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蛇の洞窟ってこわいですね!

 俺たち三人は、根の国にあるというスサノオ大王の居城に向かうことになった。


 スセリは、ミナを連れて行くことに渋ったが、俺が弟子だから修行に連れて行きたいと言ったのと、意識を取り戻したイタケルが強く推したことで、やっと同行を認めてくれた。


 もちろんイタケルは、ミナを気遣(きづか)ったとか、親切心からとかではない。

 俺とスセリを二人きりにしたくなかっただけだ。


 ミナは、俺と別れた後に、俺たちを追うイタケルの後を着いてきたらしい。

 俺たちがカワイキュンのところにいる間に、イタケルの家に先に到着していたようだ。

 そして、早く寝て、起きたら俺たちが来ていたらしい。


 根の国というのは、現代でいうところの島根県の東部にあたる。

 俺たちがいるキの国は、和歌山とかそこらへんだから、もともと来た道を戻っていく感じだ。

 中国山地を越えて、日本海側に向かうことになる。


「町とかに寄らないの?観光とかさ」


「オオナムチさんは八十神(やそがみ)に追われていることをお忘れですか?兄ほどではないにせよ、どんな猛者(もさ)がいるのかもわかりません。急いで父に会い、わたしたちのことに許しを得る必要があるのです」


 猛者(もさ)って言葉で、モサエビを思い出した。

 山陰の名物で、とてもおいしいんだよな。

 まあ、話にまったく関係ないな。


「俺たちなら八十神(やそがみ)とか蹴散らしちゃえばいいんじゃね?」


「ダメです!よく考えてください!」


 スセリの声が大きくなった。

 ちょっと怒った顔もかわいいな。

 まあ、ちょっとおこ限定だけどね。


「オオナムチさんは、わたしの夫になるのです。そして父の跡を継いで、ワ国大王となるのです。そうなったときに八十神(やそがみ)たちは臣下(しんか)となるのですよ。争って遺恨(いこん)を残すのは(おろ)かなことです」


「ああ、たしかに」


 現状では、俺と八十神(やそがみ)たちは、スセリの夫、つまりワ国大王の後継者という巨大な権力を争っている形になるわけだ。

 スセリの気持ちをまったく無視しているわけだが、俺を亡き者にしてしまえばいいという考え方は、シンプルでとてもわかりやすい。


 しかし、スサノオ大王の許しを得て、俺がワ国大王の後継者になった場合、争っている相手である八十神(やそがみ)たちの多くは、そのまま俺の配下となるだろう。

 のちのち部下となるようなやつらと、戦ったり殺したりするのはうまくないし、スセリの言うように避けたほうがいいだろう。


「ですから、町などには寄れません。追っ手に会うことのない険しい道を通ることにします」


「えっ!? 険しいの?」


 八十神(やそがみ)たちとの戦闘を避けるってことで、のどかな旅になるのかと期待したのだが、どうもそういうわけにはいかないらしい。


「はい。そこは蛇の洞窟と呼ばれています。根の国に通じていると伝わる洞窟ですが、毒蛇が住みついていて、とても危険です」


「うっく、やばくない?」


「ワ国の勇士と呼ばれるような者が何人も挑んだのですが、一人も帰ってくることがありませんでした。ですから、八十神(やそがみ)たちも通らないのです」


「じゃあ、なんで根の国に通じてるってわかるの?」


「父が昔に通ったと言っていたからです」


「スサノオ大王しか通った者がいないってこと?」


「わたしが知るかぎりではそうなります。あの洞窟は大変だったと言っていました」


 おいおいおいおい!

 そりゃやばいんじゃねーの?

 スサノオ大王ってアレでしょ?

 本物のやばい人でしょ?

 今から2000年以上先の未来で神とされている規格外中の規格外でしょ。

 高天原で暴れまくったり、ヤマタノオロチとか退治しちゃう人でしょ?


 それはやばいよー!


 そのスサノオ大王が大変だったっていうことは、どう考えたって俺たちには死地でしょ。

 数多の戦場と冒険、おそらくとんでもない波乱万丈な人生を歩んでいるであろう荒神スサノオ大王が、記憶していて大変だったって語るってことは、そりゃもうとんでもないところなんじゃないですか?


 ああ、焦って興奮して言葉使いがおかしいのは許しておくれやす。


「安心してください。わたしは蛇避けのヒレを持っています」


「むお?」


 ソレだ!


 たしか神話では、大国主命はスサノオ大王から蛇がたくさんいる部屋に入れられるという試練を受けさせられる。

 しかし、スセリ姫が蛇避けのヒレという謎の布アイテムを渡すのだ。

 そして、蛇が襲ってきたら、そのヒレを三度振れば、蛇がおとなしくなって試練をクリアできるのだという。


 お、これならイケル!

 行きましょう!


「よし!いこう!」


「はい」


「あい」


 俺たちは、どんどんと険しく深くなる山を歩いて、ついに蛇の洞窟の前にたどりついた。

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