復讐開始！ 〜ロリ巨乳だって一人は怖い！〜
(前回までのあらすじ)
プレイヤーに襲われることに恐怖を覚えてしまった心凪。そんな心凪を励ました兄の惶世は去り際、ココアちゃんの正体が心凪であることを見抜いてしまう！
◇ ◆ ◇
――『トロイメア・オンライン』
「うるさぁぁぁぁぁい!! それどころじゃないのよぉぉぉぉっ!!」
私は、タイトルロゴを蹴り飛ばす勢いで追い払った。
まずい！ まずいまずいまずいまずい!! お兄ちゃんにバレてる!! ってことは、私の恥ずかしい画像とかも沢山見られてるわけで……？
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! お兄ちゃんのバカ！ アホ！ 変態！ ド変態！ 毎日変態！」
「……ド変態ってお姉ちゃんのことでしょ？」
声のした方に振り返ると、そこには猫耳の少年――レーヴくんが呆れ顔で立っていた。
「レーヴくぅぅぅぅぅんっ！ 助けて！ 見た目と名前を変えさせてぇぇぇぇぇっ!!」
私はレーヴくんの肩を掴んでゆさゆさと揺さぶった。レーヴくんは面倒くさそうな顔で揺さぶられていたが、やがて
「いいよ」
と口にした。
「えっ、いいの!?」
こういうのっててっきり「無理だよそんなの」って言われるのかと思ってた。それならやってもらおう。クラウスさんとかは混乱するかもしれないけれど、ちゃんと説明すれば大丈夫でしょう。
「でもその場合は、キャラクターの作り直しになるから、ステータスは初期化されるし、お姉ちゃんの大好きな精霊さんの……ミルクだっけ？ あの子も――」
「あぁぁぁぁぁっ!? それはダメ！ ダメです！」
ミルクちゃんとお別れはいやだぁぁぁぁぁっ!! あの可愛い、可愛すぎて食べちゃいたいくらいの方言女子はなかなかいない！ しかもメイドですよ？ 属性強すぎでしょ！
「――そう言うと思った。ごめんね、力になれなくて」
「ううん、いいの！ 私もどうせ復讐するならこの姿の方が都合いいしね」
私が腰に手を当てながら胸を張ると、レーヴくんはなおも申し訳なさそうに続けた。
「あともう一つ、『麻痺』の件だけど、あの効果をプレイヤー用の武器に付与したのは正式サービス開始後で、調整が上手くいってなくて、ほんとにごめんね？ さすがに麻痺中にウィンドウ操作できないのは問題だと思うから、修正させてもらったよ」
「あ、ありがとう！」
これで少しは戦いやすくなるかな？
「あ、そうそうレーヴくん。さっきセレナちゃんが、『アサシン』の女の子に教えられて助けに来たって言ってたんだけど、その子誰かわかる？ お礼がしたいの」
「知ってるけど教えるわけないじゃん！」
何言ってんの？ と言わんばかりのレーヴくん。
「どして!?」
「なんていうのかな？ 権力乱用？ プライバシー権の侵害？ とにかくそんな理由でダメなの！ ただでさえVRMMOではストーカーとか問題になってるのに……それもあって、スキルの【赤い糸】を削除したんだよ？」
まあ確かに、フレンドとはいえ相手に居場所がいつでも分かるっていうのは落ち着かない。
「そういうことならしょうがない。自分で探すしかないかぁ……」
「うん、ごめんね？ 代わりというか、もろもろのお詫びといってはなんだけど、ボクからできる限りの贈り物をしてあげたから、転送されたらアイテム欄を見てみて？」
えっ、なにそれ、めちゃくちゃ楽しみ！
「ありがとう！ 私、頑張るよ。絶対に負けないから！」
「頑張って！ ボクはいつでもお姉ちゃんの味方だから」
まーたまた、そんなこと言っちゃって、ほんとはそのセリフはプレイヤー全員に言って回ってるんじゃないのー？
とか思いつつも、レーヴくんの嬉しい言葉に私はニヤニヤが止まらなかった。もう、めちゃくちゃ可愛い。おうちに連れて帰りたい。
「お姉ちゃん、ニヤニヤして気持ち悪い」
「えへへー、レーヴくんは可愛いなーって思ってたんだよ」
「――なっ!? う、うるさいっ!! ド変態お姉ちゃんのくせに」
レーヴくんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。この子チョロすぎ。そういう所も可愛いんだけどね。
「じゃあレーヴくん。転送よろしくね」
「分かってるよもう、さっさと行けよ。――いい夢を」
ふくれっ面のレーヴくんに手を振られながら、私は本日二度目の転送を体験したのだった。
◇ ◆ ◇
「――ふぅ、よし頑張るぞぉ！」
気分も新たに、私が目を開けると、そこはいつもの噴水広場ではなく、街の外の私が最後に強制ログアウトした場所だった。強制ログアウトからあまり時間が経っていないからかな？ とりあえず私はストレージのアイテムを確認してみる。
「……うーん、やっぱり『ぬののふく』とミルクちゃんを除いてすっからかん。所持金もたったの100ゴールドかぁ」
これじゃあどうしようもない。装備や消耗品が揃っていないと怖くてダンジョンにも潜れないし。とりあえずここにいるとまた他のプレイヤーにレイプされかねないので、街に戻ってクラウスさんなりホムラちゃんなり、頼れる人に泣きついてみよう。それからミルクちゃんを探して――『アサシン』の子を探してお礼を言おう。
私は真っ直ぐに街の方角へ歩を進めた。そこまで街から離れていないから、すぐに着くはずだ。それまで誰か変な人に遭遇しませんように……
そう願いながら、道端の木に隠れるようにして歩く。やっぱり怖いよ！ 早く、早く街の中へ！
――その時
――ガサガサガサッ！
とすぐ側の草むらが揺れた。何!? モンスター!? それともプレイヤー!?
「ひいっ!?」
咄嗟のことに、腰を抜かして尻もちをついてしまった私。すっからかんの今襲われたらひとたまりもない。逃げなきゃ！ でもそんな思いに反して身体はいうことを聞いてくれない！
草むらからなにやら黒いものが飛び出してきて――なにやら叫び声を上げながら私の身体に覆いかぶさってきた。
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