第五節 拮抗勝負
都の施設の広場に都中の退魔師と帝釈たちが帝釈天の前に整列していた。退魔師たちの中には様々な思いでこの日をむかえていた。緊張して眠れなかったもの、自分の力が魔物に通用するのかというもの、
などいろいろな思いが交差していたのである。
「退魔師たちよ。よくぞあつまった。汝らの力を信じよ。汝らがやれることはやった。あとは魔物と戦うことを恐れない勇気と汝らには背中を預けられる仲間たちがいるということを心しておけ。
恐怖心を捨てよ。恐怖することで魔物たちはより強くなる。汝らが仲間をどれだけ信頼できるかで今回の作戦と己の強さが決定することを知るのだ。」
帝釈天はおそれこそ魔物の糧となることを退魔師たちに伝えた。そして仲間を信頼することが最大の力となることを諭したのである。帝釈天の言葉に反応するかのように退魔師たちは心を震わせていたのである。
帝釈たちと退魔師たちは魔界へ転移する法具を天にかざして発動させたのである。その転移は一瞬であった。帝釈たちは魔界の異様さに驚きを隠せなかった。そしてあとを追うようにして帝釈天と神仏の兵隊たちも
魔界に転移した。転移してきたことを察知した冥魔導神は予想外のことと思い急ぎ魔物の軍勢をそろえるように滅天童子に指揮をとらせたのである。
「神仏ども。まさかこんなに早く私の元へくるとは予想外でした。滅天童子はいますか?」
「はい冥魔導神様。ここにおります。」
「神仏と退魔師たちがこの魔界へと転移してきました。滅天童子よあなたが指揮をとりなさい。それと魔具はしっかりと整っているのでしょうね?」
「ご安心ください冥魔導神様。すべての魔物たちに魔具をもたせております。そして指揮役もかしこまりました。早急に魔物たちに向かえ討つようにように指示いたします。」
滅天童子は帝釈たちをむかえうつため魔物の軍勢を進行させたのである。そして帝釈たちも魔物を討伐するために進行を開始していた。
しばらくすると帝釈たちと魔物の軍勢を率いた滅天童子がはちあわせになった。
「これはこれは皆様ようこそ魔界へ。どうですか美しいでしょうこの禍々しさをみて美しいとはおもいませんか?失敬あなたたち人間ふぜいがこの美しさを理解できるわけありませんでしたね。
私たちの世界へきたからには神仏ともども滅ぼしてあげましょう。」
「滅天童子俺たちを甘くみないほうがいいぜ?俺たちを倒すくらいの勢いでこないとおまえらが全滅するからな!」
「いいますね阿修羅丸。いいでしょう。魔具の力を試す絶好の機会です。全力でお相手いたしましょう!」
魔具という単語に疑問をいだいた弥勒御前は阿修羅丸に質問をした。
「のぉ阿修羅丸よ。魔具とはなんじゃぁ?」
「わからねえ。俺も初めて聞く言葉だぜ。」
「弥勒御前よ。いい質問です。ご説明しましょう。魔具とはあなたたちが持っている法具と同じで神仏と人間を倒すためにつくられた武器のことです。心してかかってきてください。そうしないと歯ごたえもありませんからね。」
滅天童子は不適な笑みをうかべていた。そして滅天童子の合図で魔物たちはいっせいに襲い掛かってきたのである。帝釈たちが先陣を切り魔物の軍勢にむかっていった。
黒く光ったたくさんの矢が帝釈たちを襲った。しかし、それを天女は退魔の羽衣でふせいだのである。
「みんな大丈夫!?きおつけて退魔の羽衣でふせいだけどむこうも力をあげてるみたい。きっと滅天童子がいってた魔具のせいだと思う!」
「わかった。俺たちも考えながら戦おう。弥勒矢を分散させて敵の後衛にいる魔物たちを狙い打つことはできるか?」
「まかせるのじゃぁ!綺麗に掃除してやるぞぉ!」
弥勒御前は光の矢を空中に放った。そして放たれた1本の光の矢は空中で無数の矢となって魔物の後衛を貫いたのである。
「やったねみろくちゃん!数が減ったよ!」
「やっぱりわらわはすごいのぉ!向かうところ敵なしじゃ!」
「はしゃぐのはいいけど弥勒様。敵の前衛が向かってくるぜ!」
「なら前衛は俺たちの出番だな!」
敵の前衛がおそってくると同時に帝釈・阿修羅丸・不動丸は迎え撃った。そして魔物の中には帝釈たちを集中的に狙うものと退魔師たちにむかっていく魔物もいた。
後方で魔物たちの装備した魔具の力を見る滅天童子。そして退魔師たちの後方で控えて見ている帝釈天と神仏の兵隊たちであった。
帝釈たちを中心にして退魔師たちと魔具を装備した魔物たちの力は拮抗していた。しかし、神化をしている帝釈たちがいる分若干ではあるが退魔師たちが優勢にたっていた。
「どうやら俺たちのほうが優勢みたいだな。法海さんや退魔師のひとたちもみんな前回の戦いより数段に強くなってる。」
魔物の軍勢がおされ気味になっていたことを滅天童子は予想していた。そして滅天童子は魔物の軍勢を退魔師たちだけに集中して攻撃するように指示をした。
「帝釈よ。あなたたちの相手は私がしましょう。私もちょうど専用の魔具を用意してあるのです。その性能を確かめてみるいい機会ですからね。」
滅天童子は自分の魔具を取り出し、帝釈たちに襲い掛かってきたのである。その斬撃は鋭く帝釈がうけきるのもやっとだった。すきをついて阿修羅丸と不動丸が滅天童子に同時に攻撃したが、
滅天童子の持つ魔具の衝撃波でふきとばされてしまったのである。
「ははははは!すばらしい!予想以上です!神化をしたあなたたちに負けぬ力ですよ!」
しかし、帝釈はあせりを感じていなかった。そして滅天童子が力に酔いしれているところに帝釈はすばやく動いた。帝釈の動きに反応した滅天童子は帝釈の攻撃を受け止めたが今度は滅天童子が吹き飛ばされたのである。
「なるほど。さっきの一撃には驚いたけど俺の持つ法具の力で先読みをして冷静に対処すれば勝てない相手じゃないな。」
「いいますね。帝釈よ。私を圧倒した力はほめましょう。しかし、これはあくまで前座にすぎません。本気になった私には勝てませんよ?しかし、そろそろしおどきでしょう。」
滅天童子が魔物の軍勢に撤退するように指示をだした。
「私たちは一度引きましょう。ですが覚えておいてください。魔具を装備した魔物たちとあなたたち退魔師の力は拮抗しているということを!」
魔物の軍勢が撤退していく様子を見て安心する退魔師たちであった。そして帝釈たちもそれをみて一息ついたのである。
「まずいぞぉ帝釈よ!滅天童子のいうことが本当ならわらわたち全員であやつの相手をしないと勝てぬということじゃぁ!」
「そうだな。あいつ専用の魔具か。強力だったぜ。吹っ飛ばされた瞬間やばい感じあったからな。」
「阿修羅丸、弥勒大丈夫。冷静になって帝釈天様の教えてくれたとおりの神化の使い方をすれば勝てない相手じゃなかったって俺は思うよ。」
冷静に滅天童子のことを考えていた帝釈である。一撃をうけたときは驚いていたが本気で受け止めていなかったということ、そして滅天童子も本気になっていないといったこと、この二つをあわせてかんがえてみると滅天童子の言うとおり、帝釈たちや退魔師たちの力は魔具をもっていた魔物たちと力が拮抗していたこと連想されるのであった。
帝釈が冷静に判断している間に帝釈天は魔界から撤退するように退魔師たちに指示をした。
都へもどってきた帝釈たちを心配そうに見ていた神皇が帝釈にむかってきて抱きついたのである。
「よかった。帝釈様よくぞご無事でもどってきてくださいました。私は心配でしかたなかったのです。」
「大丈夫だよ雫。俺たちはみんなで力をあわせれば必ず勝てるから安心して。」
笑顔で神皇の頭をなでて微笑む帝釈であった。しかし、その様子をみていた天女と弥勒御前は帝釈と神皇にちかづいてはなれるように言ったのである。
「こらぁ帝釈はなれぬか!」
「そうだよたっちゃん!いくらたっちゃんでもそれはだめ!」
そのようすを見てニヤニヤする不動丸であった。さらに天女のほうをみてちょっとふてくされている阿修羅丸であった。
そのやり取りのなか帝釈天は帝釈たちのもとへとよってきた。
「汝らよ。よく魔界のものと対等に渡り合えるようになった。そして退魔師のものたちよ。よくがんばった。これならば汝らだけで魔物に対抗することができよう。我らの役目はここまでだ天界へ帰り汝らが冥魔導神を倒すことを願っている。」
そういいながら帝釈天は神仏の兵隊と共に天へと帰っていったのである。そして帝釈天がさったあと神皇が退魔師たちの前にたち発言をした。
「退魔師の皆様よくがんばり、無事に戻ってきました。私は皆様が無事に帰還してくださったことを安心しております。今回は帝釈天様たちの協力があってなしとげたことかと思います。しかし、次からは私たちだけで戦い抜かねばなりません。皆様には仲間がいます。そして守るべきものがあります。その気持ちをもっていればおそれることはありません。私たちは前を向いて戦っていけるでしょう。」
退魔師たちは神皇の言葉に答えるかのように声援をあげたのである。そして、帝釈たちは神皇の傍らでその言葉をきいていた。
「さぁみんな法海さんがいる寺へもどろ。そして明日からまた修行の続きだ。」
「なぁにはりきってんだよ帝釈。でもまぁお前のそういうところ嫌いじゃないぜ。」
「そうじゃなぁ!わらわたちが力をあわせれば冥魔導神なんぞひねりつぶしてやる!」
帝釈たちは実感していた。背中を預けられる仲間の存在を肌で心で感じとっていたのである。




