第二節 清浄京の滅亡と神仏の森と神仏の力
きずついた帝釈は天女の法具で治療をうけていた。いまだに傷の深さから目が覚めない帝釈、弥勒御前は帝釈の体にすがるように泣いていた。
「帝釈よぉ!目をさますのじゃぁ!」
「おちついてみろくちゃん。大丈夫だよ。帝釈はかならず私がたすけるから。」
弥勒御前をおちつかせようと必死になっている天女であったが、自分も内心あせりをみせていた。
(たっちゃんの傷が深すぎる。この法具でどこまでなおしてあげられるかわからないけど今はこの法具に頼るしかない。)
そこへ法海がやってきた。そうすると法海は札をおもむろにとりだし。天女のもつ退魔の羽衣に札をそえた。
そうすると帝釈の体の傷はみるみるうちになおっていったのである。
「法海さんいまのお札はなんなんですか?」
「これは今外におられる帝釈天様よりたまわった札です。」
「帝釈天様?帝釈天様がいらっしゃるのですか!?」
「はい。さきほど御降臨なされました。帝釈天様は帝釈さんの怪我を心配しておりました。でもこれで一安心ですね。」
「本当によかったのじゃぁ!」
天女と法海の会話を聞いていた弥勒御前は安心をとりもどしていた。
そうすると帝釈がうすめをあけて目を覚ましたのである。
「あれ・・・?ここは?」
「たっちゃんよかった!目をさましたのね!」
「心配させやがって。一時はどうなるかとおもったぜ。」
「帝釈!!」
天女・不動丸が安心した言葉をいったあと弥勒御前は帝釈に飛びつきなきじゃくっていた。その様子をそっと見ていた法海も安堵の表情を浮かべていた。
「阿修羅丸は?人々はどうなった?」
「あのねたっちゃん。たっちゃんは阿修羅丸のものすごい攻撃に耐え切れないで地面に大きくたたきつけられて意識をなくしたんだよ?それから町の人たちも・・・いっぱいいうことあって・・・」
「俺、阿修羅丸に負けたんだな・・・・。人々が殺されてそれで怒りにまかせて・・・。」
それから帝釈は気絶していた間になにがあったのかを泣いている天女からこと細かく理解しつつ冷静にきいていた。
「そうか。そうだったのか。でも都が壊滅したのはなんでだろ。」
「それについては神皇様からお話があると思います。そして今後の行動などについては帝釈天様からいわれるとおもいます。」
「帝釈天様がいらっしゃるのですね。わかりましたとりあえず、外へでましょう。」
帝釈はテントの外へでた。そうすると巨大な木がたっていた。その大樹の下で帝釈天と神皇が話し合っていた。
「目を覚ましたようだな。我の治癒の札がきいたかとみえる。とにかくよかった。」
「帝釈様わたくしも心配しておりました。本当によかったです。」
「あの帝釈天様、雫、都になにがあったんですか?」
「都になにがおこったかは私からお教えしましょう。」
神皇は帝釈たちに伝えた。都が壊滅した内容をこと細かく伝えたのである。
「帝釈さんたちが元の時代に帰って2・3日たったころです。空が黒くなり、その黒い雲の中から常闇の主の幻影が現れ、都の結界を崩壊させるほどのいかずちを落としたのです。
結界が崩壊したと同時に大量の妖怪たちが都にせめて来ました。緊急事態におちいた都は民・退魔師すべてのものが混乱しておりました。法海殿の指揮のおかげで都内にいた
退魔師たちは冷静に妖怪どもをたおすことに専念できました。しかし、妖怪の数が多すぎて都内に妖怪が入り込み街や民そしてたくさんの退魔師たちを破壊し、殺戮の限りをつくしたのです。
命からがら、都の民・退魔師たちそして私はこの神仏の降臨される神仏の森へと逃げ込んだのです。」
「そんなことがあったのですか。おれたちの時代も大変でした。阿修羅丸ひきいる大量の妖怪どもを相手に戦いましたが負けてしまい、この時代にもどってきたのです。」
都でなにがあったのか。帝釈たちの時代でなにがあったのかをお互いが確認しあうように会話をしたのである。そして今後の常闇の主に対してどのように対処するか決めようとしていた。
「帝釈たちよ。心して聞くがよい。常闇の主は我ら神仏の予想を大きく上回っていた。我ら神仏は天界で話し合ったのだ。そこで決めた。本来神仏は人の理に干渉することはできないのだが、今回は事態は非常におもたく、
人間界だけの問題だけではなくなってしまった。だから我ら神仏はこの神仏の森にいるものたちを我ら天界ですまうもので守護することにきめたのだ。帝釈たちよ。汝らにこの力をさずける。この力は神仏の間では
禁忌とされてきた法具である。使い方によってはこの世界を消滅させてしまうほどの力をもっている。汝ら帝釈たちよ。その力を使いこなすと思い我ら神仏は汝らにこの法具をたくそう。」
法具の力について説明すると帝釈天は宝玉を帝釈たち四人にひとつづつ手渡したのである。帝釈たちは手渡された宝玉をふしぎそうにみていた。
「帝釈天様この法具はどのようにつかえばよいのですか?」
「汝らが所持している法具と宝玉を天にかざすがよい。」
帝釈天の言われたとおり帝釈たちは法具を天にかざした。そうすると宝玉が光を放ち帝釈たちは光につつまれた。数秒後にその光はおさまり、帝釈たちは鎧を身にまとっていた。
「なんじゃこの鎧みたいなのは?」
弥勒御前はふしぎそうにその鎧をみてまわっていた。
「なんじゃぁ。この鎧は動きにくくはないが、どこか癒される。あたたかく、どこかなつかしい感じがするのぉ。」
「汝らのまとっている鎧は神仏の力をそのままこの世界において具現化したものである。そして、鎧の力により汝らがもつ法具もまた神仏の持つ力と同じ力を発揮するのだ。
心せよ。神仏の力を用いて妖怪たちを滅するのではない、浄化、すなわち天へとかえすことができる法具なのだ。そして神仏の力と同じ力を発揮する。覚えておくがよい。」
「帝釈天様使い方はよくわかりませんがどうしたらよいでしょうか?」
「帝釈よ。汝の時代で阿修羅丸とたたかったときの怒りと憎しみの心を思い出すのだ。」
「俺が阿修羅丸との戦闘のときにいだいた憎しみの心となにか関係があるのですか?」
「帝釈よ。負の感情を捨てよ。怒り、憎しみ、つらみなど一切の負の感情を妖怪たちにむけてはならぬ。妖怪どもはその人のもつ負の感情により、
大きな力となってしまう。しかし、負の感情を捨て、妖怪どもまたは常闇の主にたちむかうのなら、汝らのまとっている鎧と所持している法具は
神仏の力と同じ力を発揮し、『神化』をとげるであろう。」
「『神化』・・・・・。負の感情を捨てる。わかるかもしれない。怒りの感情にまかせて阿修羅丸と戦ったあの気持ち。」
帝釈は帝釈天のいったことを少しづつ理解しようとしていた。
「帝釈天様負の感情とはなんじゃぁ!?わらわにもわかりやすくおしえてくるとたすかのじゃが。」
「弥勒御前よ。よく聞くがよい。負の感情とは人間に限らず生きているものすべてに備わっている感情である。怒り、憎しみ、妬みなどさまざまある。たとえば汝が国を滅ぼされたときどのように思った。
自分の中で問うてみよ。心当たりがあるはずだ。」
「・・・・あっあります。たしかにありまするぞ。国や父上・母上を滅ぼされ、殺されたときは怒りと憎しみにみちておりましたぞぉ。」
「そうだ。それこそ妖怪のもっとも好む感情である。妖怪たちと対峙するときは心しておくがよい。」
帝釈天は負の感情を弥勒御前が体験したつらさと重ね合わせるように教えたのである。
「帝釈たちよ。我ら神仏はこの神仏の森にいるものたちを妖怪たちからまもることで精一杯なのだ。」
「帝釈様心苦しいのですが、私たち退魔師もここを離れることができません。都の民を守る必要があります。つらいことになりますが、今動けるのは帝釈様たち四人だけなのでございます。」
「大丈夫。帝釈天様や雫の顔をみていれば事情はわかります。自分ができることをやることは大切だと思います。だから俺やってみます。」
帝釈が帝釈天と神皇に決意をあらわすと、近くにいた天女・弥勒御前・不動丸三人も帝釈の顔をみて決意をあらわしたのである。




