第七話 定住と修行で現代日本人の凄さを知る?
洞窟を出て村に戻ると、広場で大きな火が焚かれていた。
大勢の村人が集まっていて、にぎやかな声がしている。
村人たちの中にルウを見つけた。
「なにしてるの?」
近寄って声をかけると、少し驚いたように振り向いた。
「あ、オオナムチさん」
「ムイチでいいよ」
「ムイチ?」
「うん」
「じゃあムイチくんね」
ルウがにっこり笑う。
アイドル系の笑顔にちょっとドキドキしてしまった。
これから、巨大カニを焼いて村人たちにふるまうらしい。
ダイナミックな焼きガニだな。
その隣では、大きな甕でカニを煮ているようだ。
カニ汁か。すごくいい匂いがしている。
「どうぞ」
ルウがカニ汁をもらってきてくれた。
「うまい」
カニしか入ってない感じだけど、濃厚なうまみがある。
ルウは猫舌なのか、フゥフゥと息を吹きかけて覚ましている。
ピンク色の唇にドキッとして、俺はあわてて視線を逸らした。
「オオナムチよ」
村長のキクムさんがやってきた。
「婆様のところは終わったのか?」
「はい。明日の朝また来いと言われました」
「そうか。ちょっと来てくれ」
キクムさんに着いていくと、櫓の上に立たされた。
俺とキクムさんに村人たちの注目が集まる。
普段は仕事に出ている人たちも全員集まっているようで、100人くらいいるようだ。
ちょっと緊張するな。
「みんな聞いてくれ。マレビトのオオナムチだ。この巨大ガニを仕留めた勇者だ」
「おおお」
村人たちから大きな歓声が上がった。
「わたしの矢は弾かれてまったく効かなかった。オオナムチは石斧で殴りかかり、折れた柄を突き刺して、瞬く間に仕留めた。オオナムチがいなければ、この巨大ガニは倒せなかっただろうし、谷での犠牲者はもっと増えたはずだ」
「うおおお」
さらに大きな歓声。
賞賛の声がそこかしこから聞こえてくる。
こういう扱いには慣れてないし、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「オオナムチはマレビトであり勇者だ。その力は村に恵みをもたらすだろう」
群集の中から、ルウがキラキラした目でこっちを見ているのに気づいた。
子供たちが手を振ってきた。
俺はどうしていいかわからず、かなりキョドっている。
「オオナムチは遠い国から来て家が無い。わたしはオオナムチに、この村で暮らしてほしいと思っている。みんなどうだろうか?」
「うおーーーっ」
さらに大歓声だ。
そして嵐のような拍手が広場を覆いつくした。
俺が村で暮らすことについては、ものすごく歓迎されているようだ。
なんだかうれしいね。
「いいだろう? オオナムチ」
キクムさんが俺に言った。
とても断れる雰囲気じゃないな。
まあ、住む家も無いし、今のところ断る理由がないけどね。
むしろ、願ったり適ったりって感じで、とてもありがたいことだ。
「ありがとうございます」
俺はキクムさんに答えると、右手の拳を突き上げて、村人たちの歓声に応えた。
「うおおおおおお!」
人生ではじめての大歓声に包まれて、居心地は悪くない。
その後は、暗くなるまで宴が続いた。
ルウはずっと俺の隣にいてくれて、いろいろと世話を焼いてくれた。
俺は女子は苦手なのだが、ルウはなんだか付き合いやすい。
「ありがとうな」
村人たちが代わる代わるやってきて、何度もお礼を言われた。
俺は小さく会釈を返した。
照れくさいけれど、こうして感謝されるのはうれしいものだ。
「オオナムチよ! 呑め」
果実酒のようなものもふるまわれた。
未成年なのにいいのかなと考えたが、まあ異世界っぽいし断るのもアレなので、ありがたくいただいた。
すごく強い酒をたくさん飲まされたが、体力の祝福の効果で酒にも強くなってるようだ。
少し気持ちよくなったくらいで、とくに酔うことはなかった。
みんなとても楽しそうだった。
いろんなことを聞かれて、それに答えた。
やがて夜が更けて、少しずつ人が減っていって、そして宴が終わった。
村はずれの小屋が正式に俺の家になることが決まって、俺は小屋に戻ってしあわせな気持ちで眠った。
◇◇◇◇◇
翌朝起きて婆さんのところへ行くと、魔法をおしえてくれるとのことだった。
はじめに癒し手の魔法をおしえてもらったが、すぐにできてしまってびびった。
ルウも一緒だったのだが、すごく驚いていた。
婆さんは複雑な表情で、ぶつぶつと言っていた。
こんなに簡単にできるものではないらしい。
婆さんの魔法は、鬼道というものらしい。
木火土金水を五行と言い、世界はそれらのマナで満たされているという。
その流れや働きを操って、特定の現象を起こす技を、魔法と呼んでいるらしい。
「木火土金水がどういうことかわかるか?」
婆さんが聞いてきた。
「いえ、わかりません」
「人が生きることそのものじゃ」
「生きる?」
「木を燃やして火を起こし、土の竈に金属の鍋で煮炊きをする、これが木火土金水の働きじゃ。わかるか?」
「なんとなくわかります」
それぞれの作用のことなのかな。
まあ、たしかに、そのままでは食べられない食材でも、煮炊きをすることで食べられるようになるものは多い。
木火土金水の働きは、人間の暮らしに密接に関係してるわけだな。
あらためておしえられると、なんだかとても感心してしまった。
そういえば、古代日本の世界観で魔法とかマナとか、おかしいと思う人もいるだろう。
俺も最初はそう思った。
しかし、これらの用語については、俺の祝福のひとつである翻訳によって変換されているのだ。
おそらく本当は違う言葉で、俺の知っている似た意味の単語に置き換えられているっぽい感じだ。
まあ、大事なのは意味がわかることなので、あまり深く考えるのはやめておこう。
「他の者に習えば、また違うおしえがあるじゃろうて」
婆さんによると、魔法を使うにあたって、どうも定まった規格のようなものは無いらしい。
いろんな人がいて、いろんな魔法を使うって感じか。
まあ、ゲームじゃないんだから、それが自然なんだろうな。
これは仮説だが、魔法とはイメージ力なんじゃないだろうか。
イメージしたことを、魔力で実現しているような、そんな感じ?
俺は魔力が強いから、ゴリ押しでいろいろと実現できてしまっているような気がする。
現代物理学でも超ひも理論とか量子力学とかそんな感じだよね?
そう考えると現代日本人というのは、とても優れた存在だと言える。
なぜならば、現代日本には、さまざまなイメージや現象があふれているからだ。
必然的にイメージ力が高くなるわけで、つまり魔法を使うのに有利になるわけだ。
しかも、俺はオタク系でアニメやゲームの知識は膨大にあるわけだし、そう考えると俺のイメージ力が高いのは当然と言えた。
「ムイチくんて本当にすごいんだね」
「おぬしは本当に破格じゃのう・・・。わしの修行人生がなんだったのか、むなしくなってくるわい」
二時間ほどの講習と練習で、俺は木火土金水と癒し手の魔法を、ある程度は使えるようになっていた。
ちなみに、小さな炎を出すのに使うMP消費は5くらいだ。
しかも瞬時に回復してしまう。
俺のMPは2600もあるわけだから、はっきり言って使い放題だ。
癒し.手については、自分の腕を石で傷つけてみて実験したが。
骨が見えるようなケガでも一瞬で治った。
しかも傷口に手をかざさなくても、問題なく治すことができた。
まあ、手をかざしたほうが治るのが早かったが、これはイメージ力の問題かもしれない。
ヒールって叫びながらやったら、もっと早く治る気がする。
まあ、これはまた一人の時に試してみよう。
修行を終えた俺は、洞窟を出て村に向かった。
なるべく毎日更新できるようにがんばってみるつもり!