スサノオ大王の居城
俺は、将軍がいた洞窟を土魔法で埋めた。
ムカデ兵たちの屍骸は、死魔だからなのだろうか、いつの間にか消えていた。
予定外の寄り道になったが、まあ結果オーライだ。
さて、スサノオ大王の居城を目指そう。
「父の居城まではもうすぐです」
八十神たちに見つからないように、月山のふもとの平野にある町を迂回して、スセリの家、つまりスサノオ大王の居城があるというクマノまでやってきた。
スセリが言うには、スサノオ大王には、俺とスセリしか会うことができない。
ハッチにはパフェ代を渡して、ミナと一緒に町で食事をして待つように頼んだ。
「王都って感じじゃないんだな」
クマノには王都どころか、家すらなかった。
高い山がそびえていて、その頂上にスサノオ大王の居城があるという。
見上げてみるが、山の上のほうは厚い雲に覆われていてなにも見えない。
「はい。父は国を広げるために各地をまわるお仕事をしていますから、ここが根拠地というわけでもないのです」
スセリ、それは一般的には侵略というんだよ。
オキの隠れ里で俺も実際に体験してるしな。
まあ、そのことについては、直接スサノオ大王に聞いてみなければいけない。
可憐なスセリにはなんの罪もない。
ん? ないよな?
「ここから先は禁足地です。八十神に会う心配もありませんので、正面から向かいましょう」
マップを見てみると、天狗山と表示されている。
「この山って天狗山って言うの?」
「いえ、天宮山です」
ああ、頂上にスサノオ大王の居城、つまり宮があるから天宮山それが現代では、天狗山って名前に変化しているわけか。
マップの表示が天宮山に切り替わった。
「てか、道がないんだね?」
「はい。本来は必要ないのです」
スサノオ大王の居城に向かって山を登っているのだが、正面から行くと言ったわりには道がないのだ。
険しい山の道なき道を登っていく感じ。
しかし、山頂に着くとその理由がわかった。
「浮いてる!?」
スサノオ大王の居城は空中に浮いているのだ。
巨大な船が浮かんでいて、その上に城がある。
これは、天空の城?
「ラピュ○は存在したのか・・・」
スセリがあわてて俺の口を押さえた。
「天鳥船です。父はこの船で天降りました。そして、世界中に赴いているのです」
ありえん・・・
全長648メートルの巨大な船が、厚い雲の中に浮いている。
叡智の祝福の効果で、俺の目測はかなり精度が上がってきているから、間違いではないのはわかるのだが、それでも信じられない異様なでかさだ。
山の上が雲に覆われていたのではない。
厚い雲をまとった巨大な船が、山の上に浮いていたのだ。
俺は古代をなめていた。
はっきり言ってこれは、現代科学では太刀打ちできないテクノロジーだ。
金色に輝く船体は、いったいどんな材質でできているのだろう?
そして、この巨大な船を浮かべている原動力はなんなのだ?
謎と興味は尽きない。
いや、これはもはや船や居城というレベルではない。
これは、巨大な空中要塞だ。
厨二の魂をガッコンガッコンに揺さぶるこの空中要塞。
俺は素直に感動していた。
もうスサノオ大王に忠誠を誓ってしまいそうです母さん。
あ、俺って母さんいなかったな。
「で、どうやって行くの?」
「はい。入り口を降ろしますね」
スセリがそう言うと、船体の一部がエレベーターのように降りてきた。
「オオナムチさん、お乗りください」
俺とスセリが板のようなものに乗ると、船へと上昇しはじめた。
「すげえ・・・」
思わず声が漏れる。
下界の景色が小さくなっていく。
そして、船内に入ると、箱のような小さな部屋だった。
そして、部屋ごとさらに移動していった。
まさに、エレベーターだ。
窓が無いので、どこを進んでいるのかはわからない。
上だけではなく前に進んだり曲がったりもしている。
俺にはオートマッピングがあるので、船体のどのあたりにいるか把握できているのだが、普通はこれはどこに移動しているかわからないだろうな。
「到着です」
スセリの案内で扉から出ると、そこは5メートル四方の部屋だった。
マップで確認すると、この巨大要塞の上部にある城の、その下層部分にある部屋らしい。
「父と話をしてきますので、待っていていただけますか?」
「あ、うん」
まあ、待つしかないしこう答えるしかない。
スサノオ大王の居城って、木でできた神社みたいなのを想像していたから、ちょっとこれは想定外すぎて動揺している。
スセリが出て行くと、俺は万宝袋からお茶を出して一服した。
そうして待つこと10分。
部屋の扉が開いた。




