因縁の戦い
そういえば、ここにきてハッチの居場所がわかった。
玉座の間にいるのだ。
「行こう!」
俺は意を決して玉座の間に乗り込んだ。
ここでひとつの目的が果たせる。
なぜならば、マップにサルダヒコ元帥が表示されているからだ。
整列する武官と文官の間を歩く。
前回よりも余裕がある。
好奇の目、敵意の目、前回より増しているのがわかる。
スサノオ大王は玉座に座っている。
「ハッチ!」
その横に柱が立てられ、そこに血まみれのハッチが縛られている。
白眼をむいて、怒りに歯を食いしばっているが、意識はしっかりとあるようだ。
とりあえず命に別状はないだろう。
「サルダヒコ、推し量れい!」
スサノオ大王が号令を発した。
「ハッ!」
サルダヒコ元帥が俺の前に歩み出た。
飛びかかろうとするミナを制する。
武官たちが石材を運び込み、玉座の間の中央に10メートル四方の舞台が整えられた。
「叩きだせば勝ちだ。無論、骸にして蹴りだすも構わぬ。我が神剣をもって斬り祓いそうろう」
舞台でサルダヒコ元帥と対峙する。
ついこの間のことなのに、随分と昔のことだったような気がする。
いろんな場所にいって、いろんなことがあった。
たくさん闘ったし、俺も強くなっている。
叡智と精神の祝福の効果で、俺の学習能力や成長力はとんでもないものになっている。
強くなるほど、技術が増すほど、応用できる範囲が広がり、加速度的に強くなっているのが自分でもわかるのだ。
なにせ、前ほどの威圧を感じない。
前回は圧倒的な差を感じたし、一撃のもとに敗れたのにも関わらずだ。
それに、スサノオ大王の威圧に比べれば、こんなものなんてことはない。
スサノオ大王を獅子とすれば、サルダヒコ元帥は猫だ。
ちなみに俺はネズミだ。
だが、窮鼠は猫を噛むのだ!
「ほう、見違えたな」
サルダヒコ元帥も、俺の成長に気づいたのだろう。
鋭い構えから剣で突いてきた。
様子見などではなく、最初から殺気を纏った刺突だ。
俺は無詠唱で、自分に補助魔法をかけている。
スセリのを真似ただけなので威力は劣るが、少しでもやれることをやりきるのだ。
完璧を目指して何もやらないよりも、不完全でもやりきることが大事だ。
出し惜しみはしない!
「シシシシッ!」
短い呼気とともに、天地理矛の連撃で剣を払い突く。
地力が上がったこと、そして神級武具の力によって、技で競えるようになった。
「神器を用いると心得たり!」
サルダヒコ元帥の神剣は1メートルほどの長さ、俺の天地理矛は2メートルの長さがある。
リーチでは俺が有利であり、懐に入れなければ、一方的に攻撃できる。
しかも、地下5層の戦いで気づいたのだが、柄の長さが伸縮する。
3メートルから1メートルの間で意のままに長さが変わるのだ。
間合いを意のままに変えられるということは、相手からすればかなり戦い辛いものになる。
近づかれたら短くして短槍として迎撃できるのも、すばらしく使い勝手がいい。
サルダヒコ元帥の剣は戦場の剣だ。
一騎当千であり、単独で万の敵をも蹴散らせる力があるだろう。
しかし、今は一対一の勝負だ。
俺の大波流は、それを二千年以上追及してきた武術なのだ。
地力に大きな差がなければ、俺は、大波流は一対一では絶対に負けない。
「ッグ!」
サルダヒコ元帥が焦ってきたようだ。
長さの変わる天地理矛に、大波流の武術が組み合わさった変幻自在の攻撃だ。
さばいているのが驚異的だと言える。
「ならば成すなり」
サルダヒコ元帥がもう一本の剣を抜いた。
腰に差していたからもしやとは思ったが、二刀流ってやつか。
どうやら、本当に本気になったようだ。
くう、殺気がしびれるぜ!
「受けてみせよ!」
両手から繰り出される神速の斬撃。
本来の構えになったからか、動きもなめらかで速く、一撃も重い。
「うおおおお!」
ちょっと想像以上だぞこれは!?
「破!」
右からの斬撃に耐える。
しかし、片手でなんて強力だ!
「やばっ!」
やばい、床の血で足が滑った。
体勢が崩れる。
「破!」
サルダヒコ元帥が決めにきた。
「ここだ!」
俺は万宝袋から生太刀を取り出して、サルダヒコ元帥の腹を突いた。
「不覚!」
サルダヒコ元帥が体勢を崩しながら避ける。
「ミナ!」
そこにミナが全力で振りかぶって斬りつけた。
俺も天地理矛に力を込める。
「憤!!」
サルダヒコ元帥が押されるが、踏みとどまる。
足りなかったか!?
怒りの表情で向きなおった。
「滅!」
サルダヒコ元帥の身体が威圧で膨れ上がり、両手の神剣が姿を消した。
音速を超える剣撃が来る!
やばい! これは死んだ?
「やめい!」
スサノオ大王の落雷のような声に、サルダヒコ元帥がビタリと剣を止めた。
俺の首まであと数センチ、これは本当にやばかった。
無事なのが不思議だと思っていたら、スセリが回復魔法をかけてくれていたようだ。
「間に合ってよかったです」
スセリは目に涙を浮かべながら、へたへたと座りこんだ。
「サルダヒコよ! おまえの負けだ!」
見ると、押されたときに片足が舞台の端から出ていたようで、踏み込みで床が砕かれて足跡の形が残っていた。
「見事なり」
サルダヒコ元帥が剣を鞘に戻した。
ミナやスセリの手も借りたが、そもそも俺たちはチームだからな。
一対一なんて言われてないんだし、今回は俺たちの勝ちだ。
俺が飛びかかろうとするミナを制したのは、サルダヒコ元帥に一対一だと油断させるためだったのだ。
やはり、ネズミ一匹で猫に噛み付いても、驚かせることくらいしかできないからな。
でも、束になれば、力を合わせれば勝てるんだ。
殺し合いなら負けだけど、ルールのある試合ならば勝つことができた。
ミナがにこっと笑っていた。




