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聖女二人の異世界ぶらり旅  作者: カヤ
獣人領編

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133/169

羽に包まれて

テラスのある部屋の、テラスの側から入ったという話を聞き、三人はすぐそこに向かった。確かに外側に開く両開きの大きなドアがあり、鳥人が羽をたためばそのまま入れるつくりになっている。


そこをサイカニアがいきなり開けようとした。


「ま、待って、一応ノックするから」

「マキがそう言うなら」


サイカニアはすっと一歩下がった。真紀は急いでとんとんとドアを叩いた。


「誰だ」


奥の方からサウロの声がする。


「真紀だよ」

「おお、入ってくれ」


少し抑えた声だが何のためらいもない。オーサとサイカニアと目を合わせると、みんなで頷き、サイカニアがドアを開けた。


ドアを開けると椅子の二つ付いた丸いテーブルがあって、外を見ながら食事ができるようになっている。そして寝室は別になっておらず、大きな衝立の向こうがベッドになっているようだ。声はそちらの方から聞こえてきた。


「サウロ?」

「おお、サイカニアもか。チハールが寝ているから静かにな」


サウロの落ち着いた声に安心して衝立の向こう側に回り込むと、真紀は呆気にとられた。ダブルと言えばいいのか、大きめのサイズのベッドがそこにはあり、サウロが窮屈そうに横になっていた。そして手前には千春が並んで横になっており、汗をかいて少し苦しそうに息をしている。


その千春はサウロの羽で大切にくるまれていた。サイカニアはほっとしたように羽の先を少し震わせ、


「一人で大丈夫? もっと温めなくて大丈夫かしら」


と心配そうにベッドのそばに寄った。


「何なら私も形態を変えて、千春のそばにくっついていたほうがいいかい? 鳥人の体じゃこのベッドの作りは狭いだろ」

「それはそうだが」


サウロもそのほうがいいと思ったのか、名残惜しそうな顔をして千春からそっと羽をよけ、ベッドから起き上がった。


「千春!」

「う、ん」


急いで駆け寄った千春のおでこにそっと触ると、熱いことは熱いがそれほどではない。ほっとすると同時に、正直、サウロが熱すぎて熱がこもったのではないかという疑惑が浮かんだが、自分が手が離せなかったのだから仕方がない。それより汗が出てきているようだ。ここからはむしろ冷やしたほうがいい。


「犬人二人ならもっと温まるけど」

「広い場所があるなら鳥人のほうが保温効果は高い」

「いや、いっそ小さい猫人にくっついてもらった方が」


三人が危険な話をしている。


「待って待って、三人とも待って」


真紀の言葉に三人がぐるりと振り返った。


「多分もう、熱は上がり切ったと思うの。震えてもいないし。ここからは、千春が気持ちいいようにむしろ冷やしたりしてあげるのが大事だから、温める必要はないよ」

「しかし雛は温めるものだろう」

「いや、千春、雛じゃないからね」


サウロにとっては雛扱いだったようだ。


「冷やすなんて聞いたこともないよ。温めて直さないと」

「獣人には熱中症はないのかな?」

「熱中症?そもそも熱だってそんなに出したりしないから」

「なるほど」


だめだ。温めることしか考えてない。ここは人族である自分だけが頼りだ。


「疲れただけだとは思うけど、一晩私が一緒にいて様子を見るね。明日になっても落ち着かなかったら人族のお医者さんを呼んでもらえるかな」

「わかった」


三人はそれほどひどくないと知ってほっとしたようだった。


「熱はあるが、それほどひどくないと、疲れただけだろうと皆に伝えてこよう」

「私も。私たちがいるとちょっと狭いしね」


サウロとサイカニアがそう言って出て行った。


「何にもないとは思ったけれど、何にもなくてほんとによかったよ」


オーサがやれやれと言った調子でそう言った。本当に。ただ千春がいっそう茹だっただけですんだ。


「確かにどの種族とも恋愛はできるんだよ。けれど、姿かたちの問題か、獣人と人族とはめったに惹かれ合わないし、その中でも鳥人はそういうことがほとんどないんだよ」

「そうなんだ」

「多分ものの考え方がだいぶ違うんだろうと思うよ」

「それはよくわかる。千春がいつもすごく苦労しているもん。だいたいあきらめてるけどね」


オーサは苦笑いした。


「あいつらと付き合うにはあきらめるのが一番楽だよ、ほんとに」


それからすぐに冷たい水とタオルを持ってきてもらい、真紀はできるだけ千春を冷やし、水を飲ませて一晩過ごしたのだった。


「うーん、あれ、真紀ちゃん」


明るい光に千春が目を覚ますと、久しぶりに隣で真紀が眠っていた。なぜこの状況になったのかわからないが、確か昨日ゲイザーを魔石に還していて、あ、


「ゲイザーは!」


がばっと起き上がったらちょっと頭痛がした。


「いったー。二日酔い?」

「んー、千春」


その声でマキが目を覚ました。


「もう起きて大丈夫? 二日酔いじゃないよ。昨日熱で倒れたんだよ」

「ゲイザーは?」

「私が魔石に還したから大丈夫だよ。それより」


真紀は起き上がると千春の額に自分の額をくっつけた。


「んー、うん。熱は下がったみたいだ。よかった。まず水を飲もう」


真紀は安心してベッドから下りると、ベッドの横の水差しからコップに水を注いだ。


「はい、千春」

「ありがとう」


もらった水は冷たくて喉をするする通り、千春が自分が思ったより喉が渇いていることを知った。水を飲み終わってもう一度ベッドに横になると、真紀もベッドに上がってきて、千春の隣にうつ伏せ、くすくすと笑い始めた。


「真紀ちゃん?」

「だってさ、千春倒れた時にね、サウロが千春を受け止めて、大切に抱っこしてここまで連れて来たんだよ」

「ひー、恥ずかしー」


千春は思わず顔を両手で隠した。


「それでね、ゲイザーを魔石に還し終わって慌ててここまで来てみたらね、このベッドで」


そこで区切って真紀は本格的に笑い始めた。


「ちょっと、気になるじゃない! 何があったの?」

「ち、千春をね、サウロが、こう、同じベッドで」

「ええ、それって」


まさかあのサウロが? 千春はちょっとドキドキした。


「雛を抱くみたいに羽でそっと包んでいて」

「そっちか! あーもう! 恥ずかしすぎる!」

「ハハハ」


二人でしばらく転げまわった。


「はー、おかしかった」

「あのサウロに限って何かあるわけがなかったよ、まったく」


並んで天井を眺めると、真紀がふとまじめな顔になった。


「獣人は具合が悪い時は温めるんだって。今回のことで、どうやら獣人にとって私たちはどうしても雛とか子どもとか、そんな風に思われてるんだってよくわかったよ……」

「そうか。猫族なんて同じくらいの大きさなのになあ」


一息ついたころ、部屋のドアがノックされた。


「どうぞ」


真紀の声にオーサが入ってきた。


「千春はどうだい」

「もう大丈夫そう」

「それはよかった」


オーサはほっとしたようにそう言った。


「けど、さっそくだけどちょっと話があるんだ」

「洞窟に残ったゲイザーだね」

「そう。どうするか決まったから、二人からゲイザーに伝えてもらいたいんだ」


ーよく見るとオーサの目の下には少し隈ができていた。


「昨日の会議たいへんだったの?」

「まあね。さ、まずご飯を食べようか」



まずは腹ごしらえだ。


いつも読んでくれてありがとうございます(´∀`*)

リアルが少し忙しくなってきました。なるべく週一更新を目指しますが、無理な時はお休みするかもしれません。「転生幼女」も不定期になりそうです。落ち着くまでお待ちいただけるとありがたいです!

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