異世界食糧監獄
短編しばらく色んなものを書いていきたいと思っています。誤字脱字があったらすみません。
そこは妙に裕福すぎて、そこは子供には理解できなくて、でもそこは彼の感覚からは異常すぎた。
少年、クリスト六歳は、前世というのがぴったり合う記憶的情報が断片かつ沢山に分かれて保持していた。
いわゆる異世界への転生。彼はそう位置づけた。その前世の知識、記憶は六歳の誕生日に突然目覚めた。
クリストは自分と時代と世界の情報を定義するために前世の情報と、前までのクリストがこれまで生きてきた情報を再度思い出していた。
クリストの前世の名前は栗栖音。少し女の子地味た名前で彼はいつも嫌がっていた。
音は高校二年生だったが、ここに来た理由がいまいちわからなかった。彼はトラックなどにひかれたことは一回もなく、ましてや死んでもいない。だがそれはあくまで彼の記憶の中での話であってそれを証明することは今は不可能だ。
前のクリストの記憶から、ここにはシスターと呼ばれる母親替わりの誰かがいて、シスターの家族は十四人いる。
年齢層は上から、十六歳が二人、十四歳が一人、十二歳が二人、十歳が三人、八歳が二人、六歳が三人、四歳が一人だ。
この世界には魔法があり、そして魔法とは別に個人が持つ特殊な能力、異能がある。クリストも異能を持っていて、他の子も持っている子がいた。そして魔法は子供のうちから全員に教えられ、運動神経を高めるための遊びや、地頭を良くするための勉強や知識を増やすトレーニングもした。
言語は日本語と、ここの公用語であろうナルカネ語を話せる。前世の知識は高校二年生レベル、今世は魔法学の知識が多量にあった。
前のクリストの記憶の中では、自分たちの中で、年齢以外で順番をつけるテストがある。
脳力が高い人間、運動神経がいい人間、魔力が多く魔法が上手い人間、異能が高い人間、そしてそれら全ての総合値が高い人間は高い順位になる。
高い順位で別に何かあることは今までなかったように彼は思えた。この孤児院でわざわざ順位を明確に厳密につけるということは、何かに使うからだとクリストは考えた。
他にもクリストを違和感へ誘う要素は数多くある。
彼は四歳から前の記憶が存在しない。一番最初の記憶はここで目覚め、シスターと呼ばれる人をシスターと呼んだ記憶だ。
その記憶を彼は不思議に思った。確かに昔のことは覚えていないことが多いが、四歳から六歳までの記憶をしっかり持っているのにも関わらず四歳から前の記憶がないのはおかしい。ここはきちんと調べなければダメだとクリストは決めた。
そして、ここは孤児院としてはあまりに設備が揃いすぎていて、裕福すぎる。
図書館には沢山の本があり、魔導具と呼ばれる物が沢山あったり、食事の質は日本人の目から見ても高いレベルだ。
全ての孤児院がこんなにレベルが高いものだと、クリストはどうしても思えなかった。孤児院にここまでの教育、飢餓もせず娯楽に困らせない環境を与えるのには何か理由があると考えた。
前のクリストが決めていたことは三つ、鍛錬を怠らない、仲間を作る、そしてシスターには気をつけろだ。
その理由は、孤児院で十六歳になった子がいつもは外に出れないのに外で里親が見つかるということだ。
クリストは小さい子ながらその不自然さを受け入れたりはしなかった。外の人が里親になるなら普通外の環境は見せるはずなのに、なぜここのシスターは何も見せないのか。なぜこの孤児院に閉じ込めておくのか、彼はそれが不思議でたまらなかった。
また、成績が低い子は全員、途中で里親が見つかる傾向がクリストには感じられていた。
クリストの予想は、自分達は何らかの実験に使われているというものだ。
そしてクリストの六歳の誕生日会が開かれる。
✝︎✝︎✝︎
「じゃあ皆席について!クリストのケーキ作ったわよ!」
時刻は午後四時、シスターの声が食堂に響き渡る。
クリストはこの世界に意識を転生させた午前七時から時間が経ったこともあって、思考は冷静になっている。
前のクリストは頭がよかった。考え方が子供ではなかった。
クリストは風の魔法と火の魔法が得意。さらに、異能として復元という能力を持っていた。これは自分以外の物、人の破損や怪我を部分的に時間を戻して復元する能力。
クリストは異能、火の魔法をシスターに報告、周りに自慢していなかった。六歳なら自慢したりするものだが、前のクリストは全てを疑って、自分の中で閉じ込めていた。
風魔法だけは報告し、それ以上能力を持っていないかのような態度を取っていた。
「クリスト誕生日おめでとう!」
同じ年代の孤児、ヨハネがクリストを祝う。
ヨハネに前も今もどちらのクリストも惚れた。それぐらい美形の顔立ちをしている。
「クリストはプレゼント何にしたの?」
そう彼に聞いたのはまた同じ年代、ウィリアムだ。
この孤児院では誕生日に欲しい物やお願いごとをシスターにするとちゃんと叶えてくれる。
「そうだわクリスト!何が欲しいの?言ってみて?」
クリストが今欲しいものは、この孤児院の本当の目的のための情報である。
「そうだなぁ、僕が欲しいのはー、外の人間の人と会う機会が欲しいなぁ」
そう言って彼はシスターの目を見た。
彼女の目は僅かに揺れた。周りの子はポカンとしている、クリストが何を言っているかよく分からなかった。
「いいでしょ?外に行くわけじゃないし?」
クリストは精一杯六歳のクリストを演じた。笑顔で、純新無垢で何も知らない雰囲気を醸し出した。
「・・・・・・いいでしょう。考えておいてあげるわ」
シスターは苦い顔を少しだけして、ケーキの配膳の準備に戻った。
クリストと、シスターの戦いが始まった。
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