ワイルワールドオンライン
あらすじ
ワイルワールドオンライン。その名はフルダイブのVRゲームの名前だ。
一人の少年がそのゲームへとログインした。でも、その日がゲーム歴史上に残る最低最悪な日だとは誰も知らない。
その日がワイルワールドオンラインはデスゲームと化した。
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タイトルやあらすじからわかる通り、VRゲームモノです。
2045年7月。あるフルダイブのVRMMOが発売された。
WhilWordonline。通称WWO。
このゲームはレベルがかなり高い難易度で設定されているためゲーマーか度胸がある者しかしていない。何がハードモードかというとまずは安全圏というものがない。異世界のように村や街にまでモンスターが襲ってくることがある。
襲ってくるのがプニプニとした栗のような形のスライムとかのいわゆる雑魚モンスターなら、まだ他のゲームなどでも出て来そうだが、WWOに関しては石でできた人型の巨大人形のゴーレムやトカゲが赤い鱗で背中を覆われていてとてつもない大きな翼を持っているドラゴンまでも出てくる。
しかも、モンスターに殺されると復活はできるが全てのデータが飛んでしまう。それだけではなくVRなのに激減されるが、痛みもある。もちろん、傷もできる。痛みはログアウトしても残るが、傷跡はログアウトしても残らない。さすがにそこまでの技術はなかったのだろう。
WWOのプレイヤーは増えに増えていき、夏休みが始まる頃には学校などが長期休みに入るためか、さらに増えている。今の総プレイヤー数は28345人いる。そして今、夏休みで暇になった一人の男子高校生がログインしてきた。
『ようこそ。ワイルワールドオンラインへ。あなたの体をスキャンさせていただきます』
女性だが、機械が言っていることが丸わかりのセリフを聞いて少年は優しそうに微笑む。
数十秒後に同じ声で
『スキャン完了しました。確認をお願いします』
というセリフが少年の耳に届くと、目の前にオンラインゲームの白い長方形の背景でその上に黒文字に文が書かれていた。
【年齢17。性別男。身長172cm。体重63kg。体格日常に支障がないほどの筋力。視力左右共に1.2。ようこそ! WWOへ。あなたにはこれから操作するキャラクターを作っていただきます】
機械の声が言うと視界が一気に変わる。
先ほどまでは真っ白な空間にいたが、今はどこを見ても0から9までの数字がまるで生きているかのように辺りに浮遊している真っ黒な空間だ。
普通ならここで迷いがあるはずだが、少年は何一つ迷いなく自分のキャラクターを作った。
目の前に浮いているタッチパネルをタッチすると真っ白な世界になったかと思うと赤、青、緑。つまり光の三原色が線状でまるで、襲いかかってくるかのように下から上へと行く。
そよ風を感じたので少年は目をゆっくりと開ける。すると、まるで現実の高いみたいに様々なところから色んな声が聞こえる。
少年はキョロキョロと辺りを見回す。
「ここが最初の街か。賑やかだな」
あまり賑やかなのは好かない少年でも今回ばかりは少しワクワクしている。
彼はちゃんとゲームをやる。しかし、やっている数はない。なぜなら、彼は完全にそのゲームをクリアするまでは他のゲームをしないからだ。例え、複数のデータがあるゲームでもその全てをクリアするまでは他のゲームをしない。
ワイルワールドオンラインはデータを一つしか作れないが、クリアが難しい。このゲームのクリアはごく簡単だ。ラスボスを倒したらクリアだ。しかし、このゲームはそのラスボスの居場所がわからない。
そのせいで場所を転々としていると言われたら、そもそもラスボスなんて存在しないと言われたりしている。だからこそ、彼は興味を示したのだ。
少年は利き腕である右の人差し指を何もない虚空で上から下へとスライドすると、色んなことを確かめられるウインドが開いた。彼はその中のステータスと書かれている欄を叩いた。
【名前:Seisu Lv:1
HP:1239
MP:82
STR:45
DEX:32
VIT:56
INT:73
AGI:85
MND:34
LUK:15】
ステータスの欄を押すと各自の数値が出てきた。その上には薄青色の髪の毛で左目を隠している中肉中背の男が映っていた。瞳を見るとつり上がっていて、紺色だった。
格好は服装は駆け出しプレイヤーらしく、どこにでもありそうで胸に胸当てを付けている。そんな者の背中には一本のただの剣が鞘に収まっていた。その者とは少年のことだ。
とりあえず何かをしようと考えた少年セイスはこの街をブラブラと歩くことにした。すると、どこからともなく声が聞こえてきた。何だろうと思ったセイスが耳を澄ませる。
マイクで声を拡張しているのか歌が聞こえてきた。その歌はこのゲームを始める前に聞いた現実のアイドルの歌だ。
まるで引き寄せられるかのように歌が聞こえてきている方へと足が進んでしまう。
数分で歌が聞こえる場所へと着いた。このゲームは現実世界と同じ時間の流れにしているので本当に現実でも数分進んだ。
でも、それが無駄とは思わないで済んだ。なぜなら、目的の人物が本当に上手い歌をステージに立ち気持ちよく歌っていた。
その者は赤色の髪を腰まで伸ばしていて、瞳も赤色だった。その目は優しそうな目つきをしている。
彼女の格好は本当のアイドルみたいに胸の部分を強調していて、ミニスカートだ。アイドルには貧しい胸の人もいるが、今、ここで歌っている女性は平均よりも少し大きい程度あるので、かわいそうに思わないで済む。
よく見ると耳に星の形をしているピアスを付けている。彼女の顔を見るとセイスと同い年か少し下くらいの顔をしていた。
このワイルワールドオンラインでは年齢を偽らないように事前に年齢を設定できない。年齢はこのゲームをするために必要な顔を完全に覆うヘルメットのような形をした機械のアージスが顔から年齢を読み取る。
アージスを開発したエルスアニアというゲーム会社はオフ会を推奨しているから、プレイヤー同士のリアルをよくわかるようにしている。
輪郭や顔のパーツを変えることができるが、その辺りは自動で調節させる。例えば目だけをいじり、大人っぽくしても他のところのパーツの選択肢が狭まり年相応の顔にされる。
突然、ゴーンという鐘の音がこの世界全体に響いているのかと勘違いするほど大きな音が聞こえる。それも天から聞こえてきたので、そのゲーム内にいる誰もが空を見上げただろう。すると、雲の流れが止まっていることに気づいた。
「何かのイベントか? にしては壮大だな」
セイスが呟くとまるでそれに呼応したかのように周りの者たちも「何かのイベントか?」と言い始めた。
『ようこそ。みなさま。ワイルワールドオンラインを楽しんでいただけているでしょうか? …………うんうん。楽しんで頂けているのなら嬉しいです。そんなみなさまへプレゼント』
天から聞こえてきた機械のような声が言った瞬間に脳に直接雑音が入ってきた。しかし、すぐにその雑音は収まった。
何かの状態異常になっているのかと思い安全なのでその場でウインドを開き、ステータス画面を開く。そこで固まってしまった。
なぜなら、セイスが黒髪で黒目。そして、少しのタレ目というどこにでもいる姿になっていたからだ。しかも、その顔は少し女っぽい。これはセイスが嫌っていた自分自身の現実の姿だった。
『このゲームの本当のシステムであるログアウト不可を追加しました。これで思う存分ワイルワールドオンラインを楽しめますね! あっ、言い忘れていましたがこの状態で死ぬと現実でも死にますから。死に方は様々。脳に強力な電気ショックをしたり、脳に電子レンジ並みの電磁波を加えて、脳の細胞を破壊したりなどなど盛りだくさん! ぜひ、お好きな死に方を選んでください』
本当にログアウトできないのかと確認すると、本当にログアウト不可になっていた。そもそも、ログアウトという選択肢自体がなくなっていた。
つまり、完全にこの世界に閉じ込められてしまった。
『少し心細そうな方がたくさんいますね。でしたら、世界も一部分だけですが変えてみましょう!』
天の声が元気よく言うと本当にごく一部が現実世界と同じようにビルなどが建ち始めた。元々は完全な中世ヨーロッパと同じような世界だったのにだ。
『しかし! このゲームはそんなに甘くないですよ。ハード過ぎるゲームとして人気のWWOがハードじゃなくなるなんておかしい。さらにハードにします。現実世界でもあるような建物が崩壊すると現実世界のその場にあるその建物も壊れますよ。さてさて『このゲームは世界を変える』というWWOのキャッチコピーの通りになりましたね。みなさんぜひぜひ、どこかにいるラスボスを倒してこのゲームをクリアしてくださいね。私はみなさんを見守っています。それでは!』
天の声がそう言い終えると本当にそれ以降、声が聞こえなくなった。
「狂ってやがる」
少年セイスはついついそう呟いてしまう。
ゲームとは思えないほどの静寂が訪れる。そんな中、一人だけ動いている者がいる。この場にいる誰もがその者へと視線を向ける。その者とはセイスだ。
誰もが無表情の彼を恐れる。まるでセイスには感情がないように見えるからだ。しかし、セイスの今の心中にはたった一つだ。それは諦め。
ログアウトすることもできないのでジッとしてられないと考えたからだ。他のゲームならジッとしていても別に問題ないがWWOに限ってはそんなことしていられない。このゲームは安全圏などないからだ。それに雲が動き始めているため時間が動いているということだ。
(俺は他の奴らとは違う。せめてレベルを上げないとこの世界から抜け出すことなんてできない。俺は他人任せが大っ嫌いだ。だから、俺がこの狂ってやがるゲームを終わらせてやる。例え、自らの命に代えてでも)
まるで見下しているような目つきでセイスは全員に背を向けて一人で街の外へと出ていった。
いかがでしたでしょうか初めてのVRゲームを題材にした作品なのでかなり苦戦を強いられました。




