第五章 常闇の主 第一節 阿修羅丸と滅天童子の力の解放
いよいよ常闇の主のいる国に入り込んだ帝釈たちは神化をとかずにそのまま馬をはしらせていた。
帝釈たちが馬を走らせていたころ常闇の主は煩悩入道が撃退されたことを知り、帝釈たちの法具と法力がパワーアップしたことを暗殺部隊の妖怪から報告を聞いていた。
「やはり煩悩入道ではやつらを滅することはできなかったようだな。なによりも気がかりなのはやつらが神仏と同じ力を手にしたということが脅威である。」
「オヤジもう一度俺に機会をくれないか?」
「阿修羅丸よ。お主だけでは煩悩入道と同じ末路になることは必至。身の程を知れ。」
「ならば常闇様私も前回と同じように阿修羅丸様といっしょにやつらを滅してきましょう。」
「滅天童子よ。お主がいても結果は同じであろう。しかし、お主の力はまだ解放してなかったな。我が封印していた力いまこそ解き放つときかもしれぬ。そして阿修羅丸よお主のもっている妖刀滅神丸はもともと神を滅する
ために我がつくりしもの。その妖刀の封印もとこう。」
「私の力を解放するときがきましたか。私の力は常闇様ほどではございませんが、完全に開放することで神仏を確実に滅することができます。」
「オヤジ俺の滅神丸も強くなるってことか。いいじゃねぇか。あいつらが力をつけたのならそれに対抗できる力もねえとな。」
「ではお主らの封印をとくぞ。心せよ。封印をときに放った瞬間闇の妖力に飲まれ人格が崩壊する可能性がある。よいな?」
「おう!大丈夫だ!」
「心の準備は整っております。いつでも封印をといてください。」
阿修羅丸と滅天童子が精神を統一した次の瞬間であった。己の意識が遠くなっていく気がした。
「ぐあああああ!!」
「なっなんという!!」
阿修羅丸と滅天童子の苦しむ声は大きく響いたのである。
そのころ帝釈たちは常闇の主のいる城の前へときていた。
「ここじゃぁ。ここが昔わらわたちが住んでいた城じゃ。なんというおぞましい姿になったものじゃ。」
城の変わり果てた姿に落胆を感じていた弥勒御前であった。
「みんないくぞ。ここからは本当に生きて戻れるかわからない戦いになるかもしれない。」
「大丈夫!今の私たちなら必ず勝てるよ!」
「さすがの俺でも正直おっかねえけどまぁしゃあねえか。ここまできたんだきっちりかたをつけてやるぜ。」
四人は迫る恐怖を押し殺していた。しかし、その恐怖をもっていても一歩前進しようとしていた。
「まってたぜ!帝釈!今日こそおまえを殺してかたをつけてやるからなぁ!」
「お待ちしておりましたよ。神仏の使いのものどもよ。」
城の道を進む先には変わり果てた姿の阿修羅丸と滅天童子であった。
「なっなんだあのかっこう!以前とぜんぜん違うすがたじゃぁねえか。」
「いや・・・不動丸よく感じろ。姿だけじゃない。妖力も桁違いになってる。」
「そうだよたいしゃくぅ~!おまえをぶっころすためにオヤジから力をもらったんだぜぇ~。」
阿修羅丸が言葉を話し終えると同時に帝釈のうしろに回りこんでいた。
「っ!!」
阿修羅丸の斬撃をかろうじて避けた帝釈であった。
「へぇ~やるじゃねぇか。俺の一太刀をかわすとか。本当に強くなったんだな。それにお前のいた時代のとき感じた怒りもかんじねぇなぁ。」
帝釈はすぐ身体強化の法力と風の法力を使った。そして応戦する帝釈であったがその鋭い斬撃を阿修羅丸は軽々とうけとめていた。
二人の攻防はまさに地を砕き、天の雲をも散らすほどの余波であった。
そして、滅天童子は天女・弥勒御前・不動丸を相手にしていた。
「ふふふ。私の真の力を目の前に、驚愕しているようですね。無理もありません。死将軍最強の私が本気を出しているのです。いくら神仏の力をもったとしても私を倒すことはできません。」
天女たちは連携をとって攻撃をしていた。しかし、神化をしている天女たちでも滅天童子との攻防互角であった。
「みろくちゃん!そっちいったよ!」
「かならずあててやるのじゃぁ!」
「小さな結界張って俺の法具を防いできやがる!法具も法力も全部はじく結界とかありかよ!?」
ひたすら滅天童子にきりかかり前衛をつとめる不動丸、そして火力を最大にして矢を放ち後衛をつとめる弥勒御前、さらには不動丸と同じようにそっせんして前にでて滅天童子の妖力を防ぐ天女であった。
帝釈たちの力と互角にわたりあう阿修羅丸と滅天童子であった。そして帝釈は戦いながらも、阿修羅丸の攻撃を防ぎながら冷静に作戦をねっていた。
(妖怪と対峙するときは負の感情を捨てろって帝釈天様はいってたよな。自分の負の感情を捨てて戦うなら、もしかして負の感情の塊の妖怪の感情がわかり攻撃を予測できるんじゃないか?)
帝釈は気づいた。阿修羅丸自身が負の感情を増大させ戦っていることに、そして負の感情をよみとることで攻撃を予測できるのでわないかと気づいた。なおも阿修羅丸と激しい攻防が繰り広げられているが、
帝釈が気づいたことにより、けいせいは帝釈が有利になってきていた。
「な!?」
いままで阿修羅丸の剣を受けていた帝釈が身をかわすように避けたことに驚いた阿修羅丸であった。
「阿修羅丸。俺に剣をむけてもあたらないよ。全部わかるんだ。お前の闘争への負の感情が痛いくらい伝わってくるよ。」
帝釈の法具金剛杵は接近戦での回避予測能力が備わっており、それに加えて阿修羅丸の持つ負の感情をよむことでその回避予測能力が何倍にも増大していた。
「なんで俺の攻撃があたらねえんだよ!?」
「何度もいうけど阿修羅丸、お前の負の感情で心の中がわかるんだよ。本当に悲しい感情だ。」
帝釈は阿修羅丸の負の感情からときはなってあげたいという心をもった。そして阿修羅丸の剣をかわし、阿修羅丸を斬ったのである。
「おっ俺を斬っただと!?帝釈てめえ!俺に一撃あてたからって勝ったと思うなよ!?」
阿修羅丸は斬られた腹をおさえて、ひざをついていた。
「阿修羅丸争いの心はなにも生まれない。生まれるのはかなしみだけだ。だからその負の感情からおまえを解放してやるからな。」
帝釈は頭上に剣を構え、そのまま剣を振り下ろして阿修羅丸を斬った。
「な・・なんだよ・・・俺の負けかよ・・・ちきしょう・・・でも闘争心から開放されるっていうのも気持ちいいもんだな。帝釈おまえには負けたけどこの負の感情から開放してくれたことを感謝するぜ。じゃあな。」
阿修羅丸は帝釈に感謝の言葉をいいながら光へと姿を変え天へとのぼっていったのである。
そのころ天女たちは滅天童子と戦闘を続けていた。
「阿修羅丸様がまけただと!?おのれ神仏の使いものどもめ!」
「不動丸さん私も前にでるから私にあわせて!」
「ああ!わかった天女ちゃん!」
天女は退魔の羽衣を槍へと変え、滅天童子にむけて鋭く突きはなった。
「な!?私の結界が消滅しただと!?」
「いまだよ不動丸さん結界が消えたから思いっきりいって!」
「おうよ!」
「みろくちゃんも矢にありったけの法力をこめて射抜いて!」
「わかったのじゃぁ!!」
天女は退魔の羽衣を槍へと変換しすることにより、妖怪の妖力を防ぐ効果から打ち破る効果へと変換したのである。結界をやぶられた滅天童子は不動丸と弥勒御前の攻撃を直接受けてしまったのである。
「おのれ・・・・しかし、お前たちの法具では私の再生能力を超えることはできないぞ。ふふふ。」
そういう滅天童子の傷はみるみるうちに回復していった。
「こいつ不死身かよ!?」
「わらわたちの攻撃がきかないじゃと!?」
「どうすればいいの?妖怪の再生能力がある限りたおせない!」
三人が困惑しているところへ帝釈が天女によってきた。
「おまえの持っている法具でやつの再生能力を抑えるんだ。不動丸たちにすきをつくってもらって、おもいっきりやつをつらぬけ。」
「うんわかったやってみる。」
「了解なのじゃぁ!」
「おとりになればいいんだな?わかった。」
三人に作戦を伝えた帝釈であった。その間に滅天童子の傷は完全に回復していた。
「なにをこそこそしているのですか?私の傷はもう完全にきえましたよ?」
三人は帝釈の作戦通りに攻撃を開始した。
「お~ら滅天童子こっちだ!こっちをみろ!」
先に左から攻撃しかけたのは不動丸だった炎をまとった剣を滅天童子の結界が防いだ。
「こっちにもおるぞ!」
次に右からは弥勒御前が光の矢で滅天童子の結界をめがけてはなったのである。
「左右から攻撃とはうっとうしいですね。これでもくらいなさい!!」
滅天童子の手から炎の塊が複数弥勒御前と不動丸にはなたれた。
そのときである。二人に気をとられている間に疾風のような速さで滅天童子の心臓を貫く槍があった。
「っ!・・・・・ふふふ・・・おとりをつかって気をそらしているうちに私の心臓を貫いて殺すという作戦ですね。しかし、私の再生能力をわすれていいませんか・・・・?」
「よく見て。あなたの再生能力は私の法具で無効になってるのきずかない?」
「な!わっわたしの体が光になっていく!」
「この法具を通してわかります。あなたが恨んだ神仏への恨み・そして過去に神仏を敬う心を感じとります。天に帰ってください。そしてもう一度神仏を敬う心をとりもどしてください。」
「ふっ・・・・神仏を敬う気持ちか・・・・ひさしぶりに聞きましたね。光にかわっていくにつれて私の気持ちも楽になっていきます。ありがとうといっておきましょう。」
滅天童子も阿修羅丸と同じように天女に感謝の言葉を残し、光となって天へのぼっていったが、光と交わるように黒い影がそこにはあった。
「ふう・・・・・。きつかったな~帝釈おまえの助言がなかったらまけてたぜ。でもよ妖怪ってみんなかわいそうだな。負の塊だろ?浄化してやらねえとな。」
「そうじゃな。今となっては国を滅ぼされたわらわでも常闇の主に憎しみよりもあわれみを感じるぞ。」
帝釈たちは負の感情というものがどれだけかなしく、あわれなものかを妖怪たちの存在を通して実感していたのである。
阿修羅丸と滅天童子を浄化した帝釈たちはいよいよ常闇の主との直接対決に挑むのであった。しかし、帝釈は滅天童子が天へとぼっていくときに一緒に黒い影がなんだったのかきがかりであった。




