第四節 魔界のものへの対抗手段
神仏の森へともどった帝釈たちは神皇に常闇の主との戦いのことと滅天童子が魔界のスパイであったことを報告した。
「みなさま本当にありがとうございました。それから阿修羅丸様、帝釈様たちを助けていただきありがとうございます。」
「神皇様が俺にお礼をいうなんて、俺こそ清浄京の人たちに迷惑かけたんだから謝ってすむ問題じゃないけど、こっちがあやまらないとだ。本当にもうしわけなかった。」
「いいえ。阿修羅丸様あなたがきてくださらなければ今頃帝釈様たちは滅天童子によってころされていたでしょう。」
神皇と阿修羅丸はお互い謝罪しあいった。そして帝釈たちは今後魔界のものたちとの戦いにどのようにするか相談していた。
「雫、魔界のものは滅天童子がいうには負そのものだといっていた。妖怪だったころの阿修羅丸たちみたいに浄化はできないといっていた。滅するしか方法はないのか?」
「はい。負の力である魔界のものは滅するしかありません。妖怪たちのように負の力をとりのぞけば浄化できるのですが、帝釈様のいうように滅するしか方法はありません。」
「しずくちゃん。滅するっていうことはなくなっちゃうってことだよね?じゃぁ妖怪たちみたいに苦しみとか理解してあげる必要はないのかな?」
「負そのものなのですから、魔界のものたちに慈悲は通用しません。滅することだけを考えて戦えばよいでしょう。」
負そのものである魔界のものたちは帝釈たち神仏からもらった力とは正反対の力であるため、妖怪のように負にとりつかれたもののように取り除くことはできないからである。
「雫よ。わらわたち退魔の力を魔界のものたちにつかって相殺させるということじゃな?そうなると聖と負の力の力比べになってしまうのぉ。」
「力比べというのもありますが、みなさんで力をあわせて戦うことも重要になってきますね。」
「力をあわせるなら問題ないぜ。神皇様俺もいっしょに魔界のやつらを退治します。」
「たのもしい限りです。阿修羅丸様が帝釈様たちに力をかしてくださるというのであれば心配ありません。」
帝釈は考えていた。今後魔界のものと戦うには都の再建が必要であり、他の退魔師たちの強力も必要になってくることも悩んでいた。
「ところで雫、魔界のものたちと戦うにはそれなりの拠点が必要になってくるけど、どうするんだ?法海さんや他の退魔師のひとたちの協力が必要になってくるだろ?」
「退魔師たちはこのまえの妖怪たちとの戦闘で死んでしまったものも多くおります。ですが、都は弥勒のもっている時渡りの術と天女のもっている退魔の羽衣でなんとかなります。」
神皇に二人の力をつかえば解決するといわれて不思議そうに顔をみあわせる天女と弥勒御前であった。
「皆様それでは都へいきましょう。詳しい話はそれからいたします。ついてきてください。」
神皇にいわれるまま、帝釈たちは廃墟となった都へと向かったのである。
「雫、都についたのはいいけどどうやってなおすんだ?」
帝釈は神皇にどのようになおすのか聞いた、その質問にこたえるように神皇は言ったのである。
「天女、まずは退魔の羽衣に癒しの法力を注ぎ込み廃墟となるまえの都の姿を念じてください。弥勒、あなたは時渡りの術を使い廃墟の都になる前の都の姿を念じてください。そして、お二人の力を感じあって
ください。そうすれば都は癒しの力で修復され、時渡りの術で廃墟になる前の姿へと時間を戻すことができます。」
「わかったしずくちゃんやってみるね。」
「了解じゃぁ難しそうじゃがやってみよう。」
二人は廃墟になるまえの都の姿を思い浮かべた、そうすると退魔の羽衣が光、廃墟となった都を包んだのである。そして光に包まれながら時が戻るかのように都はどんどん修復されていくのであった。
「すっげぇ!あんなにぼろぼろだった広い都がどんどんもどっていくぜぇ!」
不動丸も驚いていたが、すっかり元通りになった都をみて帝釈たちもおどろいていた。
「都の修復が終わったみたいですね。みなさん。」
都が元の姿を取り戻した時にあらわれたのは法海であった。
「法海さん!きてたんですね?」
「帝釈さんたちの常闇の主との戦闘との噂と新たな敵の出現したという噂をききつけて急いできたのですよ。それに都の民たちもこの都を目指して通常の生活に戻りつつあります。」
そして、神仏の森にいた都の民は都へもどっていき、元の生活にもどっていったのである。
帝釈たちは神皇の屋敷へときていたのである。そして噂で知っている程度の法海に詳しくことの起こりを説明したのである。
「そうですか。そのようないきさつがあったとはおもいませんでした。私は噂でしかきかなかったのですが、帝釈さんたちの話を聞いていると深く悲しい気持ちになります。」
「法海殿。黒幕は魔界のものたちの仕業であることにかわりはわりません。真の敵は魔界の主です。これを倒さない限り本当の平和はおとずれないでしょう。」
「さぁ帝釈様。都は元の姿をとりもどしました。魔界のものたちとの戦いに備えることもできます。わたしたちも力をおかしいたします。必要なものはこちらで用意いたしますのでなんでもいってください。」
「ありがとう。雫、遠慮なくそうさせてもらうよ。それに阿修羅丸おまえが俺たちに協力してくれるのは本当に心強いよ。」
「なにいってんだ。一度いや何度も生死をわけて戦った相手だ。ほかのやつにまけられちゃぁ俺が許さないからな。」
阿修羅丸は帝釈に笑顔でいった。新たな敵が帝釈たちに現れたそれは常闇の主以上に強力な相手であると帝釈たちは自覚していた。
「ところでしずくちゃん魔界にいくにはどうすればいいの?妖怪たちとの戦いみたいにここを守りながら戦うの?」
「そうなのです。今のところ魔界へいく手段がないのです。」
「魔界へ行く方法ならあるぜ。帝釈天様からあずかったものがあるんだ。」
阿修羅丸は所持していた袋から腕輪をとりだした。
「この腕輪でいつでも魔界にいくことが可能だ。いきかえりが自由にできる優れものだぜ。」
「ずいぶんと準備がいいもんだな帝釈天様。まあご都合主義っていうのもわりぃもんじゃねえけどな。」
ご都合主義な展開にさすがの不動丸も苦笑いしていた。
「攻めるもよし!守るのもよし!これで万全の態勢がととのったのぉ雫よ。」
「そうですね。ですが無理も禁物です。帝釈様たちがたおれてしまわれては私たちには対抗手段がなくなってしまいます。神化なくして勝利はありません。」
こうして帝釈たちは守りと攻めの選択肢を増やすことができた。しかし、魔界から帝釈たちの様子を見るものがいた。
「清浄京が修復され、わたしたちの世界へと来る手段も手にいれたようですね。これは楽しみです。ですがこちらも先手後手両方とることもできます。どのように采配をするかで勝負がきまるでしょう。」
帝釈たちの様子をみていたのは魔界の主であった。そこには滅天童子の姿もあった。
「冥魔導神様。こちらの魔界の戦力は人間どもの戦力を上回っております。しかし、清浄京の結界は以前よりも神仏の加護で以前よりも強固なものとなっており、
冥魔導神様の力をもってしても破ることはできません。しかし、神仏のつかいのものども倒せば対抗手段はなくなるはずです。」
「先手をとり、神仏のつかいのものどもを倒す。いいでしょう。滅天童子よ。何度か戦ったことのある。あなたならやつらの対抗手段もあるでしょう。私たち魔界のものがどれだけ対抗できるか様子を見る程度で
もかまいません。倒せるならそれにこしたことはありません。倒すか様子を見る程度で戦うかは滅天童子にまかせます。」
「かしこまりました。冥魔導神様。準備が整い次第清浄京へと転移し、攻撃に移ります。」
この冥魔導神とは滅天童子がいっていた魔界の主である。その冥魔導神の命をうけて都に新たな危機がせまっていたのである。




