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HappyTime

あらすじ

芸能人嫌いの俺がHappyTimeという無名のアイドルグループのマネージャーになった。かなり皮肉なことだと知っている。

知っていたが、HappyTimeを有名にするには波乱万丈だった。時に喧嘩をし、仲直りする。そして、何よりも語り合う。


「こんな俺がHappyTimeと一緒にいていいのかな?」


──────────────────────


なぜか思いついたアイドルグループの話です! 一応はジャンル的に恋愛かな?

「なぁ、知ってるか? 今日、転入生が来るらしいぞ! しかも、女子! きっと可愛いだろうな」

 

 クラスの男子たちがそんなことを話している。そして、俺のことを知っているからかチラチラとこちらを見てくる。


 その反応はもしかして……。


「その女子って何か芸能活動でもしているのか?」

「あ、あぁ、噂によればだけどな」


 見ていた奴が話しかけてきたからか、話していた男子は少し戸惑いながらも、質問に頷く。


「そうか。サンキューな」


 一応はお礼を言ってから自分の席に戻る。


 まぁ、その転入生が本当に芸能活動をしているかわからないようだし、俺に関わってくる可能性は低いだろうな。例え関わってきたとしても、芸能活動さえしていなければ問題はない。高校生で芸能活動なんてするのは、ほんの少々数だしな。


 そんなことを思っているとチャイムが鳴り、すぐに担任が入ってきた。


「はーい。お前ら席につけ。噂で聞いているだろうが、今日は転入生がいる。しかも、このクラスだ。嬉しいだろう。それと男子諸君喜べ。女子だ」

 

 先生が告げると男子は立ち上がり喜んでいる。もちろん、芸能人嫌い以外は普通と変わらないので俺も共に立ち上がり喜ぶ。


「静まれ! この猿どもが!」

「誰が猿だよ! 誰が!」

「お前ら男子以外に何がいる?」

「なにー?」

「まぁまぁ落ち着けって。ずっと騒いでいると転入生も入らないだろ? 教室の扉前で放置とか可哀想だろ?」

「ま、まぁ、そうだな」


 幸い俺のなだめる言葉にみんな落ち着いてくれて、着席してくれる。


「助かる。山岸(やまぎし)。さすがは学級委員だな」

「押し付けられただけですよ。誰がなりたくてこんな役職になりますか」

「まっ、そうだよな。よし、入ってきてくれ」


 先生が言うと「失礼します」と妙に透き通る声が聞こえてきて、中に入ってきた。

 すると、まるで糸のように一本一本が細い髪が腰に届くほど伸びている。そんな髪の色はどういうわけか銀色だ。


 いくら校則で規制されてないからと言って、その色はどうなんだ? 珍しすぎるだろ。まぁ、生まれつきだったら悪いし、そんなことは言わない。


 彼女は膝上くらいの長さまであるスカートを(ひるがえ)して、俺たちの方を見る。


「みなさん。初めまして。アスタロイド・リカルターと申します。日本人とロシア人のハーフです。日本語の勉強していましたが、初めて来たので色々と非常識なことをするかもしれませんが、よろしくお願いします」


 彼女は微笑みながら自己紹介をして(うやうや)しくお辞儀をする。彼女の美しすぎる顔立ちも相まって、あまりの美しさに誰もが見惚れてしまう。それは俺も例外ではない。


「みんな仲良くしてやれよ。席は学級委員の山岸と春風(はるかぜ)が朝早くから用意してくれた、山岸の後ろにある席に座ってくれ。文句は言わせないぞ」


 別にそこまで説明しなくてもいいんじゃないか? 春風はかなりの大和撫子だから、男女問わず人気だからさ、主に男からの視線が怖いのだけど。ただでさえ学級委員として春風と共に行動することが多いのにさ。さらにこんな美少女と転入生と席が近いとか殺される気しかしないのだけど。


 リカルターは優雅にこちらは近づいてくる。その一挙手一投足全てに美しさが滲み出ている。


 俺の後ろにある自分の席に座ると授業が始まった。だというのに肩を背後から突かれる。


「なに?」


 振り返り彼女を見るとニコッと微笑まれた。


「これからよろしくね。山岸くん」

「あぁ、よろしく」

「ところで早速お願いがあるのだけれどいい?」

「どうした? 教科書でも忘れたか?」

「ううん。次の休み時間に中庭に案内して欲しいの」

「別にいいけど。どうせ次の時間は生物で植物のスケッチするから中庭に行かないといけないからな」

「ありがとう。楽しみにしているね」

「そりゃ、どうも」


 恥ずかしさでカッコつけて返してしまったけど、仕方ないよな。まぁ、引かれている可能性はあるけど、この際は諦める。


「はっ!」


 気がつくと授業が終わっていた。完全にボッのしていたはずだが、ちゃんとノートはとっていた。不思議だな。


「それじゃあ行こう」

「そうだな」


 俺たちは筆記用具と生物の用意を持って、教室を出た。出て少ししてから教室が騒がしかったが、これが学級委員の特権だ。


 ざまぁ見ろ。デメリットが多いが、希少なメリットもあるんだ!


「あっ、そういえばスリッパのままでいいから下足室行かないぞ」

「わかったよ。問題はないしこのままで」

「そう言ってくれると助かる」


 俺はなんとなくこの学校にある色んな施設の説明をする。ニュースすらネットとかでしか見ないので世間話ができる自信がないから構わないと私的には思うのだけどな。


「さぁ。着いたぞ。ここが中庭だ。昼休みは人でごった返しているが、それ以外の場合は比較的空いている。たまに不良がいるから、その場合は気づかれないように逃げろよ。幸い今はいないようだけど」

「わかったよ。気をつけるね。それでここで一つ言いたいことがあるのだけれどいい?」

「あ、あぁ」


 ま、まさか告白か!? 一目惚れでしたとかそういう系の! いや、待て。落ち着くんだ俺。まだ告白とは決まっていない。ただ、その可能性が高いだけだ。


「あ、あの……その……」


 何、その反応。可愛すぎて血を吐きそうだけど。ていうかそんなに躊躇することなのか? ということは本当に告白か!? 俺にもついに春が来るのか!?


「落ち着こう。一旦深呼吸すればいいと思う」

「そ、そうだね」


 自分にも言い聞かせるように彼女にそう告げるとすぐに実行に移した。緊張していることがバレるのが恥ずかしいのでなんとか我慢する。理性の限度をコップとすると、今は水が表面張力している状況なので何かの拍子で溢れ出す可能性がある。かなりヤバい気がする。


「スー……ハー……よし!」


 彼女は意を決したような表情をしている。


 一体何を言うのだろうか?


「わ、わたしの……わたしたちHappyTime(ハッピータイム)のマネージャーになってください! お願いします!」

「はっ?」

「突然どうしたと思いますよね。まずはHappyTimeとは今はどこの事務所にも所属していないアイドルグループです。そこでリーダーを務めているのがわたしです。わたし以外にもメンバーが三人います」

「いや、待てよ。色々おかしいだろ?」

「あぁ、そっか君が噂の転入生か」


 そんな声が聞こえたかと思うと近くにある木からイケメンが飛び降りてきた。そのイケメンは正直言って不良だ。尚且(なおか)つ変態でストーカーだ。でも、今まで何人もの女を食ってきたことは知っている。しかも、全員と何回かヤッて飽きたら捨てるとか言うクズ野郎でもある。


「まず初めに先ほど君がマネージャーになってくれと頼んだ山岸響軌(ひびき)くんは芸能人が大っ嫌いだよ。理由はどうやら僕だけしか知らないようだけどね」


 ヤベェ。こいつのウインクに背筋がゾワゾワした。やっぱり、こいつはヤバいやつだ。知っていたが改めて実感した。


「えっ? そんな……」

「間違えじゃないさ。俺は芸能人なんて見たくもない。理由は言いたくない。というか誰にも言っていないのにどうしてアンタは知っているんだ?」

「僕は君のことならなんだって知っているよ」


 キモいキモいキモい! 生理的にマジで無理!


「君はどうして彼をマネージャーにしようと思ったんだい? 理由は?」

「理由は……ないです」

「いや、ないんかい」


 ついつい小声だけどツッコミ入れてしまったじゃねぇか。


「なら、僕でも問題ないわけだね」

「え、えぇ」


 まぁ、確実にヤるのが目的だな。目覚めが悪いけどこれに限っては仕方ない。


「なら、僕がなるよ。そのマネージャーに。だからさ、君たちが集まる予定の場所に連れて行って」

「えっ? あなたが? それに今から? わたしはあなたのことを何も知らないのに」

「向かっている最中に教えるよ。僕の全てをね」

「まっ、頑張れよ」


 俺はそうとしか声をかけない。かけるかも起きない。


「それじゃあ行こうか」


 彼は彼女の肩に腕を回して、さりげなく、まるで事故とでも言うかのように彼女の大きめな胸を揉む。あまりにも自然すぎて彼女の思考は停止してしまっているようだ。


 ああいう現場実際に見るとスゴい技術だな。さて、彼女は明日には処女を喪失しているだろうな。かわいそうだけど、もうどうでもいいや。芸能人になりたい奴なんてロクなもんがいないことくらい知っているしな。


 すると、彼女はこちらを見てくる。しかも、悲しそうで助けを求めるような表情だ。


 あぁ、もう! あの表情苦手なんだよな!


「おい、待てよ」

「ん? 何かな?」

「彼女、嫌がってるだろ? 離してやれよ」

「僕たちの間に踏み入れる勇気もない者が何を言っているのかな?」

「なってやるよ。俺がそのHappyTimeとかいう世間的には無名のアイドルグループのマネージャーをな」

「えっ? ごめん。ちょっと何言っているかわからないや」

「もう一度言う。俺がHappyTimeのマネージャーになってやるよ。なんなら、プロデューサーにもなってやる。そして、HappyTimeという名を世界に(とどろ)かせてやるよ」

「えっ? 嘘だよね? 君がそんなことを言うなんてあり得ないよ」

「アンタに俺の何がわかる」

「君の全部を知っているよ! 君のことならなんだって知っている! だから、君がこんなことを引き受けるわけがないことも知ってる! だから、僕が代わりに!!」

「その気持ちはありがたいが、アンタは俺のことを何も知らない」

「知ってるよ! なんだって!」

「この後に及んでまだそんなことを言うか。呆れを通り越して、尊敬する。なら、アンタの情報にないであろうことを提供してやるよ。俺は誰かを悲しませたり、嫌がるようなことをする奴を許さない。だから、俺は自分を許せない。でも、生きなければいけないんだ。約束だから。そのために俺は会話をする時は感情を見ないようにしているのさ」


 一通り言ってみたのはいいが、かなり恥ずかしいことを言っている気がする。いや、実際に言っているだろう。


 彼は自分が山岸響軌のことで知らないことがあったからショックだったのか、その場で項垂(うなだ)れている。そのせいで力が抜けたようだ。なぜなら、リカルターが走ってきているからだ。そして、どういうわけか涙が溜まっていた。


 彼女は何を思ったのかちょうどいい感じに俺の胸に飛び込んでくる。さすがにそんなことをされたら心臓が高鳴ってしまい彼女に音が丸聞こえだろう。


「これからよろしく。マネージャー」

「その呼び方やめろ」

「なら、山岸マネージャー」

「ほぼ一緒じゃねぇか!?

「仕方ないなー。山岸くんで」

「それが一番しっくりくるわ」

「なら、良かった」


 こうして芸能人嫌いの俺とHappyTimeとの物語が始まった。

いかがでしたでしょうか?

彼らの物語はまだ始まったばかりです。

また機会があれば彼らが皆様を芸能界の世界へご招待します。


*注:本作はフィクションです。実在するものとは異なります。さらに作者が妄想で書いた話なので、現実味はあんまりないと思います。

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