創始
どうも皆様ご機嫌よう、私は森の翁でございます、この度は初の小説投稿をさせて頂きました。
この小説が読者の皆様に楽しさを与えることが出来れば幸いです。
これからよろしくお願いいたします。
今この瞬間、目の前の魔法陣から、私が種を撒き、私が選んだ人間が呼び出されようとしている、どうやら召喚は成功したようだ。
「ここはどこですか?」
現れた人物はとても落ちついた声でそういった。
「あの、聞こえた声のとおりに道を進んでいたらここについたんですが」
ああ、説明をしなくてはいけないな。
「私は語り手、君を呼んだ者だ、それで、君の名前は?」
「僕の名前はアイザックス、それで、僕は何のために呼ばれたのでしょうか?」
「ああ、まずその部分から説明しようか」
「お願いします」
「まず、ここは私が書斎と呼んでいる空間だ、まあ、君のように私に呼び出された人物を別の世界に転送する前の説明所及び準備を行う場所だと思ってくれたまえ」
「それで、これから僕は何をやれば良いのでしょうか?」
「おや、他の世界に転送されることについての質問はしないのかい?」
「その点については、自分で考えて納得済みです」
「では、本題に入るとしよう、君にはある世界を救ってもらいたい、ここに一度呼び出したのは、そのために説明と準備をしなければいけなかったからだ」
「へえ、結構律儀なんですね、こういう別の世界に呼び出されたりする時って、問答無用でそのまま転送されるのかと思っていました」
「私は、君に無理を言って頼んでいる立場だからね、理不尽なやり方はしたくないんだ。さて、説明を始めようか」
「お願いします」
「まず、君がこれから向かう世界は幻想の世界という、簡単に説明すると、君が元いた世界と隣り合った平行世界だな、それとこの世界の特徴だが、まず、君たちの世界には無い魔法が存在する、後、幻覚作用のある霧がでるから用心して欲しい、さて、ここまでの部分で質問はあるか?」
「ありません」
「では、次の説明に移ろう、平行世界に行ってもらうにあたって、君には特別な力を持った道具、魔導具を渡すよ」
私は、まず、彼に魔導具がどんな物なのか説明することにした。
「いいかい、アイザック君、魔導具とは名前の通り、魔力が込められた道具や物のことだ、そして、これらにも当然メリットとデメリットが存在する、たとえばメリットの方だが、魔導具ごとに付与されている特殊な力がこれに当たる、続いてデメリットだが、こちらが厄介でね、実は強力な力を持った魔導具ほど回数制限があるんだ」
「あの、質問してもいいですか?」
「何かな?」
「回数制限があるのはわかったのですが、具体的にはどの程度の回数なのでしょう?」
「そうだね、一番少ない回数で1日に一回とかだね、逆に多い方だと回数制限が無い物もあるんだ、たとえば移動用の物とかね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いや、礼を言われる程のことじゃないさ、じゃあ君の魔導具を選ぼうか、一つは確定してるから、後二つ選べるんだけど」
「あの、一つ確定とは?」
「ああ、言い忘れてたね、ここに来る前に何か変わった物を手にいれなかったかい?」
「もしかしてこれですか?」
そう言って、彼は懐から一つの鈴を取り出した。
「そうそれだよ、平行世界に送り込む人を決める為に幾つかの魔導具を君の世界にばらまいたんだけど、君が持っているのはその中の一つだね、正式名称は影の鈴自分の体を影に変えることで、影から影へ移動したり、影を操ることが出来る。
「それは凄いですね、でも、それだけの力があったら、回数制限が厳しいんじゃないですか?」
「その心配はないよ、その魔導具は便利だけど、影が出ない時間帯、つまり夜には使えなくなるデメリットがあるから、回数制限がついていないんだ」
「そうですか、うまく工夫すれば夜でも使えるのでは?、明かりをつけるとか」
「今から君が行く世界には、残念ながら明かりがないんだよ、科学があまり発展していなくてね、電気が存在しないんだ」
「それじゃ、夜はどうやって行動すれば良いんですか?」
「昔ながらの方法でいくしかないね、これは僕からのお勧めなんだけど、ランタンや松明を使うといい、松明の方を使う場合は火が消えないように工夫する必要があるけどね」
「.....わかりました、その方法でいきましょう、選べる魔導具が後2つ残っていましたよね?、その候補の中に何か明かりになるものはありますか?」
「あるよ、それも松明とランタン両方の魔導具がね、どっちにする?」
「ランタンの方でお願いします、そちらの方が使いやすそうですから」
「わかったよ、じゃあついていたまえ、倉庫に案内するからね」
「わかりました」
三分後.....
「ついたよ、ここが倉庫だ」
「これは.....、凄いですね!」
アイザックが見つめる先にあったのは、倉庫というよりは、まるで宝物庫であった。
「取り敢えず、ランタン...だったよね?、今探すから少し待っていてくれたまえ」
「あの、邪魔するようで悪いのですがこれじゃないですか?」
そう言ったアイザックの手にはランタンが握られていた。
「おおーっ!、まさにそれだよ、よく見つけたね」
「いえ、何故かこれだけ光っていたので」
彼の言葉通り、ランタンは彼の手の中で光輝いていた。
「おやおや、運が良いねアイザック君、君はその魔導具に気にいられたようだ」
「気にいられるということは、もしや魔導具には意思があるのですか?」
「一部の強力なものにはね、でも今回の場合は違うよ」
「それでは何故?」
「魔導具には、それぞれ担い手を選定する機能があるんだ」
「選定機能?」
「要するに、魔導具それぞれに自身へ適正のある人物を選び出す機能がついているんだけど、これが厄介でね、意思があるタイプの魔導具の場合、ある程度は対話次第で妥協してくれるんだけど、選定機能の場合は少しでも適正無しと魔導具が判定した時点で、その人物には使用不可能になってしまうんだ」
「まるで、コンピューターのセキュリティロックみたいですね」
「ちょっと違うけど、まあ似たような物ではあるね、まあ今回は上手くいって良かった、わかりにくかったらすまないね」
「いえ、ここまでの説明は全てわかりやすかったですよ」
そう言って、彼はランタンをじっくりと見ていた、おそらく使い方を知りたいのだろう。
だが、その前に。
「さて、ここまで魔導具について説明したけど、ここからはもう一つ説明しようと思う」
「何ですか?」
「君に渡す魔導具の枠が後一つ残っていたね、その一つを魔導器にしようと思う」
「魔導器?、魔導具とは違うのですか?」
「魔導器は、魔力が込められた武器の総称でね、こちらは魔導具以上に危険なんだ、使い方を謝ると持ち主の命を奪う物もある。
だがら非常に気をつけて扱わないといけない」
さすがの彼もこの説明には驚きを隠せないようだった。
「何故、そんなものを渡す必要があるのですか?、魔導具だけでも十分なのでは?」
「アイザック君、残念だけどね、君が思っているほど世界は甘くない、稀ではあるけど、滅びを止めるために行動している僕のような存在を邪魔しようとする者達もいる、そんな奴らは君さえも容赦無く殺そうとするだろう。
だから、そんな時に身を守る手段が必要なんだ」
さすがに、この説明は彼でも受け入れてくれないだろうと思っていた。
「僕の身を守るための物なんですね、ならば、ありがたく使わせて頂きます」
驚きだった、間違い無く断られると思っていた提案が受け入れられたのだから。
「本当に良いのかい?、もしかしたらそれで人の命を奪うことになるかもしれない、それでも良いのかい?」
「語り手さんが、本気で心配してくれているのがよくわかったので、さすがにそれを断るわけにはいかないでしょう、あっ、でももちろん殺傷力がなるべく低い物でお願いしますよ、僕は大量虐殺とかしたくないので」
「ああ、なるべく君の望み通りの物を選ぶとしよう、さて、該当する物があれば良いのだが」
無数にある魔導器を見比べながら、私は迷った、魔導器というのは、人の命を奪う前提で創造された物が多いのだ。
その中から、殺傷力が無い物を探そうとすれば、難しいことは想定していた。
だが、難しいことこそ、答えはいつも単純なものだ。
「見つけた、おそらくこれなら君の意に添うことが出来る」
私が選び出したのは、一振りのナイフだった。
「これは?」
「それはね、朽ちぬ刃という銘のナイフでね名のとおり、絶対に朽ちることが無いという特性を持っている、おかげで刃こぼれもしないし、錆びることもない、ただ便利なだけのナイフさ、殺傷力も少ないし、これなら君でも扱いやすいはずだよ」
「ありがとうございます、ではしばらくの間、他の2つと一緒にお借りしますね」
「何を言っているんだい?、その三つは既に君のものさ」
「え?」
「魔導具や魔導器はね、一度でも主を決めたら、絶対にその主から離れることはない、だからその三つはもう君のものだ」
「わかりました、この三つは必ず大事に使います」
「うん、それが良いね、さて、説明もだいたい終わったから、次の段階に進もうか」
「次の段階ですか」
「ああ、君を平行世界へ転送する、でも心配することはないよ、直接は無理だけど、僕もついていくし、何より、僕の助手をついていかせるからね」
「助手?」
「リア、こっちにおいで」
「はい、今行きまーす!」
少しして彼女がこちらに歩いて来た。
「紹介しよう、私の助手で、君達のような者達をサポートしてくれる、まあ、普段は私の身の回りの世話をしてもらっている、私には出来ないことが多くてね、さあ、自己紹介といこうか」
「リアです、しばらくの間よろしくお願いします」
「アイザックです、こちらこそよろしくお願いします」
「さて、自己紹介も済んだようだし、いよいよ転送を始めようか」
「「はい!」」
斯くして、一つめの物語は幕を開けた。
その結末を、私はまだ知らない。
今回の小説は如何だったでしょうか?、楽しんで頂けたましたでしょうか?、これからも精進していくのでよろしくお願いいたします。