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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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ヤカミの歌舞に酔いしれた夜

ブックマークや評価ポイントありがとうございます。

とてもうれしいです!

 急いで洞窟に戻り、土魔法で封じていた扉を開けた。

 洞窟の中に入り、村人たちが避難している洞窟の奥の部屋を目指す。


「襲撃してきた敵は倒しました。村と周辺の安全も確かめてあります。集会所でキクムさんたちが待っているので行きましょう!」


 俺が声をかけると、村人たちはぞろぞろと洞窟から出て集会所に向かった。


 そして婆さんだけが残った。


「おぬしには驚かされてばかりじゃ。よう村を救ってくれた」


 婆さんが頭を下げている。


「この村では世話になったし恩返しですよ」


 苦戦することもなかったし、この程度ならなんてことはない。


「キクムさんたちが食事を用意していると思います。さあ、行きましょう!」


 婆さんは、何度も頭を下げながら、俺の後をついてきた。


 そして、集会所に着くと、キクムさんたちが炊き出しを用意していた。

 芋の汁がみんなに配られている。


「オオナムチさん」


 スセリが笑顔で手を振っている。

 その隣でヤカミがやさしくほほえんでいた。


「俺も一品ふるまおうかな」


 万宝袋(まんぽうぶくろ)から鉄板を出し、土魔法で台を作ってその上に置いた。


「ミナ、(まき)を集めてきてくれ」


「あい」


「姫様、それならこっちです」


 家臣団たちがあわててミナの後を追いかけた。


「さてと」


 万宝袋(まんぽうぶくろ)からテマで倒したレッドギガントボアの猪肉を取り出して、焼きやすい大きさに切り分けていく。

 この肉はまだものすごい量あるんだよな。


 香草と塩を練りこんで叩く。

 肉をやわらかくして臭みを取るのだ。


「あい」


 ミナと家臣団が(まき)を集めてきたので、鉄板の下に入れるように指示した。


「さあ、焼肉だ!」


 火魔法で(まき)を燃やし、熱された鉄板に猪の脂を広げた。


「うまそうな匂いだ」


 ジレが笑顔でやってきた。

 こういうときは行動が素早いんだなw


「焼くぞ」


 猪肉を焼いていく。

 ジュージューと音がして、鉄板の上を脂の玉が(おど)り跳ねる。


「婆さん!」


 俺は少し離れたところにいた婆さんを呼んだ。


「なんじゃ?」


「こういうのは年長者からだ。やわらかく焼いてあるから食べてくれ」


 婆さんの皿に、小さく切った猪肉を入れてやる。


「熱いから気をつけろよ」


「わかっとる」


 婆さんは肉を口にいれて、むぐむぐと咀嚼(そしゃく)している。

 ごくりと飲み込むと、目を大きくして言った。


「なんとうまいのう。これはうまい」


 村人たちが集まってきて、あっという間に列を作った。


「ようし、張りきっちゃうぞ!」


 よくわからないテンションになってきて、鉄板の上からも火魔法で(あぶ)って、ものすごいいきおいで肉を焼いて配った。


 みんな大騒ぎで肉を食べている。


 すると、キクムさんが一段高い台に登った。


「みんな聞いてくれ!」


 婆さんもいつの間にかキクムさんの隣に立っている。

 全員の視線がキクムさんに集中した。


「海から襲ってきたのは魚人間のフィッシュマンだ。それはすべてそこのオオナムチが倒した! オオナムチは村を救った勇者だ!」


 そう言って肉を焼いている俺を指した。


「あ、ど、ども」


 突然の紹介に、コミュ障の俺が顔を出す。

 一瞬置いてから、村人たちが大きな歓声をあげた。


「オオナムチ、こっちへ来て一言頼む。それとその姫たちを紹介してくれ」


 俺はルウに焼き肉をまかせて、スセリとヤカミを連れて台へと歩いて行った。


「みなさん、こんにちは!」


「こんにちは!」


 俺の緊張した挨拶にも、素直な村人たちは全力で返してくれる。

 こういうのは慣れてないけど、あたたかい視線に包まれて、少しずつ緊張が解けていくのを感じた。


「フィッシュマンを殲滅することができてよかったです。村を出る前に海岸のほうも調べておきます」


「村に住まないのか!」


 村人の中から声が飛んだ。


「今回は村に住むために来たわけではありません。いろいろと報告に寄りました」


 村人たちががっかりした顔になる。

 こうして好意を示してもらえるのは、照れるけどすごくうれしいものだ。


「スセリ、ヤカミ、自己紹介して」


 俺がたまらず丸投げすると、スセリとヤカミは笑顔で登壇した。


「われはワ国スサノオ大王が息女、ワカスセリヒメノミコトと申します。オオナムチ様の正妻として傍に仕えることになりました」


 村人たちはすぐには理解できなかったようで、ぽかんとした顔をしている。


「ワ国スサノオ大王の娘ぇ!?」


 いつも冷静なキクムさんが尻餅をついて台から落ちた。


「わたくしはイナバ国王が娘、八上姫(やかみひめ)と申す者です。オオナムチ様の妻になります」


 ヤカミの美しさに、村人たちは声を失っている。


「こ、これがイナバ富国の美姫、八上姫(やかみひめ)様ぁ?」


 キクムさんは顎がはずれそうなくらい口を開けている。

 族長としての知識から、そのすごさ、そして現状のありえなさがわかるのだろう。


「おい! ムイチ、どうなってる? なんだ?」


 キクムさんが尻餅をついたまま、俺に尋ねてきた。

 かなり混乱している。


「いやあ、スセリとヤカミを妻にして、次期ワ国大王になることになりました」


「ええええええええええええ!??」


「なんじゃと!?」


 これにはさすがに婆さんも驚いたようだ。


「あ、いや、次期ですし、今日は無礼講ってことで!」


 (ひざまず)こうとする婆さんたちを慌てて止める。


「まあ、そういうことでワ国内を、視察と挨拶にまわってるところなんです」


「なにが、なにがどうなった? どうなればこうなる?」


「俺にもよくわかりません」


 いやほんと、実際のところ俺も、なぜこんなことになっているのかわからないのだ。


 村人たちは、スセリとヤカミの美しさに見とれている。


「まあ、そういうことで、フィッシュマンの脅威がなくなったと判断できるまで、この村にはワ国兵士を20人ほど常駐させるように手配します。もちろん兵士たちの食料や住居などは村には負担させません。村はずれに兵舎を建てる土地を貸してください」


「な、そんなことができるのか?」


「次期大王ですから」


「そ、そうか」


 キクムさんが事態を測りきれないで、ひきつった笑顔を浮かべている。


「まあそういうことで、今日は広場で宴にしませんか?」


「わかった。そうしよう」


 キクムさんは立ち上がった。


「今夜は宴だ! 広場に酒を持って集まれ!」


「うおおおおおおおおおおお!」


 村人たちが豪快に叫んで集会所を出て行った。


「ひさびさにヤカミの歌が聴きたいな」


「ええ、いいですよ」


◇◇◇◇◇


 一時間ほど準備して、にぎやかに宴がはじまった。


「みんな、飲め! 歌え!」


 この感じ、なつかしい。

 酒と料理がみんなにふるまわれている。


「あい」


 舞台ではミナが剣舞を舞っている。


 東西南北と中央に邪魔外道を斬り祓う神聖な舞だ。

 家臣団が太鼓と鐘を叩いている。


 日が落ちて薄暗くなってきた。

 広場の中央に大きな火が焚かれ、その炎に照らされてヤカミがステージに立った。


 目を閉じて立っているヤカミ。

 その美しさに大歓声だ。


 しかし、ヤカミが目を開けて手を上げると、誰もが黙ってヤカミに注目した。


 ヤカミが舞い出すと、ゆらゆらと揺れる炎が影を動かしていく。

 幻想的な光景に、誰一人として目を離せず、声一つあげることができない。


 あふれる感動に、次の瞬間を追うのに精一杯なのだ。

 ただひたすらにヤカミに魅入られていく。


「サッ」


 掛け声とともに、ルウが太鼓を叩き出した。

 タンタタ、タンタタ、軽快なリズムを刻む。


 ヤカミが跳ねて、太鼓に合わせて動きが速くなっていく。


 天と地、その間にヤカミ、世界がここに凝縮(ぎょうしゅく)されていく。


 頭が熱くなり感動で涙がこぼれる。

 失神して倒れている者がいるが、誰一人ヤカミから目を離すことができない。


 ヤカミが歌い出した。

 歌声が魂を揺さぶってくる。


 みんな泣いている。

 泣きながら笑っている。


 いやあ、これはダメだ。

 俺も感動の海に溺れるしかない。

 俺の隣でスセリも泣いている。


 歌が終わり、ヤカミが礼をすると、地震のような大歓声がステージのヤカミに向けられた。


 これはこの村では伝説になるだろう。


 この日の宴も夜遅くまで続き、俺たちはミナの家に泊まった。

いつも読んでいただいて、本当にありがとうございます。

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