もうひとつの脅威
「あら、派手な登場ね!」
そこにいたのは、カワイキュンとミナだった。
カワイキュン・・・
骨太の肉厚でぽっちゃりとした身体。
髪も肌もネイルもしっかり手入れされた、女子力の高い・・・おじさん。
特定業界ではスーパーアイドルだろう。
ただし、ノーマルの俺にとってはただの脅威でしかない。
「それにその格好は眼福だけど、誘ってるのかしら?」
「えっ!?」
カワイキュンの嘗め回すような視線に、辱めを受けているような気持ちになり、両手で体を抱くように隠した。
森の木を突き破って落ちたり、森を駆け抜けたことで、俺の服はボロボロになっていたのだ。
「誘ってるのね?」
カワイキュンの目が据わっている。
「いえ、完全に完璧に違います!」
全力で否定する。
「師匠!」
ミナが間に入って助けてくれた。
「まあいいわ。いいものを見せてもらったから、これをサービスしちゃう」
カワイキュンは奥から皮の防具を出してきた。
「高天原の雄牛の皮で作った最高級の防具よ。それと高天原の絹で作った肌着よ。着替えてらっしゃい。それとも着替えを手伝ってほしいのかしら?」
「ヒィ、いえ、大丈夫です。着替えてきます」
俺は試着室のようなところで、ボロボロになった服を着替えた。
身体に馴染む、とてもよい着心地だ。
カワイキュンたちのいる部屋に戻る。
「ここは?」
「わたしの工房よ。ミナちゃんの剣を調整してあげてたのよ」
どうやらカワイキュンは、いくつもの工房を持っているようだ。
まあ、これほどの腕ならば、顧客はいくらでもいるだろう。
「あ、天地理矛を受け取りました。ありがとうございました」
「ハッチちゃんから聞いたわ。見せてごらんなさい」
俺は万宝袋から天地理矛を取り出して、カワイキュンに渡した。
「うまく使えているようね。思ったとおりだわ」
「ありがとうございます。それでその代金のほうは?」
「その矛は特別なの。ヒヒイロカネの刃は天真名井の水で鍛えたものよ。値段が付けられるような代物じゃないわね」
ヒヒイロカネ・・・
厨二的にはたまらないファンタジー鉱物だ。
まさか、この手にすることができるなんて。
さすが神級武具だ。
てか、こんなものを作れるカワイキュンすごすぎる。
「ではどうすれば?」
「そうね。あなたは将来とても大きくなるわ。そのときにあらためて請求させてもらおうかしら」
そういってカワイキュンはにっこりと笑った。
「わかりました! ありがとうございます」
「ところで、一体どうしたの?」
「スサノオ大王に試練として矢を取ってこいと言われて、城から投げ出されて森に落ちたところを天鳥船で追われて、森と町を焼かれちゃいました。それでここに逃げ込んだんです」
んむ、自分で言っててもわけわかんないな。
「荒神の試しを受けたのね。すごいじゃない」
カワイキュンはなぜか満足そうに笑っている。
「あ、それとすいません。家の壁を壊しましたし、土魔法で階段を埋めちゃいました」
「いいのよ。この店を整理するためにここに来てたの。手間が省けたわね」
「え? そうなんですか?」
「そうよ。さて、上に行きましょうか」
俺は土魔法を解除して、階段を昇れるようにした。
俺とミナとカワイキュンは、階段を昇って外に出た。
「これは、すっかりきれいになったわね」
町はすっかり焼け野原と化していた。
「オオナムチ・・・さん!?」
そして、そこには泣き腫らした目でこちらを見ているスセリと・・・
スサノオ大王がいた。




