第四節 浄化の炎
翌朝、帝釈たちは温泉宿のある村をでて常闇の主のいる国へと馬を進めていた。
「もうすぐじゃ。もう少しでわらわのいた国に到着するぞぉ。」
「うぃ~。にぶいおれでもよくわかるぜ。まがまがしいっつうかすげえ寒気がするぜ。」
「そうだな。それだけ常闇の主の近くまできてるってことだな。」
「みんなきおつけて、妖気も濃くなってきてるからいつ妖怪たちがでてもおかしくはないはずだから。」
周囲を警戒つつ馬を進める帝釈たちであった。そのときであるちょうど国境のところで陣取っていた妖怪たちがいた。
「まちわびたぞ!神仏の使いのものどもよ!わしの名は煩悩入道!さぁわしらと真っ向から対決しようでわないか!」
そこにいた妖怪は死将軍の煩悩入道であった。帝釈たちは奇襲されるとばかりおもっていたいが煩悩入道が帝釈たちをまっていたことに驚いていた。
「なんだなんだ?こそこそと探りをれて奇襲してくるものばかりかとおもったぜ。」
「我を苦行苦学みたいな姑息者と一緒にしてもらってはこまるな。我はおまえらと真っ向勝負をしたいのだ!」
「真っ向勝負か。大量の妖怪ひきつれてよく言うよ。」
「ほんとうじゃぁ。まあわらわたちを相手にするのじゃぁそれくらいの戦力差があってもよいがのぉ。」
なめられたと思った煩悩入道は顔をまっかにして怒りをあらわしていた。
「わしを卑怯者とでもいうのか!?わしを愚弄するとは許せぬ!徹底的にたたきつぶしてくれる!ものどもやつらをあとかたもなく喰らいつくせ!」
煩悩入道の一言で大量の妖怪たちは帝釈たちをめがけて襲い掛かったのである。しかし、妖怪たちが帝釈たちに襲い掛かった瞬間であった。帝釈たちから光が放たれた。
「なんだこの光は!?」
妖怪たちはそのまぶしいまでの光に目を隠していた。光がおさまると同時に妖怪たちの目に帝釈たちの姿がぼんやり浮かんできた。
「きさまらその格好はなんだ!?きさまらから神仏と同じ力をかんじるぞ!?」
帝釈たちは帝釈天より授かった宝玉を使い神化をした。
「いきなりで悪いけど煩悩入道。即効で終わりにさせてもらうよ?」
「いっくよ~!」
帝釈の言葉のあと天女は退魔の羽衣に法力をこめた。すると法海が札をつかって出現させた金剛障壁が妖怪たちの軍勢の中心に複数地面から現れたのである。
そして、ぶんだんされた妖怪たちに向かって天から何百という光の矢が妖怪たちめがけて射抜かれたのである。
「ほほぉ~。やはり空中はよくみえるのぉ。妖怪どもが何匹おるかよくわかって掃除しやすい!」
「弥勒様がそっちなら俺はこっちを掃除しますかね!いっきにいくぜ!おらよ!」
不動丸は思いっきり剣を振り下ろした。そうすると地面は割れ、割れ目からものすごい勢いで炎が妖怪たちを焼き尽くしたのである。
「神化。すごい力だ。こりゃチート能力だな。」
三人の力を見ていた帝釈は神化の力のすごさを実感していた。その力に圧倒される煩悩入道はあとずさりをしていた。
「ばっばかな!?数千いたわしの軍勢をたったの二撃で全滅させただと?悪い夢でもみているのか?」
「煩悩入道よ。あきらめるのじゃぁ!今のわらわたちの力はおぬし程度の妖怪ではとめることはできぬぞぉ!」
圧倒的な力を目にしていた煩悩入道は高らかに笑っていた。
「はははは!たしかにおまえたちの力は強大になった。しかし、わしには絶対勝てんぞ!わしの力をみるがいい!!」
そのあと煩悩入道はみるみる大きくなっていったのである。その大きさは20メートルを超えるくらいであった。
「なにあれ!?すっごくおおきくなった!!」
煩悩入道の大きさに驚いていた天女であった。
「いくら大きくなってもわらわたちにはかてぬぞぁ!わらわのこんしんの矢を受けるがよい!」
弥勒御前は光の矢にありったけの法力をこめて煩悩入道めがけて射抜いた。しかし、その矢は煩悩入道の体をすり抜けたのである。
「弥勒の矢がすりぬけた!?」
帝釈は驚いていた。今や神仏に等しい力をもって神化をしている自分たちの力がきかないことに驚きを感じていた。
「がははは!無駄なことだ!おまえらがいくら力をつけようともわしは人間の一〇八つの煩悩から生まれた妖怪!人間どもの欲望がある限りわしをたおすことはできないぞ!」
帝釈は考えていた。煩悩入道に再生能力があるのかそれとも幻影なのかということを、思いをめぐらせていた。しかし、帝釈の肩に手をおく不動丸がいた。
「帝釈そんなにかんがえることはねえよ。俺にまかせておけ。煩悩入道!おまえはおれがたおしてやるよ!」
「無駄だということがまだわかっていないようだな。愚か者め!」
「さぁってどっちが愚か者だろうかね?」
不動丸は勝利を確信した笑みをうかべていた。そして不動丸は煩悩入道に向かって走り、20メートルを超える煩悩入道の頭上から炎をまとった剣で斬りつけたのである。
炎につつまれた煩悩入道はみるみる小さくなっていきもとのサイズにもどったのである。
「ばかな!?わしの妖術がやぶられただと!?なぜだ!」
「煩悩入道!おまえにいいことをおしえてやるよ!俺のもってる法具はおまえにとって天敵みたいなもんなんだよ!」
「天敵だと?わしは人間の煩悩があるかぎりしにはしない!不死身の妖怪なのだぞ!?天敵なんぞいるはずがない!」
「じゃあそんなお馬鹿な煩悩入道にもわかるように説明してやるよ。俺のもってる法具は倶利迦羅!不動明王がもってる武器とおなじなんだよ!煩悩の塊のおまえが煩悩を浄化する剣で斬られたらどうなる?
ここまでいえばもうわかるよな!?」
「わしの妖力を!煩悩を!浄化させたというのか!?」
「そのとおり正解だ!それにおまえはもう浄化されつつあるんだよ。足元をみてみな。」
煩悩入道の足には炎が燃え盛っていた。その燃え盛った炎は煩悩入道の全身をつつみこんだ。
「おのれ!神仏の使いども!わしは不死身の妖怪なのだぞ!こんなところで終わるわけがない!」
「往生際の悪い妖怪だ。逝きがけの駄賃だ!とっとけ!そして浄化されて天にかえれ!!」
炎に包まれている煩悩入道にダメ押しの一撃をくらわした不動丸であった。そして炎に包まれた煩悩入道の燃えカスは灰となり、光となり、天へとのぼっていったのである。
「すごいぉ!不動丸よ!見直したぞぉ!」
不動丸の周りをまわってほめている弥勒御前であった。
「不動丸今回は助かったよ。おまえのもってる法具がなかったら神化した俺たちでもあいつを浄化できなかったかもしれない。」
「なぁにたまたまよ。きにするな。でもよ。法具の特性を理解してそれにあった戦術・戦法を考えるのは大変だな。」
「おまえがそれをいうかよ。」
珍しく考え込んでいる不動丸に帝釈は笑っていた。
帝釈たちは煩悩入道を浄化したあと、いよいよ常闇の主のいる国へと入っていくのであった。




