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魔王様が勇者相手に活躍されるそうですよ?  作者: 月影之命
魔王様が異世界にご降臨なされるそうですよ?
2/18

2話 魔王様が閻魔様と出会うそうですよ?

 俺は登校中に出会った小夜子を突っ込んで来たトラックから救うために自らを犠牲にした。

 強い衝撃の後、俺が感じた感覚――それはまるで水の中をゆらゆらと漂うような感覚だった。

 それを感じながら俺は半場諦め気味になる。


 ああ、俺、死んだんだ――まぁいいか。

 死後の世界ってあるのかな?


 誰もが一度は考える死後の世界――俺はもしそんな世界があったとしてまた貧困層になったらどうしようなどと考えていた。

 死んだ後ですらこんな考えを抱くこと自体がおかしな話なのだが――それほどまでに死ぬ前の世界では裕福層と貧困層の差は埋められない格差としてあったのだ。

 そんな中、遠くから声が聞こえてくる。そう、それはまるで天使の声――ではなく野太い声だった。


「きて――お――きて――起きろ――起きろボケ!」


 俺は頭に鈍痛を感じ、すぐさま上半身を起こす。

 そして辺りを見回し目の前の浮かんでいる大きな影に目線をやる。

 そこには天使とは似ても似つかない――人ではない「何か」が鎮座していた。

 それを見た俺は動揺する。

 そしてふと自分がトラックに轢かれた事を思い出し、体のあちらこちらを触り始める。


「あれ? 俺は死んだんじゃ?」

「ああ――死んでるよ。お前」


 あっけらかんと言い放つ人ではない「何か」が俺の顔を覗き込む。

 その人ではない「何か」は皮膚は青色で頭には角が生えており、一目で人ではないと分かる。

 その「何か」は驚きで声が出ない俺を見て邪悪な笑みを浮かべる。

 俺はその笑みに恐怖を感じ後ずさる。


「心配するな、お前は成仏できずにこれから地獄に落ちるのだ。この私、えーと……君の世界の君の国では何と言うんだっけか? 地獄へ送る者を――」


 「何か」が片手を頭に置き何かを思い出そうとトントンと指で頭を軽く叩いている。

 俺は呆然としながら恐る恐る答える。


「し……死神? もしくは閻魔様?」

「そう! それだ。閻魔様」


 異形の者は目を見開き頭に置いていた手を俺に伸ばし指をさす。

 俺は咄嗟に「ひっ」と情けない声をあげてしまう。


「そんなに怯えないでよ」

「すみません……えっと閻魔様? でいいのかな。俺――僕は地獄に送られるんですか?」

「イエースイエスイエス、ザッツライト。君は罪を犯していない。しかしながら神から見捨てられた君は行く場所がない。そういう子は地獄で引き取られます。他に何かご質問は?」


 閻魔は軽いノリで説明しだすが、俺はそんな閻魔を見ながら何を言えばいいのか分からず少し悩む。


「ええと……まぁ天国には行く気ないんですが地獄も嫌なので消滅という選択肢とかはないんですか?」


 何を言えばいいのかわからず悩んだ末に導き出した答えだが、それを聞いた閻魔が腕を組み悩む素振りを見せる。


「君は元の世界で何かに興味を持つわけでもなくただ漠然と生き、そして死んだ。間違いないね?」

「はい」

「元の世界に未練も執着もないね?」

「はぁ」

「ん~……生きてた時すごく世界を憎んでたみたいだね」

「まぁ、そうですね」


 なんだろう、なんかバイトの面接みたいな事になってるな……。

 そう思いながら俺は閻魔の質問に答え続ける。

 閻魔はふむふむと小さく頷き、俺の方に嬉しそうな顔を向ける。


「君に提案したいんだが……違う世界で人生をやり直してみないか?」

「は?」


 俺は閻魔の言った事が理解できなった。

 そしてしばらく理解しようと頭の回転を速めるがやはり理解できない。

 「違う世界」「人生をやり直す」という言葉が俺の頭の中をグルグルと回る。

 そんな中閻魔が小さな声で「どこから説明したらいいのか」と言っているのが耳に入る。

 沈黙が数秒続き閻魔がふぅとため息交じりに口を開く。


「いや、だからね。君みたいに世界を憎む人って結構いるんだけど君は私から見てもすごい憎しみを持っている。そしてその憎しみを必要としている世界がこの世にはある! 今こそ君の隠された才能を開花させよう」


 え? 何言ってんだ、こいつ――。

 俺は胡散臭い物を見るような目を閻魔に向ける。

 閻魔はそんな俺の感情を察したかのように語りかける。


「あ~今、何言ってんだこいつって思った? そう思うよね。でも消滅って選択肢はないからさ……地獄行きたくないでしょ? ないよね! だから行っちゃおうか、別世界。レッツゴー!」


 ノリノリな閻魔に対して俺は呆れ果てる。

 そんなノリで別世界に「さぁ! 行こうか!」となる訳がない。

 俺は心を落ち着かせるために大きく深呼吸をする。


「あの……別世界に行くのはいいんですけど――また漠然と生きろって事ですか?」

「あ~それね。君にはやってもらいたいことがあるの。それを説明してくれる人物があの「VIP」って書かれてる扉の奥にいるから行ってくれる?」


 閻魔は言うと同時に一つの扉を指さす。

 そこには古びてはいるが立派な木の扉があり、その上には「VIP」と書かれたプレートが付けられていた。


「私も閻魔として地獄送りの書類整理しないといけないから、後はあそこの部屋の人達に話を聞いてね」


 すっと閻魔が立ち上がりその図体とは裏腹に忙しそうにさっき指さした扉とは別の大きな扉の方に向かう。

 閻魔が向かう先の扉の上には小さく「執務室」と書かれているプレートがあった。

 俺は少しの間戸惑ったが一人取り残され、仕方なく「VIP」と書かれたプレートの下の古びた扉に手をかける。

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