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さあ町を作ろうよ

「ミナ、この柱をあの礎石(そせき)の上に立ててくれ」


「あい」


 ミナが5メートルの巨大な柱を、軽々と持ち上げて礎石の上に乗せる。

 轟音が響いて地面が震える。


 あいかわらずとんでもない働きっぷりだ。

 幼女が巨大な柱をほいほいと運び地面に突き立てる様は、シュールで衝撃的な光景だ。


 夏の日差しがギラギラと俺たちに照りつける。

 俺は額の汗をぬぐった。


「オオナムチくん、突然の大口注文には慌てたけど、どうだいオオヤビコ商会の実力は?」


「思っていた以上ですね。まさか、注文の翌日に届くなんて驚きました」


 英雄イタケルは大量の木材を納品し終えて、満足そうに笑っている。


 あれから三日間、俺たちは昼夜を徹して作業をしている。


 ミホの岬でのホヒたちとの国造り会議の翌日、俺たちはイズモ国王都であるオウの町で天冬衣(おやじ)さんに状況(じょうきょう)を報告した。


 ホヒが配下になったこと、職人や兵士を含む3万人が国造りに従事(じゅうじ)することを告げると、天冬衣(おやじ)さんは絶句していた。


 この時代の人間はとても貴重だ。

 医療が発達していないことや栄養の不足もあって、出産は母子ともに命がけだ。

 また、産まれてきても、成人まで生きることができるのはたったの2割程度なのだ。


 人口の増加は国力増強に直結する。

 その意味では3万人の成人男女、しかも職人や兵士など有能な者が増えるということは、それはもうとてつもないことなのだ。


 しかし、そこで天冬衣(おやじ)さんは困ってしまった。

 そもそも人口というものは、突然に増えるものではない。

 住居はもちろんとして暮らせる仕組みが必要になる。


 オウの町にもイズモ国にも、3万人もの人間を突然に受け入れるほどのキャパが無いのだ。


 困惑する天冬衣(おやじ)さんに、俺はある提案をした。

 そう、新しい町を造るというものだった。


 そして、俺はオヤジさんから資金提供を受けて、新しい町造りをはじめている。


 イズモ国とホウキ国を結ぶ街道沿いの広大な土地を開拓し、国造りの雛形(ひながた)となる新しい町を造ることにしたのだ。


 場所はオウから程近い平野で、現代でいうところの島根県安来市能義の一帯だ。


 俺がここに城を築いて町を造ると言うと、天冬衣(おやじ)さんは、野の城ということで野城(のき)の町と名付けてくれた。


 俺はすぐさまホヒに連絡して2万人を呼び寄せた。

 残りの1万人は、ヤエの統制で港湾開発をしてもらうことにした。

 図面は俺が描いた。

 まずはミホの岬の港の拡張と、次に現代でいうところの安来港の整備をしてもらうのだ。


 そして、ムル教官に住居等の建築木材の調達、スセリに鉄の道具の調達の仕事を割り当て、それぞれに人員を振り分けた。


 俺とミナとホヒは最優先である住居の整備のため、6000人の土木建築の職人たちとともに作業をしている。


 さきほどミナが柱を立てたのは、このノキの町の中心に建築中である城の大黒柱だ。

 この城を拠点として、ノキの町を発展させていく予定だ。


 城のまわりには、長屋風の仮設住宅を建てた。

 当座の間に合わせだから、冬が来る前にきちんとしたものに建てかえていこうと思う。


 俺は土魔法によって基礎などの土木工事を行い、風と火の魔法で建築用の木材を乾燥させた。

 普通は何年も乾燥させてから建築用木材になるので、魔法による時間短縮はものすごい効率化だろう。

 職人たちが目が飛び出すくらい驚いていた。


 そして、ミナはまるで重機のような働きだった。


 鉄で巨大なソリを作ってやると、山や川から巨石を積んで引いてきて、俺の指示に従って礎石(そせき)として大地に埋め込んでいった。

 まさに1000人力って感じ?

 ダンプカーとパワーショベル、そしてブルドーザーのような働きだ。


 ムルさんも愛用の斧で木材を次々とカットしている。


 今はまだ水が引かれていないが、町の地下には下水を整備しておいた。

 水田の用水の整備と合わせて、数日中には川から水を引いてくることができるだろう。


 一定区間ごとに井戸も掘った。

 山や川が近いからか、水量も豊富で清らかな水が湧き出した。


 作業は(はかど)っている。

 夕方までには、とりあえず雨風が(しの)げる長屋が完成し、町としての体裁(ていさい)が整うと思う。


 一息つこうと考えていたら、スセリが歩いてくるのが見えた。


「オオナムチさん、国主と父にも相談して、製鉄の拠点を設置しました。600人が従事します。また、鍛冶場の整備は明日には整うでしょう」


「そうか。ご苦労だったな。では、休憩にしよう。お茶を用意するよ」


 作業している皆を集めて、休憩することを告げる。

 作業員たちは、それぞれが竹を切って作ったコップを持っている。


「さあ、冷たいお茶だ。順番に並んで飲んでくれ」


 俺は巨大な桶にパイプをつけて開け閉めする仕組みを作り、そこからお茶を注ぐことができるようにした。

 パイプは10箇所付けてあるので、一度に10人がお茶を注げるのだ。


 魔法でお茶を凍る寸前まで冷やし、さらに氷も入れておいた。


 暑い日差しに焼かれて消耗していた作業員たちも、冷たいお茶を飲んで人心地ついている。

 俺もスセリにお茶を注いでやった。


「冷たくておいしいです」


 スセリがうれしそうに微笑んでいる。


 ミナがやってきたので、ミナにも注いでやった。

 一息に飲んだので、おかわりを注いでやった。

 ミナって身体が小さいのに飲み食いは大人顔負けなんだよな。

 そういえば酒も異常に強かったな。


「ホヒ! どこだ?」


「ぼくならここだよ」


 ホヒはすぐ近くにいた。


「ちょっとミホに行ってくる。ここはまかせていいか? スセリとミナは仕事を続けておいてくれ」


「ぼくにまかせてくれよ」


「わかりました」


「あい」


 思ったより作業が(はかど)っているので、俺はミホの岬で港湾構築をしているであろうヤエのところを見に行くことにした。

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