試合に出てないのにゴール決めた感じ
スサノオ大王は玉座に屹立し、スセリを見下ろして告げた。
「葦原醜男よ上手し、その請いを許そう」
「オオナムチ様の妻となることを認めてくださるのでしょうか?」
スサノオ大王は、スセリの目を見て、しっかりと肯いた。
試練を乗り越えてみせた俺を認めてくれたということだろうか?
「葦原醜男よ!」
「は、はい」
この人、声でけぇ。
いちいち怖いのはやめてくんないかな。
なんで常時、膨大な魔力と殺気をまとってるんだろう。
さっきは、いきなり矢とか撃ってきたわけだし、向き合うだけで常時、緊急事態なんだけど・・・
てか、さっきからハッチが血だらけで空気だな。
まあ、ハッチなら大丈夫か。
「我が娘を正妻として迎えよ!」
む、結婚の許可きた。
父親公認というか、むしろ強制ですね。
スセリが頬を紅潮させながら、俺のほうをチラチラと見ている。
感動してるんだろう。まばたきが多い。
長いまつ毛がパタパタしている。
やばい、超かわいいんだけど。
まあ、スセリは超ストライクだし、この二日間いっしょにいて、とても相性がいいのもわかった。
願ってもないことなのだが、うまい話すぎて信じられない。
14年間、自然体に孤独を満喫してきたコミュ障の俺が、いきなり結婚とかありえなさすぎて実感も沸かない。
恋愛をする前に、いきなり結婚なのだから、心の準備も決心する時間もなく、結論だけ突然に突きつけられた形になるんだぜ?
引き篭もりのコミュ障が、大王の娘の美人さんといきなり結婚って、ドッキリとかでもありえなさすぎてやらないシチュエーションでしょ。
父親がやばすぎるが、それを忘れそうになるくらいにスセリはかわいい。
それと、俺は気づいてしまった。
スサノオ大王は『正妻』に迎えよと言っている。
妻ではなく正妻に迎えよと言っているのだ。
これがどういうことかおわかりだろうか?
正妻ということは、他にも妻がいるということなのだ。
少なくとも二人以上の妻がいるから、正妻という立場になるのだ。
ヤカミと結婚することが決まっている俺は、その問題について先送りにしていたのだが、ここにきて問題が解決した感じだ。
どうやらこの世界では一夫多妻制のようだ。
つまり、ハーレムオッケーってことなんですよねそうですね?
幸福ゲージがはちきれんばかりで、思考もめちゃくちゃになっているが、女子の友達すらいなかった俺が、わずが数日で美人の妻が二人になりそうだってこと、これがどれだけの奇跡で、どれくらいありえないことか考えてみてもらえないだろうか?
サッカーの試合で表現すると、補欠で試合に出ていないのに、なぜかハットトリックが決まってしまったみたいな、それくらい意味わからない状態なんだよ。
いや、むしろ俺のぼっちな雑魚具合は補欠ですらないな。
観客席の観客、いやいや、テレビで観戦してるレベルで、結婚なんて別世界の話なわけですよ。
そもそも俺って中学生だしね。
法律的にもありえないことなんだし。
ちなみにこれだけの思考が2秒で行われている。
叡智の祝福の効果で思考加速されているのだ。
スサノオ大王の前でぼーっと考え込むわけにはいかないからな。
しつこいようだが、突然に矢を撃ってきたりする人なわけだし。
「追って沙汰を出す。下がれ!」
スサノオ大王は玉座に腰を下ろした。
「あの、そこの柱に縛りつけられてるの、いちおう知り合いというかアレなんですけど・・連れて帰ってもよいものでしょうか?」
勇気を振り絞って聞いてみた。
そのわりには、まどろっこしい聞き方なのはスサノオ大王がこわいからだ。
いや、ホントおまえらも向き合ってみろよ。
何千年も後の世で名が残る、国を興すような覇王と向き合ってみればわかるから。
青ざめるとか背筋が凍るとか、寒気がするとか冷や汗が出るとか、そんなレベルではないんだぜ?
精神の祝福の効果で異常な精神力になっている俺が、失禁をこらえるのに必死なんだぞ?
まあ、ちょっと出ちゃって、こっそり無詠唱の浄化魔法を使ってるのは秘密だ。
お願いだから内緒にしておいてほしい。
スサノオ大王がこちらを見た。
フルフェイスの兜で顔の表情はわからないが、とにかくこわいんだって。
英雄イタケルが世界で十指に入る強さだと豪語していたが、一位は絶対にこの人だろう。
それもぶっちぎりの一位だ。
「よかろう! つれていけ」
俺は柱ごとハッチを受け取った。
スセリが回復しようとしたのも止めた。
回復したらハッチはまたスサノオ大王に飛びかかるだろうからな。
情報が少なすぎる。これでは対策も立てられないし方針も出せない。
まずは一旦仕切りなおすのだ。
「案内しよう」
サルダヒコ元帥が、どこかへ案内してくれるようだ。
さすが神話の導きの神だな。
実際に先導してもらえるなんて感慨深いぜ!
そう、猿田彦神は、天孫降臨の神話で天孫ニニギノミコトを先導した先祓いと導きの神なのだ。
俺たちはサルダヒコ元帥の先導で、玉座の間を後にした。




