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究極の選択に俺が出した結論

ブックマークや評価ポイントありがとうございます。

とても励みになっています。

 広い部屋の中央で俺は正座させられている。


 なんかもうこのシチュエーションに慣れてきたダメ人間な俺がいる。


 俺の正面には、ホヒとカワイキュンが並んで座っている。

 裁判官って感じかな。


 もちろん俺が罪人ね、自覚してるからそれ以上は言うな。


「オオナムチくん、それでは話を聞かせてもらうよ?」


「はい」


 うつむきながら返事をする俺。


 ホヒは俺の配下だが、元はと言えば天照大神の勅使(ちょくし)としてイズモにやってきた神だ。

 国譲りの勅使という重要な任務に抜擢されるだけあって、エリート中のエリートであり有能な男だ。


 現代でいうとエリート外交官って感じかな?

 いや、むしろ外務大臣か。


 先程ついにヤカミとスセリとの重婚問題が発覚し、その裁定を頼むことになったのだ。


 問題はこじれまくっている。


 俺にはヤカミとスセリの顔を見る勇気が無い。


 クマノからノキまでの道中は、勝ち目の無い戦いに(おもむ)く戦士、いや、追い詰められて逃げ場を無くし自首しようとしている犯罪者のような気持ちだった。


 そして今まさに裁かれようとしている。


 いやあ、問題を先送りしてきただけあって、すごく大きな爆弾に育ってたよマジ死にたい。


 俺の右側の机にヤカミが座っていて、左側の机にスセリが座っている。

 ヤカミは静かに俺を見据えていて、スセリはひたすら泣いている。


「それでは参考人を召致(しょうち)させてもらう。オオナムチくんいいね?」


「はい」


 まだ誰か呼んであるのか、敵か味方か、果たしてどっちだ?

 まあもうどっちでもいいけどな。


「御館様の負けです」


 扉を開けるとともに一言で俺の状況を示したのは、コトを知る神として事代主(ことしろぬし)の名を持つヤエだ。


 ぐうの音もでねえ。


 青い髪、そして自己主張の激しい攻撃的な胸、死刑になるならその胸で挟んで執行してほしい。

 いや待て、現実逃避でおかしくなってるぞ俺。


 俺がヤエの胸に気をとられていると、泣いているスセリの殺気が一段上がった気がした。

 気をつけろ俺、今は死線を綱渡りしている状態なのだ。

 まあ、気をつけたところで死ぬだろうけどな(自滅


 ヤエはイズモ副国主だし、スセリ派なのかな?


 続いて扉から入ってきたのは意外な顔だった。


「ムイチくん、なぜヤカミちゃんを裏切ったの?」


 ツインテールにアイドルっぽい顔立ち、オキ島の村の巫女ルウだ。


 答えられない質問はやめてくれ・・・。


 このために呼ばれたのだろうか?

 なつかしい再会は最悪のシチュエーション、ピンチのバーゲンセールかよ。


 ルウの表情を盗み見ると、俺を責める気満々の目をしている。

 ヤカミとは仲がいいみたいだから、ルウはヤカミ派なのかもしれない。


「それでは裁判をはじめる」


 ホヒが裁判官モードに入ったようだ。

 厳しい表情になった。


「まずはヤカミ姫に問う。被告人オオナムチは、イナバ国で開催されたヤカミ姫主催の婚活パーティーにおいて、国王立会いのもと衆目の前でヤカミ姫との婚姻に同意したことに間違いはないか?」


「間違いありません」


 ヤカミがはっきりとした声で言い切った。

 ルウもうんうんと強く頷いている。


「続いてスセリ姫に問う。被告人オオナムチよは、クマノの天宮山(てんぐうさん)山頂に浮遊する天鳥船(あめのとりふね)玉座の間にて、ワ国スサノオ大王および武官文官の集う前でスセリ姫との婚姻に同意したことは間違いないか?」


「間違いないです」


 スセリが泣きながら答える。

 ヤエが背中をさすっている。


 俺の悪者感がすごい。

 猛烈な勢いで上昇中だ。


「オオナムチよ。間違いはないか?」


 くそう、間違いであってほしいが間違いない事実だ。

 むしろ間違っているのは俺の生き様それだけなのだ。


「間違い・・・ありません」


 あがきようもないので素直に認めた。


 静寂、あきらめのムード、俺の有罪は確定した。


 なるべく苦しまないように殺してほしい。

 来世では誠実に生きようと思った。


 その時、入り口の扉が勢いよく開いた。


「あたしを抜きで面白いことしてちゃダメでしょ?」


 ヒナだ。


 牢に入れたはずだが、どうやって出てきたのだろう?


「おや? ヒナか?」


 ホヒが驚いた顔をしている。

 そういえばヒナは高天原から来たって言ってたから、ホヒと面識があってもおかしくないな。


「あれ? パパ」


「なんですと!?」


 ヒナってホヒの娘なの?


「みなさん、裁判の途中申し訳ない。我が娘、武夷鳥命たけひなどりのみことだ」


 なんだって?


 武夷鳥命たけひなどりのみことは、別名を稲背脛命(いなせはぎのみこと)として、神話の国譲りの仲裁を成した神だ。


 神話では、建御雷神(たけみかづちのかみ)が国譲りの使者として現れたとき、国譲りの決断に迷う大国主命に、御子神である事代主命の意見を聞くように進言し、自ずから美保の岬にいる事代主命を呼ぶため、諸手船(もろてぶね)に乗って向かう神である。


 その武夷鳥命たけひなどりのみことがヒナなのか?


 ひょっとして仲裁の神として、この場を収めてくれるのか?

 ついつい期待してしまう俺がいる。


「パパ、あたしこの人に(とつ)ぐことにするから」


「な!?」


 期待した俺がバカだった。

 仲裁どころかむしろ破壊にきやがった。


 その場の全員が絶句している。


「ヒナ、何を言ってるんだ? この男は同時に二人の姫を(めと)ろうとした悪党だぞ?」


 ホヒ、たとえ事実だとしても、もう少しオブラートに包んでくれ。

 コミュ障厨二の俺に、それはダイレクトすぎる指摘だ。


 しかし、ヒナはむしろ笑顔になった。

 

「ワ国の姫とイナバ国の姫を同時に娶ろうとしたんでしょ? ものすごい器じゃない。この人は何者なの?」


「ワ国スサノオ大王の後継とされているオオナムチだ。わたしも今は配下として仕えている」


「ほら、すごい人じゃない。パパが仕えるなんて、そんな人って何人(なんにん)もいないでしょ? あたしはお金持ちに嫁いで、好きなだけ研究に没頭したいのよ」


 金目当てかよ・・・。


 まあ、騙そうとしてくるよりは正直で好感が持てるが、正直すぎるのもどうかと思う。

 ホヒもあきれた顔で言葉を失っている。


「あなたなに言ってるの?」


 ヤカミが立ち上がって怒っている。

 隣のルウも立ち上がった。


「そうです。場をわきまえてください」


 スセリが同調した。


「あなたたち二股かけられてて怒ってるんでしょ? 別れなさいよ。この人はあたしがもらうから!」


 いや、ヒナさんとやら、俺はモノじゃねーから。


「それとこれとは話が違います。オオナムチくんはわたしと結婚するのです」


「何を勝手なことをおっしゃるのです。オオナムチさんはわたしを正妻として、ワ国大王となられるお方なのです」


「ふーん、で、あんたはどっちの姫を選ぶの?」


 ヒナがいきなり俺に矛先(ほこさき)を向けてきた。


 ごまかし避け続けてきた主題が、いきなりドガンと叩き込まれた感じ。

 ヤカミとスセリはもとより、この場にいる全員の視線が俺に集中している。


「どっちを選ぶのですか?」


「わたしを選びますよね?」


 ヤカミとスセリが俺に問う。


 マジで俺ピンチ!


 いやな汗が全身から噴出している。

 心臓はバクバクと早鐘のようだ。


 ヤカミを見る、スセリを見る、下を見る。


 震える足と床が見えた。


 これは無理だ。


 選べるわけがない。


 俺は暗黒面に堕ちた。


 限界を超えた緊張と思考で、俺はあらぬ言葉を発してしまった。


「両方」


「え?」


 ホヒが間抜けな声を出した。


「ヤカミとスセリの両方」


「ええっ!?」


 ルウが叫んだ。


「両方娶る」


「ええええええええええええええ!?」


 部屋にいる全員が驚きの声をあげた。


 ルウが目を見開いて、最低だとつぶやいている。


 ああ、俺は最低な男だ。


 ヤカミとスセリの二人を手に入れられるなら、どれだけ罵られてもかまわないぜ!


「オオナムチくん?」


「はい」


「オオナムチさん?」


「はい」


「あはは、面白いわね。パパ、やっぱりこの人面白いわよ。わたしも嫁ぐからね」


「はい」


「じゃあ、わたしも嫁ぐ」


「はい」


「御館様、わたしもよいですね?」


「はい」


「師匠」


「はい」


「おねえさんもいいかしら?」


「カワイキュンは無理」


 それはカオスだった。


 そして活動限界を超えた俺は意識を失って倒れた。

読んでいただいてありがとうございます!

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