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ヤエの持つ凶器

ブックマークありがとうございます!

とてもうれしいです。

 あれから二週間、ノキの町の開発は順調だ。

 住宅も仮設からきちんとしたものへと置き換えているし、道路も整備している。


「冬に向けての食料の備蓄が重要だな」


 あと三ヶ月ほどすると冬になる。

 外国から食料を輸入したり、ビニールハウスや植物工場での水耕栽培によって、一年中どんな食べ物でも食べられる現代日本と違って、この古代世界での食料事情は過酷(かこく)なものだ。


 また、冷凍庫や冷蔵庫もないのだから、食料の保存方法から考えなければならない。


 とりあえずは秋には常温で保管できる穀物が収穫できるだろうし、山では、どんぐりや栗などの木の実の採集ができるだろう。


 ちなみにどんぐりや栗は、計画的に植林をしているらしい。

 古代って自然のものを食べていると思っていたけど、栽培や植林の技術は思った以上に発達している。


 まあ生死に関わることなのだから当たり前か。

 人は食わないと生きていけない。

 食料の生産を計画することは、最優先される事柄なのだろう。


 そして、ヤエにはミホで、漬物と魚の塩漬けの生産をはじめてもらった。

 冬に向けて保存食を用意するのだ。


 塩は交易でどこからか買っているようだが、なるべく早くミホなどで自給できるように改善していきたい。


 俺の指示する技法や技術は、ヤエですら聞いたことのないものが多かったようだが、そこはさすがにすべてを見通すという事代主(ことしろぬし)だ。

 簡単な説明をするだけで、完璧に理解してしまう。

 むしろ、応用した技法などを提案してきたりして、本当に有能なのだと驚かされた。


 ヤエは事代主であるとともにイズモ国副国主の少名彦(すくなひこ)だ。


 神話では、少彦名命(すくなびこなのみこと)として、大国主命(おおくにぬしのみこと)とともに国造りをしたという神話が伝わっているが、それも素直に(うなず)ける有能さには、賞賛(しょうさん)の言葉しか浮かんでこない。


 青いショートカットの髪にシャツとショートパンツのスタイルは、少年のような軽快な印象を与えてくれる。

 簡潔に要点を述べる口調は、さっぱりとして男性的ですらある。


 しかし・・・


 しかしだ。


 一部分だけそうではないところがある。


 ヤエは爆乳なのだ。


 ボーイッシュで知的なヤエは細身なのに爆乳だ。

 そのギャップとアンバランスさは、魅力を増大させる結果になっている。


 これはもはや凶器ですらある。

 気にしないようにしているが、どうしても目を奪われてしまうのだ。


 いったいこの豊満な物体には、何が詰まっているというのだ?

 魅了とか誘惑の魔法術式でも組み込まれているんじゃないだろうか。

 どうにも抵抗(レジスト)できない、この湧き上がるやましい感情はなんなのだ?


 いけない、俺の妖精力(フェアリーパワー)が低下させられている。

 まさか、ヤエは魔物なのか?

 このふたつの豊満な物体には、どれほどの破壊力があるというのだ?


「御館様、聞いておられますか?」


「あ、は、はい! 聞いてます」


 軽くトリップしていた俺は、ヤエの言葉で我に返った。


 おっといけねえ、言ってる(そば)から目を奪われていたぜ。

 スセリを鬼にさせないためにも、ヤエとの距離感には気をつけなければならない。


「はうあ!?」


 そう思って隣のスセリを見た俺は、戦慄(せんりつ)におののいた。


 そこには静かに(たけ)る鬼がいた。


「オオナムチさんは、大きいのがお好きなのでしょうか?」


 スセリがとくに胸が小さいわけではない。

 俺の目測ではCカップはあるだろうし、むしろなかなかのものだ。


 しかし、ヤエは相手が悪い。

 何カップだとか、そういうのはもうわからない。

 スイカがふたつ胸についている感じなのだ。


 スセリはじと目で威圧を増してきた。


「いや、違いますよ。そういうのではないっす」


 ホント、こういうときのスセリはおそろしい。

 スサノオ大王の息女だということを、いやというほど実感させてくれる。


 ヤエはきょとんとした顔で首をかしげている。


 こういうことには智慧(ちえ)がまわらないのだろうか?


「まあいいです。午後からは父に呼ばれていますので、そろそろ向かいましょう」


「え? スサノオ大王に?」


「はい、婚姻のことかもしれませんね。結婚式の準備が整ったのかもしれません」


 スセリの顔がぱぁっと明るくなった。

 花が咲いたような笑顔だ。


 機嫌がなおったのはうれしいが、スサノオ大王との謁見(えっけん)にはテンションが下がる。

 だって、あの人ってひたすら怖いんだもん。

 配下の武官や文官の人たちって、毎日あの威圧にさらされながら、よくやっているものだと感心させられてしまうよ。


 スサノオ大王をたとえるなら、いつ発砲するかわからない安全装置のついていない拳銃か、いやそんなもんじゃないな。

 むしろ、核爆弾、そう抜き身の核爆弾だ。

 なにが抜き身なのかわからないが、いつ爆発するかわからない核爆弾のような怖さがある。


 いつでも終わりにできますよ、みたいな感じの異次元の恐怖だ。


 正直なところ行きたくない。


 でも呼ばれているならば行くしかないのだ。


「じゃあ行ってくるよ。ヤエ、しっかり頼むな」


「わかりました御館様(おやかたさま)


 俺はスセリとともにスサノオ大王と謁見(えっけん)するため、クマノの天鳥船(あめのとりふね)に向かった。

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