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諦めたくない夢

あらすじ


全国的に有名な彼は高校生で聴覚を失った。だけど、そんな彼はやり続けていたバスケをやめたくないので聴覚障害者だけのオリンピック『デフリンピック』に出たいと言った。


これは一人の少年がデフリンピックの選手となるまでの戦いの記録である。


──────────────────────


今回もヒューマンドラマです。ちなみにあらすじの戦いの記録というのは試合という意味です。それにみなさんはデフリンピックという名を知っていますか? 僕は前の木曜日に初めて知りました。パラリンピックよりもデフリンピックの方が歴史は古いんですね。


デフリンピックのプロの人から話を聞いてこの作品を書こうと思いました。


まだまだ知られていないデフリンピックのために

 ある日、晴れたごく普通の日に少年は一人で歩いていた。テストで学校が早く終わったのでいつもよりはゆっくりとしている。彼はバスケ部に入っている。でも、今日はテスト期間中なので練習はない。するとしても筋トレか自主練くらいしかない。


 五体満足で何一つ不自由なところはない。あるとしたら頭がさほど良くない程度だ。といっても常識がないのではなく勉強系に対してだけ良くないのだ。むしろ彼は雑学や一般常識は人一倍多い。そのため色んなことを知っている。それは世間ではあんまり知らないこともだ。


 少年は信号待ちをしている。当たり前だが交通ルールを守っている。死にたくはないのだから。耳にイヤホンを差していないし、ながらスマホをしているわけでもない。普通に立っているだけだ。


 信号が変わったので前して見ずに横断歩道を渡るが、それが彼の人生を大きく変える出来事になるとは誰も思っているわけがなかった。ごく普通にその日を終えると思っていた。


 彼は横断歩道を渡っていると居眠り運転をしている車が彼の方へと突っ込んできた。まさか車が突っ込んできていると思っていなかった彼はそのまま大きな音を立てて()かれた。


 運がないことに突っ込んできた車は電気自動車だったために動いている時は全く音が聞こえない。だから反射神経は高い方の彼でも避けることができなかったのだ。


ぶつかった衝撃でドライバーは目を覚まして慌てて車から降りてきた。


周りに何か見ているものや人がいれば変わっただろうが現在ここには何もなかった。そのため電気自動車のドライバーは恐怖のあまりかその場から逃げ出した。少年は頭を強く打ったようだがちゃんと意識がある。その代わりに出血が凄まじい。


 誰の声もしない。音も聞こえない。少年は死を覚悟した。


 俺はここで死んじゃうのか……。オリンピックに出たかったな。まぁ、別にうちは強豪校ではないけどな。だからって、子供の頃からの夢を諦めたくない。でも、死んじゃうのか。ごめん。みんな。


 彼は一人で色んなことを考えているが浮かんでくるのはにも様々なことに対しての謝罪と感謝をする。最期だろうからどんなに恥ずかしいことだって今なら言える気がする。


「先輩!?」


 突然、マネージャーの声が聞こえてきた。ちなみにマネージャーは金髪がかっていて、さらに目にカラコンを入れているし、胸が大きいからかわからないが胸元を開けているのでギャルのように見える。だが、彼女はギャルではなく真面目な人だ。それに彼女がこんな格好をしているのは周りとの関わりのためだ。


 少女はごく普通の黒髪で黒い瞳を持っている長身で細マッチョの少年が血まみれで道路に倒れているのを発見して、慌てて救急車を呼ぶ。彼女は中学の頃からマネージャーをしていたので医療関係は強い。そんな彼女が少年が死なないようにと必死に止血をする。でも、止まらない。それほど彼は血を流しているのだ。


 救急車が来る前に彼は血を流しすぎたせいか、かなり眠くなってきた。ゆっくりとまぶたを閉じていくが彼女は死ぬかと思い盛大に涙を流す。その涙が彼の頬に何滴も落ちていくが今はそんなことを気にしていられない。


  彼女はいつも強がっているために今回のような急な涙はかなりギャップがある。でも、眠気に勝てなくて少年はゆっくりとまぶたを閉じた。



 少女は憧れの先輩で異性として好意を抱いている相手を血まみれにしたモノのことを恨んでいる。憎んでいるといっても過言ではない。いつもなら気にするが服が血で汚れることなんて全く気にしない。今あるのは、ただ少年に生きて欲しいという願いだけだ。


 少女は心の中で誓った。少年がもし目を覚まして、どこかに不自由があったとしても今までのように好きでいると。ずっと支えることも。


 ちょうどその時に救急車が到達した。救急隊員は少年をベットに寝かせて慌てて様々な治療を施す。


「すみません。どういう状況でこうなったのか教えていただきたいのであなたも同乗してください」

「わかりました。ですが、アタシ自身もどうしてこうなったか知りませんよ」

「それでも構いません。彼が目を覚ました時にそばにあなたのような人がいてくれれば心強いでしょうから」

「どうしてそう思うのですか?」

「どうしてかって簡単ですよ。ここまで適切な応急処置ができる人には悪い人はいませんから」

「そうですか……。彼を…………先輩を助けてください」

「当たり前です。例え命に代えてでも彼を助けます! 絶対に!」

「お願いします」


 少女と救急隊員はそんな会話を交わす。救急隊員の方は治療をしながら。少女の方は治療を見ながら。


 運がいいことに連絡をした一発目の病院で救急を受け入れてくれた。病院に着くなり複数人の医者と看護師が少年のベットに集まった。


「患者の名前は阿蘇光生(あそ こうせい)米原(べはら)高校の第二学年でバスケ部に所属しています。血液型はO型のRhnull(アールエイチ・ヌル)です」

「O型のRhnullですか!? そもそもどうしてわかったのですか?」

「こちらの少女が本人から赤十字社の献血から帰ってきて言われたそうです」

「輸血できるほどの血があるか?」

「今すぐ確認を取ります!」

「第二手術室に連れてきてください!」

「わかりました!」


 看護師は全員慌ただしく離れて複数人の医者が彼の元へと集まってきた。


「あなたはここに待機していてください。それと、できれば彼のご家族にご連絡をしていただけると幸いです」

「わかりました」


 少女はついて行きたいが、そんな力はない。だから、少年──阿蘇光生に念のためと言い、彼から教えてもらっていた自宅の両親の携帯電話番号を使い、電話をかけるとちゃんと繋がった。あと彼女にできることと言えば手術が成功するのを祈るしかない。


 30分後。光生とは違い小柄な男女が一人ずつきた。二人はごく平均的な身長と体格だ。彼らが光生の両親だと知っている。よく見ると光生の小学五年生になった妹と大学二年生の姉がいた。二人は身長がまだ140センチしかない。妹の方はまだ希望があるが、姉の方はすでに希望がない。それに姉の方は妹と同い年に見えるほどの童顔なので双子と言ったら誰でも納得してしまう。


 実際に少女も納得した。


「一体光生に何があったの?」


 光生の母親が少女に聞くが、首を横に振ることしかできない。だって、彼女も何があったかわかってないからだ。


 自分は現場を見たが何があったかはわからないことを伝えると四人とも申し訳なさそうな顔をしていた。それ以降の会話もなく八時間も経った。だけど、光生はまだ出てこない。夕飯を近くのコンビニに買いに行こうと立ち上がると手術室の扉が開いて中からは執刀医の男性が出てきた。


「なんとか一命を取り留めました。ただし、誠に申し訳ありませんが彼は二度と補聴器なしでは音が聞こえなくなります。つまり、これから彼には手話で接してください」

「どうしてそんなことになったのですか?」

「どうやら何者かにスゴい速度で轢かれたようです。そして、彼は吹き飛ばされて頭を強く地面に打ち付けました。意識があったことが不思議なくらいに。ですが運が悪いことに聴放線に血が流れ込んで血栓ができました。しかも、普通はありえないところにです。そのため手術は成功しましたけど耳は聞こえません。いや、むしろ失敗と言っても過言ではないです。本当に申し訳ありませんでした」


 執刀医の先生は光生の状態のことを事細かに説明したすぐあとに光生の家族と少女に向けて深々と頭を下げる。


「先生。頭を上げてください」

「ですが」

「大丈夫です。僕らが手話を覚えればいいだけの話ですからね。それに命は救っていただいたし一つの機能がなくなっただけで、それ以外は何も不自由がないのですから。こちらがお礼をしなければいけません。ましてや先生が謝ることなんてありません」

「ありがとう……ございます」


 先生は涙を一筋。また一筋と流しながら、お礼を言った。するとタイミングよく中からは光生が出てきた。でも、まるで死んでいるかのように眠っている。


「彼は少なくとも一日は入院をさせてくだされ」

「わかりました」


 そんな会話を交わしていると光生はゆっくりと目を開けた。彼の黒い瞳が様々な人を捉えた。だが、何かを言っているようだが全く聞こえない。いや、声だけではなく音が全て聞こえない。尋常ではない恐怖に襲われるが、無理矢理心の中に押し込む。さらに光生自身は話しているのが聞こえてないので妙な恐れが彼を捕らえる。


 どうやら聴覚が失ったようだな。でも、そんなのでもまだバスケはできる。オリンピックもある。オリンピックでもパラリンピックでもない。デフリンピックという聴覚障害者だけのオリンピックがある。それにパラリンピックとは違いデフリンピックはルールは健聴者と変わらないので俺でもできる。


 彼は自分では聞こえてないがたどたどしい言葉で家族に言った。「デフリンピックに出たい」と。その言葉に家族だけではなく言った本人以外は誰もが目を見開いていた。

はい。今回はこれで終わりです。本当に中途半端ですみません。ですが、みなさんの応援次第では続きを読めますよ。

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