恋の衝撃はガキン?
イビシを制圧した俺たちは、スサノオ大王に報告に戻ることにした。
ここイビシはもともと人が住んでおらず、黄泉から溢れ出たという炎の兵を鎮圧した後は、とくにすることもないからだ。
「黄泉ってなんなんだろうな?」
「父なら知っていると思いますが、わたしにはわかりません。申し訳ありません」
スセリがすまなさそうに目を伏せた。
「いや、いいよいいよ。そのうちわかるだろうし。ところでヒナって何者だろう?」
ヒナは俺たちの後ろのほうで、手を拘束されたまま歩かされている。
しかし、表情はリラックスしていて、心臓が強いのだなと感心させられる。
「学者でしょうか? 労働の手ではありませんでした」
「たしかにな。ヤエあたりと組ませたら面白そうだ」
「まだ味方になると決まったわけではありませんよ」
楽天的な思考をスセリにたしなめられた。
たしかに得体が知れない出会い方だもんな。
高天原から来たと名乗ったから、ホヒに聞いてみればわかるだろうか。
それからは何事も無く、半日ほど歩いて昼下がりにクマノに帰ってきた。
スサノオ大王に戦果を素早く報告するため、昼飯は抜いて歩きっぱなしだ。
天鳥船が浮かぶ天宮山のふもとに着いた俺たちは驚愕に声を失った。
「あれ? 無いぞ?」
天鳥船が無い。
天宮山の山頂に浮かんでいるはずの天鳥船の姿が無いのだ。
「おーい、ムイチ!」
すると、天宮山のふもとに一団がいて、そこから大きな声で俺を呼んで手を振る影があった。
「天冬衣さん!?」
「おーう」
短い髪にくしゃくしゃの満面の笑顔。
北島○朗にそっくりな天冬衣は、イズモ国の国主だ。
また天冬衣の歌が聴きたい。
「スサノオ大王は遠征に出たぜ」
「え? 急にですか?」
「ああ、どこに向かったのかはわからねえ。ムイチ、おまえにワ国と娘はまかせるってよ」
「なんですと!?」
突然すぎて面食らってしまった。
スセリを見ると目を伏せて首を振っている。
「父にはいつものことです・・・」
突然にいなくなるのは、いつものことらしい。
武官を連れてどこかに遠征に出たようだ。
天冬衣さんと一緒にいる一団は、ワ国統治の文官のみなさんらしい。
君臨するとも統治せず、スサノオ大王は基本的にやりたい放題で、後処理は文官などが行っているようだ。
ちょっとウケルね。
まさに暴君の鑑だ。
印象そのまんますぎて逆に好感度が上がった。
「おっと!?」
なんて思っていたらスセリが泣いている。
「なに? どうした?」
美少女の涙とかやばいって。
コミュ障厨二の俺にどうしろと・・・?
助けを求めてまわりを見回すが、あからさまにみんな目をそらしてやがる。
こいつら・・・覚えてろよ。
って、天冬衣さんもかよ!?
年長者助けろよおいwww
「式は・・・?」
「え?」
「結婚式はどうなったのでしょうか?」
スセリ号泣、大きな瞳から涙がポロポロこぼれている。
スサノオ大王の遠征で、俺との結婚式が延期になったと思って泣いているようだ。
スセリかわいい。
「あぅあ」
かわいすぎて思わず変な声が出た。
スセリがあまりに可愛すぎる。
胸がキュンキュンって聞いたことあるけど、これはそんなもんじゃねえ。
ギュンギュンってか、グォングォンってか、痺れるとか雷に撃たれたようだとか言うが、なんかわかる気がする。
「ぐはっ!?」
ほら、ガキンって頭に衝撃がきた!
鈍器で力いっぱい殴打されたような衝撃。
これが恋か!?
恋ってマジで衝撃的なのな。
「ぐおっ!?」
恋ってすげえ!
目から火花が出そうだ。
ほら、二発目・・・って、あれ?
二発目?
振り返るとそこには・・・
鈍器を振りかぶったヤカミ姫様が立っていた。
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