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大国主になった厨二 古事記世界でチート無双  作者: かぐけん&亜美会長
第七章 海人族とイト国の女王編
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嫉妬の海をすいすいと泳ぐよ

「とてもにぎやかですね」


 広場は活気にあふれている。

 さまざまな人種、老若男女が、それぞれの国の服装で闊歩(かっぽ)している。


 肌の色もさまざまだし、言葉も多様なようだ。

 まあ、俺は女神ツクヨミに翻訳(ほんやく)の祝福を受けているから、すべて意味がわかってしまうが、文法や口の動きで、さまざまな言語を話す人々が混在しているのが理解できる。

 スセリやヤカミはわからない言葉のほうが多いようだ。


 そんな中でもスセリとヤカミは注目の的だ。

 その美貌と身にまとう高貴な雰囲気は、人々の目を引かずにはいられない。

 うっとりとした目で見つめる男達、振り返る者、見返す者、連れがいる者は、あれは誰だとか、どこの国の姫だとか、スセリとヤカミのことを話し合っている。

 やはり姫だということがわかるんだな。


 まあ、この美貌、立ち振る舞い、身につけている衣服の仕立てのよさ、そして放つオーラは、二人が高貴な者だということを、いやがおうにも理解させてくれる。

 それにスセリもヤカミもいい匂いがするんだよな。


 二人の美姫を連れて歩く。

 みんなが俺を羨望のまなざしで見ているのがわかる。


 俺は二人に比べて、あまりにも普通な存在だ。

 身体は厨二にしては大きいほうだし鍛えられているが、美しいとはいえないし、高貴なオーラや威厳を放つことなどできていない。


 クラスでも目立たないようにしていたし、むしろ気配を消す方向でひっそりと生きてきたのだから、王者として君臨(くんりん)するよりも忍者として隠形(おんぎょう)するほうが適しているのだ。


 スセリとヤカミという美姫(びき)の従者としては気品がないし、護衛としては頼りない感じだ。

 それはとても不思議な存在に見えるのだろう。

 俺を見る人々の目は疑問にあふれている。


 あの男はなんだとか、小声で話し合っている声も聞こえる。

 異国の言葉だからわからないだろうと、あからさまに俺を罵倒しているやつらもいるが、俺は翻訳(ほんやく)の祝福で、すべてわかっているぞ。

 まあ、揉め事はめんどうだしすべてスルーするが、広場はスセリとヤカミへの賞賛と憧れ、俺への疑問と嫉妬の声で溢れている。


 まあスセリとヤカミの放つオーラがあまりに高貴なため、これほどの注目を集めていても話しかけてくる勇気のある者はいない。

 レベルが違う存在なのだ。


「織物はどうですカ?」


 それでも商人は話しかけてきた。

 ターバンを巻いた浅黒い肌の男は、地面に座り込んで目の前に赤い布を広げている。

 その布の上には、丁寧に丸められたカラフルで不思議な柄の織物が並べられていた。

 絹だろうか?

 上質な生地の衣服をまとうスセリやヤカミに声をかけてくるだけあって、すごく品質の高い織物なのが素人目にもわかるほどだ。


「どこの国の織物だ?」


 小物の俺にしては言葉使いがぶっきらぼうだが、次期大王ということで、あまりへりくだらないようにスセリに注意を受けている。


「ジダンの特産デス」


 ジダン?

 知らんな。

 スセリとヤカミも知らないようだ。


 異国との直接交易の港は、このアマ国や、今回の遠征の目的地であるツシマなど数箇所のみとなっている。

 このアマ国の広場は、ワ国でも特殊な場所になっているわけだ。


 オキ島では良質の黒曜石が採掘されている。

 黒曜石は黒く輝く硬い石だ。

 叩いて割ることで、鋭い断面を持つ破片にすることができる。

 その破片はナイフや矢じりなどに簡単に加工できるので、石器時代から縄文時代の人々に、狩猟採集生活の道具として便利に使われてきた。


 この黒曜石の産出地は多くないので、世界中の人々がオキ島の黒曜石を欲しがったのだ。 

 これは現代考古学でも何千年も前から世界中と交易をしていた痕跡が発見されていて、

オキ島が古くから海の交易の重要拠点となっていたことを示している。


 人々が欲しがる希少価値のある鉱物の産出地、そこに人が集まって交易拠点になる。

 こうしてこの目で見ると、すごく納得できることだ。


 サルタヒコ元帥が兵を率いて直接訪れていたのは、この島がとても重要な島だからだろう。


 まあ、青銅や鉄などの道具が一般化していくと黒曜石は使われなくなっていくので、そうなるとオキ島の黒曜石の価値は下がっていくのだが、日本海が交易の主役である近代までの時代では、オキ島には地理的な優位がある。

 それまでは、このにぎわいが続くことだろう。


「スセリ、ヤカミ、好きな生地を選んでくれ。二人にプレゼントしたいんだ」


「まあ、よろしいのですか?」


 スセリの顔がぱぁっと明るくなる。

 白い肌に朱に染まる頬、やわらかい微笑みと潤んだ瞳、かわいい、かわいすぎる。


「わたしはオオナムチくんに選んでほしいな」


 ヤカミが俺に寄り添ってきた。

 わずかに腕をからませる感じ、さりげなくていやらしさのない絶妙なからみ具合だ。


「わたしのも選んでいただけますか?」


 スセリも身体を寄せてきた。

 対抗意識だろうか、美少女二人に身を寄せられて俺の心臓はバクバク鳴っている。

 顔も赤くなってるだろうな、でもどうすることもできない。

 こいつらの攻撃力は高すぎるし、防御無視と貫通の特性も持っている感じだ。

 俺にはこのときめきを防ぐことはできない。


 まわりの男達が俺にすさまじい殺気を放っているのがわかる。

 嫉妬だ。

 絶世の美女と呼ばれる美姫を、両手にからませているのだから当然の結果だ。


「俺、センスとか自信ないけど?」


「オオナムチさんが選んでくれるならなんでもよいのです」


 スセリはそう言って恥ずかしそうに目を伏せた。

 なんだこれは!?

 かわいすぎるんですけど。


「ヤカミもいいの?」


「はい」


「じゃあ、これとこれを頼む」


「ありがとゴザマス」


 どちらかというと優柔不断な俺だが、叡智(えいち)の祝福の思考加速をフル稼働して、頭の中でシミュレーションを繰り返した。


 そして、スセリには赤を、ヤカミには水色を基調とした柄の織物を購入した。


「まあ、うれしいです」


「素敵な色ですね」


 二人ともとても喜んでくれた。


 俺は購入した生地をさりげなく万宝袋(まんぽうぶくろ)に収納して、店を後にして歩き出した。


 人々の視線、男達の羨望と嫉妬のまなざしの海を歩く。


 しばらくして、俺が最初に武器を買った武器屋の前に着いた。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

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