第三節 守るものへの思いと強さ
帝釈たちが弥勒御前の国をでてから数日がたった。
帝釈たちは神皇のもとをおとずれていた。そこには天界から帰ってきた阿修羅丸も一緒であった。
「阿修羅丸。帝釈天様はなんていってた?」
「あわてるなよ帝釈。今神皇様にも説明しようと思ってたところなんだ。じゃあ話すからな。帝釈天様は神仏が持つ法具と同じ力を都にいる退魔師たちに与えるといってた。それでその法具にやどった力は
下級退魔師でも上級退魔師とおなじくらいの力になるらしいぜ。それから神仏たちみずからこの都も守るらしいってよ。だからいつでも受け入れられる用意をしておくようにとのことだ。」
「しかし、話を聞くと俺たち人間だけでは対処できないところまできてるってことにならないか?」
帝釈はかんがえていた。天界と魔界が全面戦争となれば人間は滅んでしまうと予感していた。
「帝釈様。ご安心ください。法海が戦っていたことを思い出してください。法海は上級退魔師の中でもうでがたつほうです。もし法海のようにすべての退魔師が同じ力を手にいれたとしたらどうですか?
われわれ人間だけでも対処できるはずです。大丈夫です。きっと守れますよ。それに、天界と魔界が全面戦争にならないように、そのために私たちは人々を守るために戦うのです。」
神皇は帝釈が心配しないように言ったのである。
「そうだよな。天界とか魔界とか関係ない。魔界のやつらが天界にちょっかいだしたとしても俺たちは人々を守るために戦うんだ。それに神仏だって俺たちが滅びないように力をかしてくれてるんだからむしろ感謝しないと。」
「帝釈よ。おまえのいうとおりだぜ。天界に住むようになった俺が言うのも変だけど天界でも人間界でも国でも何かを滅ぼそうとすることはいけないことだ。不幸があっちゃいけない。みんな幸せにならないといけない。だってよ。
誰にだって幸せになれることはできるんだからよ。そいつを守らないと。」
阿修羅丸も帝釈のことが心配であった。阿修羅丸や神皇だけではなくみんな帝釈のほうをみて心配そうに見ていた。
「そうだな。俺には仲間がいる。それに都の退魔師さんたちも強くなるんだからきっと守れるよな。」
「そうだよたっちゃん。前向きにいこ。前向きに!」
「そうじゃぁぞ帝釈!おまえらしくないぞ!もっと元気をださぬか!」
「がらにもなくおちこみやがって。冷静なお前はどこいったんだよ。それにお前の言うように俺たちがいるんだ。大船に乗った気持ちでいろ!」
みんなに励まされる帝釈であった。そして帝釈と同じように自分たちも不安にかられていたが自分たちには仲間がいるとうことを確認してそれぞれが安心をしたのである。
神皇その光景をみて微笑んでいた。その後近くにいた退魔師を呼び都全体にいる退魔師たちを広場に呼び集めるように指示をしたのである。
そして数時間後、都全体からよびあつめられた退魔師たちは広場でごった返していた。そこに神皇と帝釈たちが現れたのである。神皇の姿を見てどよめきが響いていた。
普段屋敷の中で守られている神皇はめったに退魔師の前には姿をあらわさないからである。神仏の森にいたときでさえ護衛の退魔師に守られていたくらいだからである。
「退魔師のみなさん。よく集まってくれました。みなさんも知っているでしょうが、さきの戦いで私たち退魔師は魔界のものとの戦闘で非常に無力であったことを思い知らされました。
そこでこの阿修羅丸様に天界への使いとなってもらい天界にいらっしゃる帝釈天様に対策をとっていただきました。その対策とはまずみなさまが持っている法具に神仏のつかっている力を
あたえることそしてその力によってすべての退魔師は上級退魔師とおなじ強さになれるということです。」
その神皇の言葉を聞いた退魔師たちは歓喜の声をあげていた。歓喜のなかには家族を守れるという声や恋人を守れるという声も聞こえてきた。
そして退魔師たちが歓喜の声をあげていると光が雲の隙間から差し込んだ。その光の中に帝釈天と神仏の兵隊が大勢あらわれたのである。
その光景をみていた退魔師たちは驚きを隠せないでいた。帝釈天と神仏の兵隊たちが地面に着地すると帝釈天は声をだした。
「退魔師たちよ!よくがんばった!汝らの力は日々みている!我ら天界のものに手を貸してくれていることも感謝している!その恩に報いるために我ら天界の神仏も汝ら退魔師たちに力をかそうではないか!
さぁ退魔師たちよ!汝らの持つ法具を天にかかげよ!汝らに神仏の力をあたえ、そして魔界へと転移できる法具も授けよう!」
広場にいた退魔師たちはいっせいに天に法具をかかげると帝釈天は手から光を放ち退魔師たちの法具に神仏の力と魔界へ転移できる法具を授けたのである。
「よいか退魔師たちよ!その腕輪は魔界へ自由に出入りできるように転移の力が備わった法具である。しかし心せよ。我ら神仏が与えた力と腕輪の法具の力に頼りすぎぬことだ!力の使い方は
我がつれてきた神仏の兵たちに力の使い方をおしえてもらうとよい!汝らが自ら精進し力を高めよ!」
帝釈天の言葉を聞き終えたあと退魔師たちはいっせいに雄たけびを上げた。
「帝釈天様ようこそおこしくださいました。わたしたち退魔師に力をかしていただけだことを感謝しております。」
「神皇か、礼はよい。汝ら退魔師は我ら神仏にかわって不浄なものを清めてきてくれた存在。感謝をするのは我々神仏のほうでもある。」
「それでは帝釈天様これから魔界への対応はどのようにいたしましょう?」
「魔界への退魔師たちの派遣はすべて神皇にまかせよう。帝釈たちを中心に動くとよいであろう。神化は退魔師たちにとって切り札でもある。」
「わかりました。ではしばらくの間、都の退魔師たちが先ほどいただいた力を使いこなせるようにいたしましょう。」
神皇は帝釈天はそのように相談しあった。そうすると帝釈天の近くへ帝釈たちがちかよってきた。
「帝釈天様。」
「帝釈たちか。汝らには苦労を幾度もかけてすなぬと思っている。しかし、神化できるおぬしらでしか冥魔導神をたおせるものがいないのだ。」
「大丈夫です帝釈天様。俺には仲間がいますからなにも怖くありません。安心して背中を預けられる存在です。」
「そうか。汝がそのように言うのだから確かなのであろう。冥魔導神をたおすことよろしく頼むぞ。」
「わかりました。」
こうして都をあげて退魔師たちの修行が開始された。退魔師たちは大切なものを守るために必死になって修行に明け暮れていたのである。




