考えての発言であった。
「でも、帝釈さんたちだけでは人数がたりないとおもいます。敵の処理に時間がかかってしまうのではないですか?」
「法海さん大丈夫です。神化の力を最大限に発揮すれば倒せない相手じゃないと思います。今までの戦いでは最悪の状況を想定して温存していましたが、能力をもった魔物があらわれたということは対策しようのない
神化の力で倒すほうがいいと思います。」
「やはり最後は帝釈様たちに負担をかけてしまうのですね。本当に心が苦しいことです。」
「しずくちゃん私たちなら大丈夫だよ。私たちはみんなで戦ってるんだから仲間を信じてきっと大丈夫だから。」
帝釈たちに心配をかけてしまうという神皇の思いを取り除こうとする天女であった。
「そうじゃぞ雫よ!わらわたちなら何百何千の魔物がこようと本気になったわらわたちに勝てはせぬ!安心せよ!」
弥勒御前の天女と同じ心境であった。
「二人ともありがとうございます。その言葉を聞けただけで救いです。わかりました。その魔物たちは帝釈様たちで対処してください。ですがもしものことを考えて帝釈様たちに数十人の退魔師を護衛につけます。
そしてその護衛の指揮には法海殿におまかせします。」
「わかりました。護衛の退魔師については私に心当たりのある人材を選んでよいでしょうか?」
「編成はおまかせします。法海殿が選んだ護衛部隊なら安心できるでしょう。しっかりと帝釈様たちの護衛をお願いします。」
「かしこまりました。神皇様。」
法海は神皇のいる屋敷をあとにしていそいで寺へと帰り、部隊編成するための人材を準備しはじめたのであった。
神皇は不安な表情を浮かべていた。これからもっと激しくなる戦いになるであろうと思い、帝釈たちの身をあんじていたのである。
その気持ちを察したのか天女は神皇のそばへと近寄り、手を握りしめたのである。
「大丈夫だよ。しずくちゃん。今までたっちゃんやみんなでいろいろな困難に打ち勝ってきたんだから乗り越えられるよ。私たちがついてるから安心して。」
「天女さん・・・・。ありがとうそういってもらえると体の震えもとまり、心のそこから勇気が出てきます。それに私が不安になっていては清浄京の民や兵にも不安を与えることになってしまいます。」
「雫俺たちは負けないよ。冥魔導神を倒すまでは倒れるわけにはいかないからね。」
「そうだぜ。俺らだって雫やみんなを助けたくてここに集まってるんだ。おまえ一人じゃないってことだよ。」
「不動丸のいうとおりじゃぁ。しずくよ。安心せい。お主だけに重荷を背負わせるわけではないのだからのぉ。」
「みなさんありがとうございます。」
神皇の心から不安は消え、支えてくれる仲間そして友と呼べる存在を実感し、安堵の表情を浮かべていたのである。
そして帝釈たちは落ち着いた神皇を見て、屋敷をあとにしたのである。
そのころ急いで寺に戻っていた法海は対特殊魔物部隊の編成に頭をなやませていた。そこへ帝釈たちが帰ってくると、法海は帝釈たちに部隊の編成について相談したのである。
「おかえりなさい。帝釈さんどうでしょ?私の考えなのですが、法具に特化した退魔師と法力に特化した退魔師を半分づつ均等にわけていいのではないかと私は思います。」
「そうですね。均等よく編成したほうが部隊編成にいいかと思います。近接戦闘の俺・不動丸・阿修羅丸に何人か同じ近接戦闘を得意とする退魔師がいれば敵に処理も楽になると思います。
それに近接戦闘が前にでることで遠距離からの後方支援も確保できますね。最悪の場合天女を部隊の最後尾にすることで傷ついた退魔師を治癒することもできます。どちらにしても近接戦闘
をあつくすることで鉄壁の陣営がつくれると思います。」
「攻撃は最大の防御ですか。帝釈さんのいうことも一理ありますね。私の場合はこのように考えています。近接戦闘は帝釈さん・不動丸・阿修羅丸のみでおこない一気に神化の能力で敵の前衛を
なぎ払い、後衛をむき出しにして後衛から法力でいっきに殲滅するという方法もいいのではないでしょうか?」
「でもよ。二人のいうことには敵の絶対無効化能力のいる魔物のことも考慮しての話なんだよな?でもまあ時と場合によるよな。」
「やはり、勝利の決め手は帝釈さんたちの神化に頼るしかないのですね。」
「大丈夫だって和尚、退魔師数人護衛につけてくれれば俺らで敵の前衛も後衛も突破するからよ。」
こうして帝釈たちは部隊の編成と人材を和尚から聞きながら戦略を練っていたのである。




