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第四節 前夜

都の退魔師たちは神仏の兵から神仏の力が宿った法具の使い方を習い、それを実践していた。退魔師たちの思いはさまざまであるが、早く戦力になれるようになりたいという気持ちは一緒であった。


帝釈たちを指導していたのは帝釈天自らであった。帝釈天からはまだ神化する方法について聞いていたがどのように力を使うかまでは詳しく聞いていなかったからである。


「よいか汝らよ。以前急をようする結果となって神化する方法についてまでは教えたが、その神化をしたあと正しく力を使用する方法までは教えておらぬかったな。汝らは独学で神化の力を発揮させていたようだが、


 それもよいであろう。しかし、本来の使い方を習得することで独学で神化の力を発揮していたときよりも数倍の力が引き出せるであろう。ではその使用方法について教える。まず、神化とは己と法具が一体となること


 である。つまり汝らが今身にまとっている鎧と法具の力を合わせ体の一部とすることなのである。」


「難しいですね帝釈天様。なにかコツとかはあるんですか?」


「汝らに助言できるとすれば手をにぎり、ひらくときは手を意識するであろう。それと同じだ。法具と鎧を意識すればよい。」


「わかりました。やってみます。」


帝釈天に言われたとおり、帝釈は法具と鎧に意識を集中させた。すると今までに感じとったことのない神聖なオーラが帝釈を包みこんだ。


「それでよい帝釈よ。その感覚をわすれてはならないぞ。」


「帝釈。おまえどうやったんだ?おしえろよ。俺だといまいち理解できないからよ。」


不動丸は帝釈天の説明を理解していなかった。そこで帝釈は不動丸にこのようにいった。


「不動丸。今俺たち神化してるよな?」


「ああたしかに神化しているな。」


「だったらあとは簡単だ。法具と今着てる鎧を帝釈天様がいっていたように体の一部だと思え。なにかつたわってこないか?」


「あ~なんとなくわかるような。わからないような。」


「じゃあその感覚を持ってる剣に集中させろ。そして剣を振り下ろしてみろ。」


帝釈のいわれたとおり不動丸は剣に意識を集中させて振り下ろした。そうするとものすごい火柱が立ったのである。


それをみた不動丸はびっくりして後ろへ飛んだのである。自分が何をしたのかわからないままであった。


「不動丸よ。それでいい。汝は考えるよりも実践で体に経験をしみこませる性格だからそれでよいのだ。」


それからも帝釈天の指導を受け力をつけていく帝釈たちであった。


冥魔導神は帝釈たちや都の退魔師たちの力が大きくなっていくことを魔界で感じとっていた。


「滅天童子よ。なにやら清浄京で神仏たちが騒いでいるようですがなにかありましたか?」


「はい冥魔導神様。清浄京の退魔師たちが神仏たちによって力をつけてきているようです。その力は我ら魔物の力と同等になるかと思われます。」


「それはよくない状況ですね。滅天童子よ。なにか手をうってあるのではないですか?」


「はい。神仏たちが人間に力をかすことは予測していました。そこで我々魔界のものにも扱える魔具を用意させました。この魔具は神仏や人間がもつ法具に対抗できるようにつくったものです。


 さらには魔物が人間たちと戦うときに人間が感じる負の力を魔具を通して冥魔導神様の力へと変換できるようにしてあります。」


「ほお。私の力をあげてくれる魔具とはすばらしい。よくぞ考えました。滅天童子よ。これで魔物たちが戦えば戦うほど私がつよくなるといことですね。」


「魔具をもちいて人間たちと戦うのはもう少しお待ちください。生産体制を整えるのにすこし時間をいただくことになります。」


「かまいません。人間たちへの対抗手段が用意できるだけよいということです。着々と準備をすすめなさい。」


「はっ!かしこまりました冥魔導神様。」


滅天童子はこうして神仏への対抗手段を冥魔導神に伝えたのである。それを知らずに帝釈たちは修行を続けているのであった。


そして帝釈天と天界の兵隊から退魔師たちへの修行から数日たった。退治魔師たちの修行の成果もではじめていた。そこで帝釈天は一度魔界に退魔師たちをいかせ修行の成果を試してみることにした。


「神皇よ。そろそろ退魔師たちも法具の扱いになれてきたころだろう。どうだここで一度魔界に攻めてみるというのはどうだろうか?」


「はい帝釈天様。私も同じことを考えておりました。犠牲がでない程度に魔界に一度転移して退魔師たちの力をはかってみるのもよいかと思われます。」


二人の傍らで聞いていた帝釈は退魔師たちのことをきづかった。


「でも、帝釈天様もしもってことがあるかもしれませんよ?そこらへんのことは考慮してでしょうか?」


「むろん考えている。補助として我らも魔界へ行きもしものときは我らと兵たちで退魔師の壁となろう。」


「それなら安心ですね。じゃぁ今後の魔界への進行を計画するのはどうしたらいいですか?」


「汝ら神化ができるものを中心にして退魔師たちの編成を考えよう。」


帝釈天は神皇と帝釈たちで立てることにした。その作戦内容は帝釈たちを先陣にして魔物と戦わせ、もれてきた魔物を退魔師たちで倒していく作戦である。帝釈が言ったもしものことも考慮して最後部では


帝釈天と神仏の兵隊たちがひかえており、神仏の兵隊といれかわるようにする作戦である。


「作戦内容は以上である。この作戦は汝ら帝釈たちが神化できるものがどれくらい魔物対抗できるかで力の差がわかるであろう。」


「俺たちしだいってことか。」


「責任重大だねたっちゃん。私緊張してきたよ。」


「な~に大丈夫だって。俺たちの後ろには力をつけた退魔師や法海和尚だっていてくれるんだ。仲間のことを信じようぜ。」


「そうだな。不動丸の言うように仲間を信じよう。俺たちができることをすればいいんだ。」


「不動丸よ。おぬしもときたまいいこというのぉ。わらわはてっきりおびえているものかとおもうたぞぉ。」


不動丸が帝釈と天女をきづかって言ったことに対して、からかうように言う弥勒御前であった。


「帝釈天様作戦の実行はいつにいたしますか?」


神皇は帝釈天に作戦の日取りを質問した。


「作戦は明日決行する。汝らと退魔師たちは今日は修行することをやめ、ゆっくりと休息をとり、明日疲れを残さぬよう準備を整えるのだ。」


帝釈たちは明日の魔界の魔物たちと戦うことに緊張していたが、仲間のことを信じるという強い思いで夜を明かしたのであった。


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