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クールな先輩

僕は新米のファッションデザイナー。

服を作るのは昔からの夢だったので、精一杯やらせてもらってる。

「後輩君、今日も頑張ってるわね。」

「あっ、幸美先輩。」

幸美先輩は僕の先輩で、白い長い髪に澄みきった蒼い目の美人。服装だって朱色のタートルネックのセーターにタイトな青いジーパンが似合って格好良いし、先輩はスラッとしてスリムだけどオッパイは大きい、ボンキュッボンの理想的な体型だ。

「あっ、今いやらしいこと考えたでしょ。」

「か、考えてません!!」

うっすらと微笑を浮かべて、いつも幸美先輩は僕を困らせる。未だに名前で呼んでくれないし・・・まぁ、僕と幸美先輩じゃ釣り合わないのは分かってるけど。

幸美先輩はいくつも売れる服を作っているし、有名な賞だって取ってる。まさに僕にとっての高嶺の花だ。

「ねぇ、根詰めても良い服は出来ないわよ。お昼ご飯食べに行こうよ。向かいの喫茶店のサンドイッチとコーヒー美味しいよのよね♪」

「分かりました。でも奢らないで下さいね。今度は僕が払いますから。」

「いやいや後輩君、背伸びしないの♪」

「いやでも・・・。」

「ふぅ、ここでの議論は無駄よね。分かった、ワリカンにしましょう。言っておくけど、これ以上は私は譲らないからね。」

先輩はいつもの様に笑っているけど、目は笑っていなかった。

要するに、これ以上の反論は許さないってワケだ。氷の様な視線がゾクゾクする・・・幸美先輩はやっぱり最高です♪

「さぁ、行きましょうよ。私はお腹ペコペコよ♪」

「は、はい!!」

僕らはエレベーターに乗って一階に。

そうしてエレベーターが一階に着いたら、光に包まれて・・・あれっ?もう展開がおかしいな?

気が付くと僕らは何もない荒野に立っていた。

「えっ?えぇえええええ!?」

僕は頭を抱えて絶叫した。けれど幸美先輩だけは右手で顎を触りながら冷静そのものだった。

「これはどういうことかしら?後輩君、何か分かる?」

この異常事態に幸美先輩があまりにも冷静なので、なんだか僕も落ち着いてきた。そうして落ち着いてくると、僕のオタク脳がフル回転で働いて、ある推論を導きだした。

「ここは異世界なのかもしれません。」

「異世界?」

「はい、僕達の居た世界とは全くの別の世界・・・ラノベ小説とかでは、よくある設定です。」

「ふぅーん、私はその手の小説は読まないんだけど、具体的にはどう違うの?」

「た、例えば、翼を持ったドラゴンとか出てきますね。」

「ドラゴン・・・あー、大きなトカゲみたいなヤツね。」

「そうです、そうです、いやぁ、分かってもらって良かったです。」

「つまり、あんなのね。」

幸美先輩が空を指差した。僕がそっちを向くと、バッサバッサと翼をはためかせた角の生えた赤いドラゴンの姿が・・・えっ?

「ぎゃあああああ!!」

僕の本日二回目の絶叫。大きい、とにかく大きなドラゴンが僕らの目の前に現れた。鼻息荒く僕らを見る鋭い眼光は、とても友好的には思えなかった。

「あらあら、さしずめ私たちは美味しそうなランチってワケね。どうしましょう?」

・・・本当にどうすれば良いんだろう?ただのファッションデザイナーがドラゴンに勝つ可能性なんてあるわけが無い。誰が呼んだか知らないけど、人選ミスだろコレは。

「ガァアアアア!!」

大きな口を開けて、耳をつんざく様な声を出すドラゴン。幸美先輩が居なければ「お願い殺さないで」と情けない声を出しているところだ。でも、好きな人の前ぐらい漢を見せないとダメだよな。

僕は精一杯の勇気を振り絞って、幸美先輩とドラゴンの間に立って、両手を広げた。

それに対してドラゴンはフーッと息を吸い込んで、どうやらファイヤーボールで応えてくれるらしい。どうしよう?オシッコチビりそう。

そんな極限状態の僕の肩をポンッと叩く人が居る。もちろん、それは幸美先輩だ。

「ねぇ、後輩君。私を守ろうとしてくれるのは嬉しいんだけど、代わってくれるかしら?守るのはアタシでアナタは守られる側。」

「へっ?」

戸惑う僕をよそに、幸美先輩は僕とドラゴンの間に立って、ドラゴンを静かに見据え、そして笑った。

「先攻どうぞ。」

ドラゴンは挑発されたのを知ってか知らずか、口から巨大な火球を吐き出した。その火球は物凄い勢いで僕らに向かって来て、僕らの命運もこれまでの様に思えたけど、この時不思議なことが起こった。

火球に向かってフーッと幸美先輩が息を吹き掛けると、火球がカチコチに氷ってしまったのだ。

何が起こったか全く分からない僕をよそに、先輩は飛んで来たカチコチの火球に無言で回し蹴りを喰らわせ粉々に砕いた。

次々に起こるあり得ない出来事を消化できない僕ですが、これだけは言えます、先輩マジ格好良い♪

「ふぅ、やっぱりこの格好じゃ、気が乗らない。ちょっとお着替えするから後輩君は良いって言うまで目を閉じてて♪」

「は、はい!!」

僕は先輩の着替えを見たい気持ちを全力で抑え、目をバッチリと閉じて視界を暗くした。

「もう良いわよ♪」

早い!!蒸着かよ!!

パチリと目を開けて先輩のことを見ると、白装束姿の幸美先輩がウフッと笑っていた。胸元が大胆に開いていて谷間が・・・っと、そんなことより!!白い髪と青い目も合間見合って、これではまるで雪女じゃないか!!

「私、実は雪女でした♪」

はい、衝撃のカミングアウト!!

「ガァアアアア!!」

無視されて怒ったのか、ドラゴンが鳴き始めた。

それに対して幸美先輩はウンザリしたような顔をしている。

「アンタは死になさい。」

氷の様に冷たい幸美先輩の言葉は僕の背筋をゾクゾクさせた。そして彼女が右手の親指と中指をパチンと鳴らすと、今度はドラゴンが氷漬けになってヒューと落下、そしてそのまま・・・

"ガシャアアアン!!"

と、派手な音を鳴らして地面にぶつかり砕け散った。

「はい、おしまい♪それじゃあ後輩君、これからのことを話し合いましょうか。」

「は、はいっ!!」

流石は先輩、頭の切り替えが早い。

「後輩君、率直に聞くけど、どうやったら元の世界に戻れるか予想出来る?」

「え、え~っと、こういう場合、かなりの確率で魔王を倒せば元の世界に戻れるかな??」

「ふーん、魔王って閻魔大王みたいなヤツでしょ?じゃあ、そいつをボコって早く帰りましょう♪」

「わ、分かりました。」

なんて心強くてエロ格好良くて、そして最高にクール。ますます幸美先輩に惚れちゃうぜ。

こうして僕と幸美先輩の異世界における魔王退治の旅が始まった。

「ねぇ、今日中に村とか町に着かなかったら、私の作ったカマクラに二人で寝るってことで良い?」

「よ、喜んで!!」





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