私、晒されてる!? 〜ロリ巨乳はお姉ちゃんになります!〜
◇ ◆ ◇
その夜。時刻は午後9時過ぎ。場所はVR空間。
――『トロイメア・オンライン』
「はい、シッシッ」
私は毎度おなじみのカラフルタイトルロゴを手で追い払った。そして、これまたおなじみの白い空間に、黒い猫ちゃんが現れる。
「レーヴくんただいまー!」
「みゃぅ……」
黒猫のレーヴくんは私を見つめながらそう一声鳴くと、白い光に包まれて人間の姿に変身した。
「おかえりー! お風呂にする? ご飯にする? ――じゃなくて!!」
レーヴくんはノリノリでノリツッコミをしてくれた。レーヴくんいい子すぎるよ……。
「聞いたよお姉ちゃん。昨日ベータテスターの集団を自爆魔法で全滅させたでしょ……?」
あー、あれかぁ。レーヴくんは呆れたような表情をしながらもどこか楽しそうだ。
「うん。ほんとは決闘してる相手だけ倒せればよかったんだけど……なんか巻き込まれちゃったみたいで……」
「それで運営に苦情の連絡がたくさん来てるんだよ……多分あのプレイヤーたちからだと思うけど、チートだとか不正だとかそんなこと言われて、ボクも困ってるんだ」
えぇ……そんな心外な! 私はただ本能の赴くままにぶちかましてるだけなのに……巻き込まれる方が悪いんじゃん! ――と思わなくもない。
あ、でもルークたちの装備を売り払って大儲けしちゃったのは少し悪かったかなって思ってる。けどそれがゲームってもんだよね?
「――で、私に自爆をやめろって言いに来たの?」
少し強めの口調で問い詰めると、レーヴくんはすっと目を逸らし……クスッと笑った。なーに! 笑うようなこと!? 私の顔がおかしかったのかな?
しかし、彼の口から告げられたのは、私の予想を裏切るようなものだった。
「ううん、逆。――もっとやって!」
「はぁ!?」
「いやね、自分で言うのもなんだけどこのゲームって他のVRMMOとそんなに変わらないじゃん? 医療用っていうコンセプトがあるくらいで内容は異世界の冒険ものだし」
「そんなメタいことレーヴくんが言っていいの?」
「ボクの創造主さんがいいって言ったんだからいいの! とにかく、このゲームには華がないからお姉ちゃんみたいなド変態がいると売りになるじゃん?」
私の評価は変態からド変態にランクアップしたらしい。解せぬ。
「ほーう? 私を客寄せパンダにしようと……?」
「別にお姉ちゃんだけじゃないよ! 他にも面白いプレイヤーさんは何人もいるんだけど――ただ、こうも話題になってるとね」
「ん?」
私は首を傾げる。するとレーヴくんは私の目の前に展開されているウィンドウに手を伸ばして勝手に操作し始めた。これ、多分他のプレイヤーには見えないようになっていると思うんだけど、レーヴくんみたいなナビゲーターNPCにはプレイヤーのウィンドウを操作する権限が与えられているらしい。
ウィンドウには、何やらネットの掲示板のようなものが映されていた。
私がへぇーと感心していると
「こうやってネットにアクセスして、掲示板とかプレイ動画とか攻略サイトとか見れるようになってるの、お姉ちゃん知らなかったの? 攻略に行き詰まった時に調べ物をするためにわざわざ起きるのも馬鹿らしいでしょ?」
「確かに!」
私は大きく頷く。いつも近くに頼れる仲間がいるとも限らないしね。
「で、問題はこれなんだけど――」
目の前に表示された記事に目を通す。が、タイトルを見ただけで私は笑いが止まらなくなってしまった。
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【TMO】見抜き民雑談スレ inネ実
1.名無しさん
すっぽんぽんロリ巨乳さんの画像ください!
3.名無しさん
しょうがないにゃあ
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「あははははっ! 見抜き! くふふふはははっ! すっぽんぽん! しかもロ、ロリ巨乳だって! うはははっ! なにこれレーヴくん!」
するとレーヴくんは哀れなものを見るような目を私に向けた。そしてゆっくりと画面をスクロールしていく。
「――これ、だ〜れだ?」
「――!? ほ? うぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
そこには、昨日【完全脱衣】をしてすっぽんぽんで真っ赤になっているココアちゃん――私の写真が! それもあらゆる角度から何枚も載せられていた! 大事な部分は謎の光によって隠されているものの、これはヌード写真と変わらない! なにこれいつの間に撮った!? あいつら? あいつらか!? ルークゥゥゥゥゥゥ!!!!!!
「――どうやら死に足りないようね!」
「お姉ちゃん怖い」
レーヴくんの言葉で我に返った。どうやら殺気を放っていたらしい。ごめんね。でもこれだけは言わせて。
「今すぐ消して!」
「ボクは個人のサイトにまでは介入できないよ……それにもう十分広まっちゃってるみたいだから焼け石に水だって」
「こんなの……こんなのお兄ちゃんやお父さん、お母さんや希歩ちゃんにバレたら……私生きていけないよ」
「どんまい♪」
「どんまい♪ じゃなくて! 何とかして! ねぇなんとかしーてーよー! レーヴくん!」
私はレーヴくんの肩を掴んでゆさゆさと揺さぶる。レーヴくんは揺さぶられながらも肩を竦めた。
「こればかりはどうしようもないよ。ボクだって引いたもん。うわー、やっぱりド変態だーって」
「く、くぅ……」
幸いリアルの人たちには私=ココアだとはバレていないし、このまま隠し通すしかないかなぁ。ボロが出ないようにしないと! と、とにかくしばらくは【完全脱衣】は封印! 封印ですっ!
「とにかく! お姉ちゃんは有名人なの! これからも頑張ってね!」
「こういう頑張り方はいや!」
「ボクだって創造主さんに『バランス考えてゲーム作ってて、『自爆魔法』とか『闇霊使い』を不遇職にしたつもりないのに勝手にベータテスターたちに不遇扱いされて、心外だ!』って言われてるんだよ! だから頑張ってお姉ちゃん!」
さっきから出てくる『創造主さん』って運営の人の事だよね? つまり私はレーヴくんを通じて運営の人にお願いされているってことだろうか。……だとしたら、少しくらいはいいかなって気にもなってくる。要するにプレイスタイルを曲げるなってことなんでしょ? 望むところだよ!
「――よしわかった! お姉ちゃんに任せなさいっ!」
私はぐっと握りこぶしを作った。
「よかったそう言ってくれて」
レーヴくんはほっとした様子だ。断ったら創造主さんに怒られたりするのかな?
「じゃあそろそろ転送してよ」
「うん、わかった! ――それじゃ、いい夢を!」
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