ムカデ将軍との決戦
「スセリ、灯りを頼む!」
「はい、わかりました」
俺たちは、ムカデ砦第4階層の通路の入り口にいる。
この奥にボスがいると踏んで、これから突入するのだ。
「俺が先頭を行く。ハッチとミナは左右を固めてくれ」
通路の幅は4メートルほど、床も天井も平らで四角い通路だ。
岩山を掘っただけの簡素な作りだが、まっすぐ20メートルほど続いている。
その先は見えないが、曲がり角なのか行き止まりなのか?
と、思ったら通路の先からムカデ兵が集団で現れた。
曲がり角かT字路か、どちらかってことになるな。
矢が飛んできたので、風魔法で逸らす。
「俺様ハッチ様にまかせろ!」
ハッチがダッシュで飛びかかって、ムカデ兵の首を飛ばした。
ミナも負けじとムカデ兵を両断していく。
20体のムカデ兵を倒して、通路の突き当りまでいくと、通路は右に曲がっていた。
「奥に進もう」
右に曲がってさらに進むと、突き当たりが木の扉になっていた。
「スセリ頼む!」
「生命力強化!」
補助魔法をかけなおした。
一定時間ごとに効果が切れるので、こまめにかけなおさないといけない。
スセリはしっかりとそのタイミングを把握しているようだ。
扉の先からは、強い魔力を感じる。
「さて、行くぞ!」
「あい」
扉を開けて飛び込むと、そこは50メートル四方の部屋だった。
大きな柱が六ヶ所にある。
そして、部屋の奥にひときわ巨大なムカデ兵が見えた。
目測だが、おそらく頭までは10メートル以上ある。
これはもうムカデ将軍って感じだな。
両手持ちの巨大なハンマーを持っている。
間違いなくこの砦のボスだろう。
将軍の両脇には5メートルくらいのムカデ兵が立っている。
これは護衛かな。
こいつらも強そうだ。
両手持ちの剣を持っている。
「おっと、あぶねえ!」
左右から10体ほどのムカデ兵が走ってきた。
ハッチとミナが瞬殺する。
これで部屋の雑魚はいなくなったようだ。
「将軍に突っ込んで護衛ともども奥の壁でキープする。背後から攻撃して、右の護衛から順に倒してくれ!」
「あい!」
ミナがきりっとした顔をした。
ハッチがニカッと笑って、両手の神剣アメノムラクモノツルギを構え直す。
「雰囲気は察した! リミッター解除でいかせてもらうぜ!」
雰囲気じゃなくて話をちゃんと聞けよ・・
それとハッチ、おまえはリミッターついてないだろう。
「防御障壁を張りますね!」
スセリが三枚の防御障壁を張ってくれた。
敵の攻撃を一定量、そして三度まで防ぐことができるバリアのようなものだ。
「クライマックスだぜ!」
俺は走り出した。
50メートルを全力疾走。
少し遅れてハッチとミナ、その後ろからスセリが追う。
将軍は動かない。
あと10メートルのところで2体の護衛が走ってきた。
「回転斬り(フューリー)!」
走りながら回転して、天地理槍で斬りつける。
剣で防がれたが、護衛の巨体を押し返した。
「突っ切る!」
そのまま、護衛の真ん中を抜けて将軍に向かう。
まだ防御障壁は3枚残っている。
護衛たちは俺を追ってきた。
あと5メートル。
うわ、近くに来ると、思ってたよりもでかい。
将軍が両手持ちのハンマーを振りかぶった。
「させねえ!」
振りかぶったハンマーの柄の底を、天地理槍で突いて、将軍の体勢を崩す。
攻撃の起こりを潰すってやつだ。
的がでかいからやりやすい。
よろけた将軍の脇を抜けて、その背後の壁まで走って振り返る。
将軍と護衛二体が追ってくる。
10メートル超の将軍と、5メートル超の護衛二体は、さすがにたいした迫力だ。
俺は攻撃に備えて、防御障壁を7枚展開した。
「うお!」
天から降ってくるような将軍のハンマーが、防御障壁を4枚壊した。
右の護衛の剣を避けて、左の護衛の剣を天地理槍で弾いた。
将軍と護衛の巨体が俺の視界を埋める。
まあ、でかくてパワーがあるだけなら、俺の大波流の敵ではない。
どんなに強い攻撃も当たらなければ意味がないからな。
「ハッチ、ミナ、右から!」
「あい!」
「ハッチ、それは逆!」
「あ? ああ、ゴメンw」
左の護衛を一突きして、右の護衛に集中して4発の刺突を入れる。
ミナとハッチが右の護衛の背後から斬りかかる。
「スセリ、防御障壁頼む!」
「はい!」
将軍の攻撃は防御障壁で凌ぐ。
スセリが素早さアップの補助魔法をかけてくれた。
さすがわかってるぜ!
右の護衛が倒れた。
「次は左!」
左の護衛の膝に刺突を入れて、バランスを崩す。
ハッチが両手の剣を交差させて構えた。
「おらぁ!高速連続斬り!」
高速の斬撃に神剣アメノムラクモノツルギが消える。
見えない連撃が護衛の背中を襲う。
「あい!」
ミナが大剣で斬りつけると、左の護衛も倒れた。
「よっしゃ! ラスト!」
将軍に向き直り、膝に刺突を連続で入れる。
巨大なハンマーの攻撃力は脅威だが、防御障壁が防いでくれる。
「スセリさんきゅ!」
「はい」
防御障壁の破砕音がひっきりなしに響き、そのたびにスセリがかけなおしてくれている。
たまに俺も防御障壁を展開する。
攻撃を避けないで防御障壁で受けているのは、ハッチやミナが攻撃しやすいように将軍の位置を固定するためと、ハンマーが壁や床を破壊して、予期せぬ事態をまねかないためだ。
そして、俺も攻撃に集中する。
将軍はさすがにタフだ。
死魔だからか、ダメージを与えても、見る間に回復していく。
しかし、俺たち三人の攻撃力はそんなもんじゃない。
ついに将軍が膝をついた。
「ゴオオオオオオオオ」
なんとも言えない怨嗟の声をあげて、将軍が倒れこむ。
ミナが将軍の頭を割り、ハッチがその首を斬り飛ばした。
巨体が地響きとともに、うつぶせに倒れた。
終わりだ!
「ウオオオオオ!」
俺は勝鬨をあげた。
想像以上に強敵だった。
俺も強くなったが、まだまだ強いやつはいる。
今回も一人だったら勝ててないだろうな。
仲間は大切だと思った。
「オオナムチさん、おつかれさまでした」
スセリがにっこり笑いながら、汗を拭くための布を渡してくれた。
そして、ハッとした顔になった。
「すいません。わたしはダメな子です」
「え!?」
スセリが泣いている。
「それ、死魔を退けるムカデのヒレでした」
「これ手拭いじゃないのかよ!? てか、持ってたのかよ!?」
蛇のヒレを家に忘れたっていうから、持っていないと思って聞くの忘れてた。
死魔を退けるという神話アイテム、蜂とムカデのヒレは、なんてことない白い布だった。
しかし、将軍を倒したあと部屋を調べてみると、将軍が立っていた地面に黒いもやもやしたものがあるのに気づいた。
宝のようなものはなかったが、将軍のハンマーと護衛の両手剣は、万宝袋に入れて回収しておいた。
どうも、この黒いもやもやから、死魔が湧き出していたようだ。
「このヒレで除去できると思います」
スセリが涙を拭きながら、蜂とムカデのヒレでもやもやを祓うと、黒いもやもやは一瞬で消えた。
「おお、すごい!」
スセリが笑顔になった。
将軍が回復していたのも、この黒いもやもやのせいだったみたいだ。
普通は先にこれを除去しないと倒せないのだろうが、俺たちの攻撃力がチートすぎたんだな。
まあ、結果オーライってことで。
これで神話の試練がふたつ終わった。




