第二節 天命を与えられた少年・少女達
時は令和、とある高校生の日常的な生活へと話はうつる。
「やべぇ!遅刻する!今週連続3回も遅刻したら先生に呼び出しくらうぞ!!」
少年の名は九品院 帝釈どこにでもいる一般的な高校生である。
彼は今必死に、走り、学校へ向かっていた。
「おっと。いけない。おはようございます。」
彼は祖父に言われていたことがあった。
それは通学路にある帝釈天の像に毎朝合掌をして拝むことであった。
彼の名をつけたのは祖父であり、彼の名前もその神さまの名前からつけられたのである。
彼は腕時計を見た。
「オーケー!このペースなら余裕で学校に行けそうだ!」
必死で走っていた少年はペースを保ったまま学校へ向かった。
そして帝釈はぎりぎりで教室につき、席についた。
「おはよ~。たっちゃん。」
教室にぎりぎりでついた少年をあだ名で呼ぶ女の子の声は幼馴染の羽衣 天女
であった。
彼女は帝釈と生まれた時から高校まで一緒であり、家も隣同士で、祖父の代から近所付き合いがあった。
「今日も、ぎりぎりだったね。間に合うか心配だったよ。」
心配そうに天女はいった。
「悪い。昨日も徹夜でテレビ見てたら起きるの遅くなっちゃったよ。」
そういって、謝る帝釈であった。
「そろそろ先生くるから、私席に座るね。」
笑顔で帝釈の顔を見ながら天女はやさしく言った。
帝釈の席は、窓際にあり、授業中ずっと空を見つめ、思いにふけっていた。
「そういえば、昔、俺が小さいころ天女と一緒に家の蔵でみつけた帝釈天の像どうしたかな。」
「家に帰ったら天女と一緒にまた蔵に行ってみるか。」
帝釈は今になってあの仏像を気にしたのか困惑しながら思いにふけっていた。
そして、学校が終わり、放課後になった。
「天女。今日一緒にまたうちの蔵にある仏像を見にこないか?」
家に誘うように言う帝釈。
「いいけど、急にどうしたの?」
不思議そうに帝釈のほうをみながら返事をする天女であった。
「いや。なんとなくさ。今日事業中にまた天女と一緒にあの仏像が見たくなったんだよ。」
「そうなんだ。わかった。いいよ。かばん置いて、着替えたらたっちゃんの家に行くから。」
こころよく笑顔で返事をする天女。
下校途中の二人。
「たっちゃん。いつものやっていかなくていいの?」
「おっとそうだった。今日も一日ありがとうございました。」
帝釈は通学路にある帝釈天の像に合掌をして今日一日の報告をするのであった。
天女もそれにあわせて一緒に合掌をしていた。
「なんかこれ。毎日二人の日課になってるよね。」
「そうだな。じぃちゃんに言われてから毎日だもんな。」
二人は顔を見合わせて苦笑いをしていた。
「じゃぁ。たっちゃん。着替えたらいくから。待っててね。」
「うん。わかった。待ってる。」
そう約束を交わして二人はそれぞれの家に入っていった。
帝釈は家に帰ると早速、したくを着替えて蔵のカギを家中さがしまわった。
「あれ~?おかしいな。ここに蔵のカギあったとおもうんだけど。」
「じぃちゃ~ん!蔵のカギどこにあるか知らない?」
祖父に蔵のカギのある場所をたずねた。
祖父はすぐに蔵のカギのおいてある場所を告げ、帝釈にとりにいかせた。
「あったあった。ありがと!じぃちゃん!」
蔵のカギを探し終わったと同時に天女が帝釈の家のベルを鳴らした。
「たっちゃ~ん!きたよ~。」
そういって早速、帝釈と天女は蔵のカギを開け、帝釈がライトを片手に薄暗い蔵の中へと入っていった。
「薄暗いからちょっと怖いね。」
怖がる天女を横目に帝釈は言った。
「大丈夫だってこれくらい。平気!平気!」
そういいあいながら二人は蔵の二階にある帝釈天の仏像を見に行ったのである。
「ほこりかぶっちゃってるね。」
「そうだね。ここにくるの小さいころいらいだからほこりっぽいのはしょうがないと思うよ。」
サイズは丁度手のひらに収まる程度の仏像であった。
「ほこりはらってあげようか。」
天女は用意してあった布巾でおもむろに仏像のほこりをはらった。
そうすると突然のできごとである。仏像が光り輝き、その光から女の子が飛び出てきたのである。
「いたたぁ・・・・・。ここはどこなのじゃぁ?」
片目をつぶって頭をいたわるようになでている女の子がいた。
帝釈と天女はびっくりした表情でその女の子を見ていた。
それはまるで神社にいる巫女のようないでたちで、髪は長く綺麗な顔立ちをしていた。
「ぶ・・・仏像から女の子がでてきた。」
驚く帝釈。
「なにこれ・・・・夢・・・・?」
現状を理解できていない天女。
帝釈と天女は驚いた表情をかくしきれずに、こわばるようにいったのである。
驚きを隠しつつ、まず言い出したのは帝釈であった。
「きみ・・・だれ?」
「わらわか?わらわは弥勒乃姫じゃぁ。中には弥勒御前と呼ぶものもおるがのぉ!」
「み・・みろくごぜん?・・・みろくのひめ?だめだわけがわからない。」
なおも現状が把握できない帝釈と天女であった。
「そういう。おぬしらはなにものじゃぁ。わらわはほこらにおったのじゃぞぉ?」
「ほ?ほこら?」
「そうじゃ。ほこらにあった仏像を拝んでおったら。ここにおったのじゃ。しかし、おぬしら変な格好じゃな?」
状況を説明するように弥勒御前はいった。
そして、また帝釈天の仏像が光を放った。
「汝。我が分身。帝釈よ。我を見るがよい」
そこには神聖な光に包まれた人物がいた。
帝釈・天女・弥勒御前三人は、不思議そうな顔をしてその神をみた。
「我が名は帝釈天。我が分身帝釈よ。よく聞く聞け。」
「その娘。弥勒御前の時代に悪しき大妖怪が現れた。汝はその娘と共に時を渡り悪しき大妖怪を討伐するのだ。」
理解不能な状況を悪化させるかのようにあらわれたその神は帝釈に討伐をするように申し出た。
「あの・・・・すみません。さらに状況が把握できないんですけど?帝釈天って、神様の帝釈天ですか?」
「そうだ。」
即答で帝釈の言葉を返す帝釈天であった。
「もう一度説明しよう。」
状況を把握させるために帝釈天は説明を始めた。
「そこの娘。弥勒御前の時代に悪しき大妖怪が現れた。その大妖怪は弥勒御前の故郷である国を滅ぼした。」
「大妖怪の名は常闇の主と呼ばれ、かつては天界に住み神仏を尊び・敬った存在であった。」
「しかし、あるときを境にしてそのものは仏の功徳など無いと悟り、神仏に絶望し、人間の世界に身を堕とし、神仏を恨む大妖怪へと姿を変えたのだ。」
「汝はその大妖怪を討伐し、弥勒御前のいた国を取り戻す役目を受けたのだ。」
状況をなんとなく飲み込めた帝釈・天女・弥勒御前たちであった。
「事情は理解できました。でも、なんで俺なんですか?他にも人がいっぱいいるじゃないですか?」
帝釈は状況と自分にかせられた使命を理解し、帝釈天に言った。
それを拒否するかのように言った帝釈に対して、帝釈天は言ったのである。
「汝が選ばれた理由は、我が分身だからであり、仏法を守護する者としての使命を汝は背負っているからだ。」
「俺が帝釈天の分身で、仏法を守護する者・・・・・。そして、そこの女の子弥勒御前さんの国を取り戻して、大妖怪を討伐する?」
「頼む。帝釈とやら!わらわの国と民を取り返すために力をかしてほしい。」
必死ですがる思いの弥勒御前に対して帝釈は
「わかりました。その使命とかいうのお受けします。」
「ちょっといいの?たっちゃん。簡単に受けちゃって!?」
事情を理解した天女は帝釈を止めようとしていた。
「うん。大丈夫。困ってる女の子がいるんだから助けるのは当たり前だよ。」
「それにこれが俺の使命というなら、受けていいと思う。」
正義感の強い帝釈は自分の使命を受け入れて、天女に言った。
「わかった。たっちゃんがそこまで言うなら私も一緒に戦う。たっちゃん一人じゃ頼りなさそうだもん。」
「いいのかよ。天女には関係ないんだぞ?それに怖い思いもするかもしれないんだぞ?」
「ううん。大丈夫。私だってたっちゃんのやくにたちたいから。」
その様子をみていた弥勒御前は
「よいのか?わらわのために力を貸してくれるのか?」
「いいよ。力を貸してあげる。女の子一人じゃ危ないもん。3人で力をあわせればきっとうまくいくよ。」
天女はちからづよく弥勒御前にいった。
「よかろう。汝らの決意しかと心に刻んだ。しかし、今の汝らでは妖怪たちに立ち向かうすべがないのも事実」
「そこで我から汝らに力を授ける。」
「我が分身帝釈には我が力が宿った金剛杵を授けよう。この法具は剣となり、邪を浄化する神仏の力が宿った退魔剣となる。」
「そして名はなんと申したか女人よ。」
「羽衣!羽衣天女です!!」
「わかった。天女よ。汝には退魔の羽衣を授けよう。この羽衣は魔から身を守る盾となり魔の力を払う法具にもなる。そして時に人の心と体を癒す力が宿っている。これを与えよう。」
「そして、弥勒御前よ。汝には時渡りの術と退魔の弓を授ける。時渡りの術は汝の記憶をたどり時を移動する手段であり、退魔の弓は弓を引くことで光る神通力の矢が放たれる。」
「汝らにしかできない使命だ。くれぐれも頼むぞ。」
帝釈天は妖怪たちを退治する術と使命の重さに責任を感じるかのような口調でいい、その場から姿を消すように天の光となって空へ帰っていった。
「いっちゃったね。」
「そうだな。」
「あ!そうだ!まだ名前いってなかったね。私、羽衣天女よろしくね。」
「わ・・・わらわはさきほど申したが弥勒御前という。」
「みろくちゃんね。わかった。よろしくね!」
「ほら、たっちゃんも自己紹介して!」
「あ。ああそうだね。俺は九品院帝釈よろしく。」
「あまめとたいしゃくじゃな。わかった。こちらこそよろしくたのむぞ。」
3人はそれぞれの自己紹介をおえた。
「ねえ。みろくちゃん。今日は家に泊まっていきなよ。」
「よいのか?」
「いいよ。今日は疲れたからゆっくり休んで明日からがんばろう!」
天女は弥勒御前に自分の家に泊まるように進めた。
それを了解した弥勒御前は天女の家に泊まることになった