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生太刀と生弓矢

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「薄暗いな」


 宝物庫に足を踏み入れると、そこは巨大な空間だった。

 天井も部屋の奥も見えない。


 なんだかキチキチと不思議な音がするし、何かが動いているのが気配でわかる。


「えーと、灯りはここだったかしら」


 カワイキュンが壁のほうでごそごそしている。


「ああ、これだわ」


 カチリという音がして、部屋がすっと明るくなった。


「キャアアアア!」


 悲鳴が響いた。


 って、カワイキュンかよ!?


「おねえさん、虫だけはダメなのよ」


 いや、あんたはおねえさんじゃないだろと思ったが、部屋の奥の宝の山の上に、10メートルはあるムカデがいた。

 死魔のムカデ兵ではない。


 足がいっぱいある虫のムカデだ。


「こわいぃ」


 カワイキュンがうずくまってガタガタと震えている。

 あきらかにカワイキュンの顔のほうが怖いんだが、それは今は言うまい。


「ミナ、スセリ!」


 俺が先頭を走るとミナが横を走る。

 少し遅れてスセリが着いてくる。


生命力強化(オーバーヘルス)!」


 スセリがHP最大値アップの補助魔法をかけてくれる。

 防御力向上と素早さアップの補助ももらった。


「スセリさんきゅ!」


 スセリがうれしそうににこりと笑う。

 かわいいなおい!


 ボスムカデのまわりから、小さなムカデが数え切れないほど這い出してきた。

 小さいといっても30センチくらいある。


 床を埋め尽くすようなムカデの群れが、俺たちに向かって走ってくる。


 速い! そしてキモイ!


 俺は天地理矛(あめつちのことわりのほこ)万宝袋(まんぽうぶくろ)から取り出した。


爆炎放射の斬撃(ギガフレイムスラッシュ)!」


 ギチギチと音を立てて迫り来るムカデの群れを撫でるように、天地理矛(あめつちのことわりのほこ)を振る。

 矛先(ほこさき)から炎が噴出(ふきだ)して、ムカデの群れを焼いていく。


 魔法剣みたいな感じでイメージしてみたら、あっさりできてびっくりした。


 俺は基本的に左手で槍を振っている。

 空いた右手で火魔法を撃って、床のムカデたちをあらかた燃やし尽くした。


 スセリが結界を張ってくれているから大丈夫なのだが、結界の外はムカデが焼けた匂いで、相当にひどいことになっているだろう。


瀬織津姫の清め(セオリツピュリフィケイション)!」


 スセリが浄化魔法で床を洗い流した。

 瀬織津姫(せおりつひめ)って、清流の女神の名前だっけか?


 これで足元にも心配はない。


「残りはボスだ!」


 硬そうな赤黒い頭の両脇には、巨大な牙が突き出ている。

 無機質な漆黒(しっこく)の目は、感情が読み取れなくて怖気(おぞけ)を誘う。

 その目の前にはオレンジ色で節がたくさんある触覚が(うごめ)いている。


「せいっ!」


 天地理矛(あめつちのことわりのほこ)を両手に持ち替えて、ボスムカデの牙を受ける。


「ぐぐぐ!」


 ボスムカデの頭は乗用車くらいのサイズだ。

 牙の先から毒液が垂れるので、あわてて飛びのいた。


 ミナがボスムカデの体節の隙間を剣で突いている。

 体液が飛び散ってるから、ダメージはあるだろう。


「おまえの相手はこっちだ!」


 ミナに飛びかかろうとするボスムカデを、天地理矛(あめつちのことわりのほこ)で受ける。

 無機質な目に、怒りの表情が感じられた。


「硬いな」


 さすがに宝物庫の番人というところか。

 黒いつや消しの体節は、にぶく光っているが、ものすごく硬い。


「4番目の節の間を集中攻撃!」


 一度で貫けなければ、集中攻撃で削るのみ。


 スセリが素早さ向上の魔法をかけなおしてくれた。


「ッララララァ!」


 集中力を上げて、天地理矛(あめつちのことわりのほこ)を連撃する。

 暴れるボスムカデの4番目の節の間を、正確に連続で突き刺す。

 体液が飛び散り、肉片が舞う。


「ミナ頼む!」


 大剣を振りかぶったミナが飛んだ。

 集中攻撃でちぎれかかっている体節の間を、一撃で両断した。


 ボスムカデの頭が落ちて、床を跳ねて転がった。


灼熱の炎撃(ギガフレイム)!」


 頭を落とされてなお暴れ狂う胴体の断面を、火魔法で焼いた。

 息の根を止めるとともに、体液が出ないようにする処理だ。


「ミナよくやったな」


 頭をくしゃくしゃと撫でてやると、ミナがうれしそうに笑った。


「わたしもがんばりました」


 スセリがちょっとすねた顔で、頭を差し出してきたので、わしわしと撫でてやった。


 さりげなくカワイキュンが頭を差し出してきたので、チョップを叩き込んでおいた。


「オオナムチちゃんったら、そういうプレイなの?」


「プレイとかじゃないですから!」


 ムカデの守っていたあたりには、ちょっと見たこともない量の金銀財宝的なものが山になっていた。

 スサノオ大王の宝物庫って、さすがにすごいんだな。


「すごい宝ですね」


「ここはそうでもないのよ。古いものだしね」


「そうなんですか?」


「そうね。ここは本来は封印の間なの」


「封印?」


 カワイキュンは宝の山の後ろにある小さな扉をこじ開けた。

 やはり技術なんかじゃなくて単純な腕力・・・つまりのところ力技だ。


「こっちが本命の宝ね」


 その小部屋には、長剣と弓が置いてあった。

 ただごとではない雰囲気をまとう剣と弓。

 神々しい感じがする。


生太刀(いくたち)生弓矢(いくゆみや)、どちらも太古の武具よ。神級武具(ゴッズウェポン)の中でも逸脱(いつだつ)した存在なの。一説によると造化三神(ぞうかさんしん)が造ったものだと言われているわ」


 ミナとスセリも驚いている。


生太刀(いくたち)・・・?」


「そうよ。どれだけ斬っても切れ味が落ちることがない剣。常に刃を生んでいるのよ。生弓矢(いくゆみや)もそうね。矢が生まれてくるから、矢が必要ないの」


「なんですと!?」


 そいつはすごい・・・

 無限に斬れる剣と、無限に撃てる弓矢、たしかにそんなものを造れるのは、すさまじい神だろう。


「しまっておきなさい。収納が使えるんでしょ?」


「いいんですか?」


「いいのよ。あなたはそれを使わなければならないの」


 そういえば、神話でも大国主命はスサノオの居城で生太刀(いくたち)生弓矢(いくゆみや)を盗むのだ。

 しかも、スセリ姫と琴も盗んで逃げるはず。

 こうして考えると、大国主命もとんでもないな。


「さあ、上に向かいましょう」


 俺たちは宝物庫を出て歩き出した。

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