魔法であっさりクリアですよ!
俺たちは、本州の中央を走る山脈、中国山地のど真ん中にいる。
その山間にある蛇の洞窟の入り口だ。
「おもったより大きいな」
崖の下に口を開けた洞窟の入り口は、幅20メートル、高さも10メートルくらいだろうか。
日の光が差し込んでいる範囲は、平らな地面が続いているようだ。
「それではいきましょう!」
スセリが進むよう促す。
実は俺はちょっとびびっている。
本格的な洞窟なんて、入るのはじめてなんだよね。
俺が先頭で、その後ろにミナとスセリが続く。
洞窟の中は暗いが、スセリが魔法の灯りで照らしてくれている。
おかげで、視界はそれなりにある。
車のヘッドライトくらいかな。
歩く速度での移動なら、これくらい先が見えていれば十分だろう。
「空気は乾いてるな」
少しずつ洞窟が狭くなってきた。
まだ蛇の姿はない。
岩肌はごつごつしている。
「どれくらいの長さなんだろう?」
「わかりません。しかし、山を抜けて根の国まで続いているとしたら、少なくとも10キロメートル以上あるのではないでしょうか」
2キロくらい歩いたと思う。
今のところはとくに変わったことはない。
洞窟は狭くなってきているが、それでもトンネルくらいの広さがある。
ところどころに窪んだところがあって、別れ道かと思って探索したが、ただ穴のようになっているだけだった。
とりあえず今のところは一本道だ。
5キロくらいは歩いただろうか。
どこまで続くのだろう。
アップダウンはあるが、別れ道はない。
道を間違えている可能性がないのはありがたい。
「ミナ、スセリ、疲れてないか?」
「あい」
「大丈夫です」
二人とも本当にタフだ。
これはとても助かる。
そしてさらに5キロくらい歩いたところで、巨大なホールのようなところの壁面に出た。
「うお、これはすごい」
俺たちは壁の穴から巨大な空間に出てきたような形だ。
20メートル四方くらいの空間か。
いや、奥行きはもっとあるかな。
下をのぞきこむと・・・
いた・・・
10メートルほど下にある地面を埋め尽くすほどの蛇の群れ。
うじゃうじゃいる。
これはかなりキモイ。
小さな蛇、大きな蛇、あれはマムシだろうか?
まあ、とにかくありえないくらい蛇がいるのだ。
そして、その蛇の群れの先に、出口に向かうであろう洞窟が続いていた。
これは蛇の群れを通り抜けないと、進めないってことなんだろうな。
「これは八十神たちが通らないはずだわ」
「そうですね」
ミナもいやそうな顔をしている。
「んじゃ、スセリ、蛇避けのヒレを頼むよ」
「はい」
いや、これは蛇避けのヒレがあってよかったよ。
てか、なかったら、絶対に通ろうと思わないだろうしな。
蛇の生命力は侮れない。
剣で斬るにせよ、魔法を使うにせよ、これだけの数で来られたら、対処は厳しいんじゃないかな。
小さいやつとか迎撃するのめんどくさいし。
「さて、スセリ、どうかな?」
「はい」
スセリはごそごそしている。
蛇避けのヒレってどんなものなんだろう?
そして、どんな効果なんだろう。
魔道具ってやつなのかな?
ファンタジーな感じで、期待が高まりんぐ!
「あれ?」
スセリが悲痛な顔で俺を見ていた。
「ないです」
「え?」
「持ってきてなかったみたいです」
「なんですと!?」
スセリは泣いていた。
蛇避けのヒレを、どこかに忘れてきたらしい。
一人で蛇の群れに飛び込んで、家まで取りに帰ってくるとか言い出したので、慌てて止めた。
「スセリ、いいよ! 大丈夫だから」
「いえ。わたしはダメな子なんです」
ポロポロと涙がこぼれている。
「ちょっと試してみたいことがあるんだ」
「???」
スセリがキョトンとした顔をした。
「蛇が壁を登ってきてないだろう? つまり、この壁は登れないんじゃないかな」
「そう言われればそうですね」
俺は向こう側の壁にある洞窟を見つめた。
そして、そこまでの橋をイメージした。
俺の魔力は膨大だ。
そして、橋を明確にイメージすることができる。
地面が盛り上がって橋ができていく。
蛇たちは滑り落ちていった。
そして、洞窟と洞窟をつなぐ道ができると、その下の土をくりぬいて、吊り橋のような形に加工した。
火魔法で橋の上の蛇を倒し、念のために橋の下の地面にも火魔法を放った。
「すごいです。こんな魔法は見たことがありません」
スセリが驚いていた。
「さあ、今のうちに橋を渡ろう」
おそるおそる足を踏み出す。
大丈夫だとは思うけど、やっぱ怖いんだよな。
「下を見ないで渡るんだ」
蛇は上がってこられないようだ。
これならいける。
あと5メートルくらいで橋を渡りきることができる。
そのとき、後ろから気配がした。
振り返ると、長髪を頭頂部で結んだ彫りの深い男、そう、ハッチが立っていた。
「な!?」
ニカッと笑っている。
この笑顔・・・
もう悪い予感しかしない。
ハッチは勢いよく飛び上がり、橋の真ん中に着地した。
「おい!やめろ!」
「おまたせッ!」
ハッチが勢いよく着地すると、橋が付け根から折れた。
「ななっ!?」
轟音とともに、俺たちは蛇の群れの中に落ちた。
何万匹いるんだろう?
まわりの蛇が一斉に俺たちを見ている。
「あれ?失敗した?」
ハッチは笑っている。
あっさりとクリアするはずの蛇部屋が、いきなり激闘の予感に変わった。




