顔に刺青はないんじゃないの?
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オキの港に船を着岸させると、すぐに警備のやつらが集まってきた。
俺とスセリが先に船から降りた。
港は湾になっていて波はおだやかだ。
ミナは船を港に繋いでいる。
「見慣れない船だがどこから来た? 許可証はあるか?」
ごつい男たちが四人、まさに海の男って感じだ。
長髪にヒゲ面、顔に刺青をしている。
シャツから出ている太い肩や腕にも、藍色の文様の刺青がある。
身長も2メートル近くあるし、でかくてごつくて怖い。
びびっている俺の隣で、スセリがすっと前に出た。
「わたしはスサノオ大王が息女ワカスセリヒメノミコト、こちらにおわすのは、ワ国の次期大王となられるオオナムチ様です。アマ国王に面会の先触れを出しなさい」
スセリが威厳を込めた声で告げる。
さすが大王の娘だ。こういうことには慣れているのだろう。
「ほう」
男達はなにやら小声で相談しているが、対応が遅い。
アマ国はワ国に所属する国のはずだが、まだ所属して日が浅いことにも関係あるのだろうか?
「どうしたのです?」
ヤカミとルウが船から降りてきた。
「なんか許可証がいるとかどうとか言ってるんだけど」
「港湾の管理をしてるのはアマ国の役人じゃなくて、海人の一族なんだよ。だからワ国の名前でも簡単には通用しないんだと思うよ」
ルウが解説してくれた。
さすがオキ島民、そのあたりには詳しいようだ。
「どうすればいい?」
「わたしの許可証が使えるかも」
ルウはてくてくと男達のところに歩いて行って、懐から出した板のようなものを出して見せている。
ほどなくして男が俺とスセリの前にやってきた。
「いいだろう。船の拘留を認める。警備をつけるなら一日2万円だがどうする?」
「それでは頼む」
俺は万宝袋からお金を出して支払った。
テマのレッドギガントボア退治で稼いだ金が、まだたっぷり残っているから余裕がある。
「さて、じゃあアマ国王への謁見の先触れはどうしようかな?」
アマ国の役人だと思っていた男たちは、港湾警備をしている海人族の男たちだった。
アマ国の役人なら、ワ国連合でもあるし先触れを頼めると思っていたのだが、さてどうしたものか。
「ムイチくん、わたしが行こうか?」
「ルウ?」
「うん、わたしは里の巫女として育てられたから、使者としての作法も知ってるよ。ムイチくんの役に立てると思う」
上目使いにこっちを見るルウ、ツインテが揺れると俺の心も揺さぶられる。
計算された動き、この女あざとい・・・。
だが、そのあざとさは俺には正解だ。
もっと狙ってこい。すべて撃たれてやるぜ!
「オオナムチさん?」
「はぅぁ!」
怒気を含んだスセリの低い声に振り向くと、そこにはスセリという名の鬼がいた。
「なにをデレデレしているのですか」
「いや、違うんだ」
「なにが違うんですか」
「僕の生き方です・・」
「わかってるなら改善してください」
「はい」
スセリこええ。
泣き虫でおっとりなのに、こういうときのスセリはこわすぎる。
スサノオ大王の血を引いていることを、再確認できる瞬間だ。
こういう瞬間はなるべく遠慮したいものだ。
「それじゃあミナも護衛としてついていってくれるか?」
「あい」
「ミナちゃんいこ」
「あい」
いつの間にかルウとミナはなかよくなっている。
ミナがてくてくと歩こうとすると、男の一人が驚いて声をあげた。
「ちょっとその剣を見せてくれ」
男が血相を変えて、ミナの剣をくいいるように見つめている。
柄の部分の紋章のようなものを見ると、ミナに向き直った。
「タケミナカタ!? タケミナカタ様?」
「あい」
ミナってどんだけ有名なんだよ。
スサノオ大王の娘であるスセリ、イナバ国王の娘であるヤカミ、そして次期大王である俺が形無しだ。
「失礼しました。お通りください」
男たちの態度があきらかに変わった。
そして、ルウとミナについて行ってしまった。
「なんなん?」
「さあ、どういうことなのでしょう?」
「スセリはミナのこと知らないの?」
「わたしは城で育てられたので、城の外のことには疎いのです」
スセリは箱入り娘のようだ。
「聞いたことがあります」
ヤカミが口を開いた。
「古い海の民をムナカタというそうです。ミナさんはその一族なのではないでしょうか?」
ミナは出雲東王家の娘で、事代主であるヤエの妹だと聞いている。
つまり、出雲東王家が海の一族だということなのだろうか?
たしかにヤエは海のことに詳しかった。
まったく、この世界ではわからないことだらけだな。
「まあ、また聞いてみよう。先触れが届くまで、広場で時間をつぶそうか」
「はい」
俺とスセリとヤカミは、連れ立って広場に向かった。
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