第三話、終結。
思いつきストーリー終らせました。
やっぱ衝動書きは駄目ですね(汗)
「じゃ早速じゃが、渡したい物がある」
「はい」
ルシファーは裂帛の気合と共に何やら力みだした。すると、胸のあたりから七色の丸い球が現れる。綺麗だなぁって見つめてたら、それを俺の心臓の辺りに突き出してきた。思わず後ろに飛びのこうとしたんだけど、左手を掴まれ動けなかった。
「心配するな、直ぐ済む」
その球を胸に押し当てたかと思うと、すっぽり何の痛みもなく、中へ入ってしまった。
俺は少し動揺して、ルシファーの顔にきょどった視線を向けた。
「ふ〜完了じゃ、これで今日からお前は魔王だ」
「は〜……」
何か今の瞬間魔王になったらしい。
とはいえ、どこも変わったところ無いような。俺は体のあちこちを触った。まず頭、角でも生えてないか、次背中、羽はないか、尻、尻尾もなかった。
まぁいいか。
「で、俺この後どうしたら良いんですか?」
「シルビア部屋案内してやってくれ」
シルビアのさっきまでの穏やかな表情が一変した。
「は? 誰に命令してんだ、猿失せろ!」
「あ、ごめんなさい、もう僕ちんただの猿でした」
ものすご〜〜く冷たい目でルシファーに言ったんだよ、さっきまで魔王様とか言ってたのに。ルシファーはキィーキィー言いながら、どこかへ走り去って行った。
俺はどうして言いか分からず、思わず無口になりかけたんだけど、事態を進めるために敢て声を絞り出した。
「シルビア、俺これからどうしたら良いんだ?」
ちょっと質問するのが怖かった、さっき本性見てしまったから。あの形相が俺に向けられたらどうしようかと思って恐怖していた。
「魔王様、お部屋にまず案内致します」
よく分からないが、俺には忠実のようだ。さっきの出来事は見なかったことにしよう。
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「ここがお部屋になります」
「うむ」
うむとか言ってしまった。魔王っぽい話し方に変えて行く俺の意思の表れだ。これから魔王として生きていくんだから。
本棚、テーブル、椅子、明かり、そして、ふかふかのベッドがある。柔らかいなぁ。触った感触では何か、羽毛のようなものが入っている。寝ころがってみた。寝返りうってみた。靴も脱がずにその上で飛び跳ねてみた。
いいね! 俺の家にはないもんだ。煎餅布団とは偉い違いだ。ははは良いぞ〜!
テンションあがってきたんで、シルビアに色々聞いてみる事にしよう。
「シルビア! 魔王の仕事とはなんぞや!」
ちょっと調子こいてしまった、しかし、ある意味核心をついた質問だ。
「魔王様の仕事は魔界の秩序を守る事です」
「ふむ、具体的に何をすれば良いのだ?」
「魔王様は取りあえず、元人間だったので、この世界に慣れて頂くことから始められるのが無難かと思われます、ですから、今日は魔王城での生活に慣れてください」
シルビアはそう優しく俺に言うと、部屋を出て行った。まぁもうここが俺の自宅なんだし、トイレがどこにあるのかとか、お風呂の場所とか、配置を知ったほうが良さそうだな。
一通り部屋は見終えたし、城内探検に出てみるか。
螺旋階段はもう行きたくないので、俺は王の間にやってきた。あの長い階段を下りなくても階下に行く階段があるはずだ。あちこちこの階を練り歩く。取りあえず、玉座にも座ってみる。まぁまぁの座り心地だ。さっき俺の部屋、つまり王の部屋へ行く時右側の扉から入ったんだ。こっちくる時も潜った扉だ。じゃあ左の扉を開こう。
俺は赤い扉をギィーっと重々しい音とともに開け広げた。石の廊下が続いている。真ん前に四角い窓があって、冷たい空気が俺の顔に吹き付けてくる。窓に近付き覗いてみると、眼下には歩いてきたときに通った森が見える。
あの森はこの魔界と通じるパイプ役だと来るときシルビアに聞かされていた。
シルビアがビルの壁を指して、ここ入り口ですよって言う事で、そこへ飛び込んだら森の中にいたわけだ。名前は知らないけど、あそこを通れば現実世界に帰れるはずだ。
――と……このへんにしとこう、さて探索探索ってもう3時間廊下が続いていた。
しかも、もと居た扉が見つからない。俺はいらいらしていた。物事すんなりいかなくなってくると、俺の気持ちは荒んでくる。
「ふざけやがって……誰だこの城作った奴! 出て来い!」
大きな声で叫び始めていた。窓はあるが、ここから飛び降りるわけにもいかないしな。
そう思った矢先、突然背中に違和感が走る。首を捻ると、何か黒い大きなものが目の端に映った。これってまさか俺の……? バタバタするイメージをすると、羽もバタバタ動いた。
羽じゃん! てことは飛べるじゃん! 窓から早速出るぞ――と思ったんだけど、窓が小さいんだよ。羽がつっかえるよ、これじゃ。
俺はいらいらしたんで、壁を握り拳で叩いてみた。崩れ落ちる壁、前のめりに空へ放り出された。
「うわぁああ、ちょっと、落ちる〜〜〜〜」
そうだ、羽をバタつかせるんだ。羽に神経を集中すると、羽ばたきが始まり、俺の降下速度がどんどん弱まり、最後には宙に浮いた状態で止まった。背中の辺りで羽が忙しなく動いている。
「よっしゃ〜〜、もう俺帰る……」
そう、俺はあの魔王城が嫌いになってしまっていた。そしてよくよく考えると、母ちゃん心配するなっと我に返ると、家に帰る事を決意していた。
「森を抜けるぞ〜」
物凄い速度で急降下し森の入り口に突っ込んだ。少し速度を落としながら森を進む。
あの明かりは、そうだ、あの明かりはあのビルの合間の路地に出るんだ。スピード落とすというか羽をしまって、ここから歩こう。羽が背中に埋まる感触と共に背中から消えうせた。
二本の足で光に向って歩むと、現実世界へ俺は帰ってきた。
「あぁ、やっぱりこっちがいいや〜!」
俺はなぜか歓喜して、その場で飛び跳ねていた。
そして自分の生き方を変える事を決意した。
やっぱり、たまには慎重に考えないとね!
くだらない俺の魔界での話しはここで終結した。
END




